紅玉の林檎
「今日暑くない?」
僕は昼食後の昼休みに、生徒会室で力無く項垂れていた。
「暑いわね」
彼女も同意するようにイスにもたれ掛かっていた。
「僕、前の休みにコタツとストーブ出したんだけど」
僕は机に頬を付けたまま、お行儀悪く呟いた。
「先週は寒い日が続いたから、気持ちは分かるわ」
彼女は体重を背もたれに預けたまま、脚を組んだ。
厚手の黒タイツに覆われた彼女の美脚が空を流れる。
キシッとイスが小さく音を立てたのが、
僕にはありがとうございます!と歓喜の声に聞こえた。
「コタツ毛布、すごく熱いんだけど」
僕は彼女のイスになりたい、
そしたら暑さで蒸れているだろうパンストを大いに満喫できるのに、
と欠片も回っていない頭の中で思った。
「暖房器具だからね」
僕の卑猥な妄想を知るはずも無い彼女だが、
若干その目は呆れの色を含んでいるように思えた。
「毛布だけでも元に戻そうかなと思わないでもないんだけど、
面倒くさくて、のぼせながらもそのまま使っちゃうよね」
僕は自分の欲望が見透かされている気がしたので、体を起こし普通に座った。
「ずぼらねぇ」
ただ視線はどうしても魅惑の光を放つ、
彼女の組まれた黒タイツの脚線美に吸い寄せられてしまっていたが。
「今日も登校してきた時は長袖着てたけど、暑くて脱いじゃったよ」
僕は彼女の黒タイツに覆われた脚をいつまでも眺めてられるな、と思ったが、
彼女の視線から重さのようなものを感じ始め、
流石にマズいという空気を察し、おどけたように笑いながら彼女の顔と向き合った。
「そのシャツの下は何か着てるの?」
目が合った彼女の瞼は半分閉じられており、完全にジト目状態だった。
「何も。アメリカンスタイルさ」
僕はわざと陽気に振る舞って、自身の身の潔白を証明しようとした。
「それにしては貧相な胸ねぇ」
彼女は溜め息をひとつ溢し、肩を落とした。
誤魔化しきれたのか、許されたのか、僕には分からなかったが、
たぶん、後者だろうと思う。
「うるさいやい!そう言う君はっ・・・程好い大きさですね」
僕は懲りもせず、彼女の脚から胸に思考対象を切り替えた。
「なに感想言ってるのよ」
普通から脚ばかり見ている事を、当然の如く彼女は気がついているわけだが、
珍しく僕が胸に興味を示した事で、彼女はどこか嬉しそうな反応をした。
「なんと言うか、その・・・揉んでいい?」
お、これはいけるんじゃない?と何の根拠も無く、僕は無謀なお願いをした。
「どうしようかしらねぇ」
彼女は機嫌良く、焦らすよう蠱惑に微笑んで腕を組み、
下からその美しい乳房を持ち上げた。
「手のひらに丁度納まりそうと言うか、
ツンと張りがあり形の良さが見てとれると言うか、
旬を迎える一歩手前の紅玉の林檎のような瑞々しい青さがあると言うか」
僕は制服越しにくっきりと浮かび上がった彼女の美乳に、思わず生唾を飲み込んだ。
「感想を言えば揉めると思ったの?」
彼女は上目使いで僕を挑発してくる。
「赤いブラジャーだったら完璧だったのにね」
余りに魅力的過ぎて、僕は煩悩を誤魔化すようについついいつもの軽口を言ってしまった。
「余計なお世話よ」
僕の余計な一言により、彼女は機嫌を損ね、結局胸を揉む事は叶わなかった。
だが次の日、澄ました表情でブラウスから透けるくらい、
鮮やかな真紅のブラジャーを身に付けてきてくれる辺り、彼女は僕に甘いと思った。