頭痛
「朝、寒くて布団から起きれないよぉ」
1限目が終わり、凝り固まった肩をほぐしていると、
彼女は寒そうに腕を擦りながら近づいてきた。
「分かる、昨日からめっきり寒くなったね」
僕はストレッチを続けながら彼女に同意した。
「遅刻しかけちゃったよぉ」
彼女は鼻を啜りながら、泣きべそをかいた。
「僕も二度寝しちゃって、
気がついたら家を出る時間だったから、猛ダッシュで来たよ」
お陰で身体中が悲鳴を上げており、先程から入念にストレッチをしている次第である。
「それに何だか頭痛がするよぉ」
彼女は顔をしかめながら少し辛そうに、こめかみを押さえた。
「自律神経が乱れてるんじゃない?」
僕は立ち上がり、労るように彼女へ自分の座っていた席を勧めた。
「うぅー、昨日アイス食べ過ぎたかなぁ」
ありがとう、と言って彼女は席に座ったと思ったら、とんでもない発言をした。
「待って、ちょっと待って、アイス食べたの?この寒い中?」
僕は彼女の発言に度肝を抜かれ、動揺しながら問いただした。
「コタツに入りながらお風呂上がりにアイス食べるの好きなんだぁ」
彼女は弱々しくも能天気にニカッと笑った。
「確かに美味しいよね!もうコタツを出している事は置いといて」
冬を待たず今から暖房器具を使用していると、
冬本番になったらどうするんだ、と思ったが、
人それぞれだと考えなおし、胸の内に秘めた。
「つらたん」
彼女はしんどそうに上半身を倒し、体を丸めた。
「頭痛が治るおまじないしてあげようか?」
僕は労る気持ちを持ちつつ、
上半身を伏せた事により潰れた彼女の爆乳を見て、
邪な気持ちが芽生えた。
「そんなのあるのぉ?やってぇ」
顔を伏せたせいで、僕のゲスな表情に気づかず、
彼女は蚊の鳴くような声では呟いた。
「では失礼して」
僕は屈んで彼女ににじり寄り、頭の高さを合わせた。
間近で見る彼女の潰れた爆乳は、薄い呼吸をする度に卑猥に形を変え、
連動するように襟の隙間から上乳が覗くか覗かないか微妙なチラリズムに、
僕は鼻の下が伸びるのを自覚した。
思わず妖艶な魅力を放つ爆乳に手が伸びそうになったが、何とか誘惑を振り切り、
僕は彼女の肉付きの良い丸い肩にそっと優しく手を乗せた。
「くすぐったいよぉ」
僕は彼女の首から肩にかけて、繊細に、かつ大胆にプニプニした肉を揉みほぐした。
「あー、これは難しいですねぇ」
僕は然も難題に取り組む学者のように、なるべく厳格な顔を心がけて言った。
「ちょっとぉ、いやらしい顔し過ぎぃ」
伏せていた顔を上げた彼女は苦笑いしながら指摘してきた。
どうやら僕に厳格な表情は無理だったらしい。
「治療!治療行為だから!」
僕は唾が出るほど必死になって彼女に言い募った。
「そう言うなら、その弛みきった顔をどうにかしようよぉ」
彼女はジト目で僕を見つめてくる。
「この魅惑の肉感が僕を狂わせるっ!」
僕は自重するのを止め、彼女の身体にいやらしく指を這わし、
その手を次第に爆乳へ近づけようとした。
「もう治療目的って名目を忘れちゃってるよぉ」
彼女は呆れた表情をし、僕の魔の手から逃げるように上半身を起こした。
「どう治ったでしょ?」
僕は行き場を失った両手の指をワキワキさせながらドヤ顔で言った。
「君との今後の付き合い方を考えて、別の意味で頭痛がしてきたよぉ」
彼女は顔をしかめつつ、わりと真顔でそう呟いた。
どうやら少し調子に乗り過ぎたようだ。