タイツの日
「寒くなってきたね」
「そうね」
「お鍋の季節ですね」
「そうね」
「そろそろタイツ鍋が恋しくなるね」
「頭は大丈夫?」
「失敬な!僕は至って正常だ!」
「そう思うなら、頭のおかしい発言は止めて頂戴」
「なんでさ!男子高校生として、
寒い季節にタイツ鍋が恋しくなるのは、
至って正常な思考じゃないかな?」
「それは貴方のような歪んだ性癖を持つ一部の意見よ」
「これがマイノリティの辛さか・・・」
「因みに全然ちっともこれっぽっちの興味の欠片も無いのだけれど、
貴方の中のタイツ鍋と言うのはどんな物なのかしら?」
「よくぞ聞いてくれました。語り出すと長くなるんだけどね、
そうだな・・・イメージしやすいとなると、先ずは水炊きを想像してもらえるかな?
博多風じゃないよ?
水道水じゃなく、山から汲んできた天然水を鍋の八割程まで張るんだ。
おっと、どこの山の水でもいいわけじゃないんだ。
ちゃんと軟水が出る裏山の水を使うんだ。
色々な所の水を試したけど、やっぱりタイツに合うのは裏山の水だったよ。
それでここが最初のポイントなんだけど、水だけで一度ひと煮立ちさせるんだ。
出汁を取るために昆布を入れちゃ駄目だよ?
昆布を入れちゃ折角のタイツの風味がダメになっちゃうからね。
素人はここら辺が分かっちゃいなんいんだよね。
火加減はちょっと弱めの中火がいいかな?
グツグツと沸騰させてはいけないんだ。
ポツッポツッと泡が出るくらいに火の強さを調整してね、
そこから五分程お湯が清みきっているか確認するんだ。
お湯の調子が整うまで時間があるじゃない?
その間はね、何をするかというと、ここでポイントの二つ目なんだ。
食材の準備なんだけど、やっぱり食材は鮮度が命じゃない?
脱ぎたてを用意するんだ。
初めはデニールの低い物からベストかな?
薄い分、鮮度が早くに失われてしまうんだけど、
その分、脱ぎたての香りは素晴らしく良いんだ。
脱ぎたてのタイツを顔全体に敷いて、香りを楽しむ。
やっぱタイツ鍋の最初の楽しみはここだよね。
ちゃんと香りが一番漂う爪先部分を鼻に来るようにセットするんだよ?
芳醇な香りを楽しみんだら、次は試食だ。
鮮度の良い食材はまず生で楽しまないとね。
ここで爪先から口に含みたい気持ちは分かるんだけどね?
ここはあえて踵部分から口に含むんだ。
厚みある舌触りから濃厚な味わいがあるんだ。
まぁ、僕くらいの通になるとパンティ部から頂くんだけどね?
これは素人にはオススメしないかな?
刺激が強すぎて最高にハイになっちゃうよ。
そうして十分に満喫した後に漸くお鍋に投入だ。
入れ方にもコツがあってね?
素人は爪先から入れちゃうんだけど違うんだなぁー。
パンティ部から入れるんだよ。
何故か?鍋に入れた時の香りの立ち方が違ってくるし、
頂く時の箸のとれ方が全然違うんだよ。
・・・あれ?聞いてる?」
「ごめんなさい、長すぎる上に、どうでもよすぎて聞いてなかったわ。
三行にまとめて頂戴」
「君の
タイツを
食べたい」
「映画のタイトルみたいに言ってもダメよ?」