リラックスの方法
「何か夜にリラックスする方法ないかな?」
生徒会室でボーっとしていた僕は、唐突に呟いた。
「突然どうしたの?」
彼女は読んでいた文庫本から視線を外し、顔を上げて僕の方を見つめてきた。
「最近眠りが浅いのか、日中ダルくてさ」
僕はイスにもたれ掛かり、頭の後ろで手を組んだ。
「原因に心当たりは?」
彼女も僕の話を聞く気なのか、体重を背もたれに預け、鷹揚に脚を組んだ。
「寝る前の、ゲームかな?」
僕は天井を見上げて、思い付いた事を口にした。
「止めればいいんじゃない?」
彼女は真顔で、全くの正論を宣った。
「いやー、それは分かってるんだけどね?ほら、こう、あるじゃない?
一日のリラックスタイムというか、そうゆうの」
僕は手をクネクネさせながら、女々しく言い訳がましい事を言った。
「まぁ、分からないでもないわね」
彼女は珍しく、僕の意見に同意してきた。
「それで何か代替え案ないかなぁー、と思って」
僕は特に明確な答えを期待している訳ではないが、
もしかしたら何かきっかけになるかなと思い、話をふった。
「私の場合はハーブティーかしら?」
彼女は顎に手を当てて、可愛らしく小首をコテンと傾けた。
「ハーブティーかぁ・・・どちらかというと、コーラを飲みたいんだけど」
僕はハーブティーなんてお洒落な飲み物を人生で一度も飲んだ事がないので、
どんなものか想像がつかなかった。
「リラックス目的なのだから、別に好きなの飲めばいいんじゃない?
炭酸、甘味、カフェインのスリーコンボだけど」
彼女は適当にあしらうように言いながら、脚を組み替えた。
「やっぱコーラはないよねぇ」
僕は目の前を流れた魅惑の脚線美に目を奪われながら、沁々と溢した。
「体を冷やす飲み物は基本、避けた方がいいわよ」
彼女は注意するように、その白魚のように細い人指し指を立てながら言った。
「暖房ガンガンに効かせた部屋で、
コタツに入りながら冷たい物を頂くって贅沢じゃない?」
「ハッピーになれるわね、寝る前なら全然有りじゃない?」
「幸福を覚えながら、眠りにつきたいじゃない?」
「何かを得ようと思うなら、今持つ幸福をどれか捨てなければいけないものよ?」
「等価交換の法則!」