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電車の君4
「構いませんよ」
彼女はコロコロと珠が転がるように上品に笑った。
「あっ、でも結末はまだ言わないで下さいね」
上目使いで悪戯っぽく微笑みながら彼女は言ってきた。
その長いまつ毛が特徴的なクッキリとした瞳と目が合い、僕の胸はドキリとした。
「その本はシリーズ物かな?
読んでいて偶に前後関係が分からない時があったけど、普通に楽しめたよ」
僕はドギマギして何を話していいか分からずに、とりあえず本の話題を出した。
「そんなんですよ、割と有名なんですよ?ご存じありませんでしたか?」
本の話題は彼女の食いつきが良かった。
若干興奮からか、その柔らかそうな色白の頬に紅が走っていた。
「本を読む機会が無くってね」
僕は自身の無知を恥じ、彼女から視線を外した。