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電車の君2
短いです。
翌朝、電車に乗ると、彼女はいつもと同じ席に座っていた。
ただ少し違うのは、
いつもは本を読むために伏せられた、
見目麗しい顔が僕の方を向いている事だった。
背筋をピンと伸ばし、姿勢良く座りながら、
真っ直ぐに清んだ眼差しで僕を見つめてくる彼女は、
さながら筋の通った大輪の華のようだった。
「おはようございます」
僕と目が合った瞬間、彼女はゆっくりと立ち上がり、
その可憐な唇から挨拶の言葉が紡がれる。
初めて聞いた彼女の声は涼やかに透き通っており、
凛とした印象を受けた。