文化祭~何する?~
「文化祭、何するのぉ?」
昼食後に校庭のベンチで彼女と日向ぼっこをしていると、
今学校中で繰り広げられているであろう話題を振ってきた。
「うちのクラスは展示かな?」
僕はお茶を口の中に含み唇を湿らせ、一呼吸置いてから答えた。
「ふぅーん、何を展示するの?」
彼女はさほど興味がないように、足をプラプラさせながら聞いてきた。
「まだ何も決まってないよ」
僕は肩をすくめて溜め息を吐いた。
「そうなんだぁ、うちのクラスはメイド喫茶になりそうだよぉ」
彼女はちょっと嫌そうな顔をしながら、視線を先の方に向けた。
「メイド喫茶」
僕は思わず、彼女の方に目を向いて見つめた。
「みんなノリノリで、決まったようなものだよぉ」
彼女は万歳ともお手上げとも捉えられる感じで両手を上げ、天を仰いだ。
「いいんじゃない?君もメイドになるんでしょ?」
彼女のメイド姿を想像し、僕はワクワクしながら目を輝かせた。
「そうなのぉ、また際どい衣装になりそうだよぉ」
彼女は少しゲンナリして、肩を落とした。
「まぁ、そんなご立派な体つきをしてたら、そうなるよね」
僕は自己主張の激しい彼女の爆乳をガン見しながら呟いた。
「うぅ、完全にお色気担当で、客寄せのマスコットだよぉ」
彼女は泣き真似をしながら、自身のたわわに実った豊満な乳房を鷲掴みした。
「でも好きなんでしょ?」
僕は彼女を下から覗き込むように聞いた。
「男子たちの弛みきった顔と、女子たちの嫉妬する目線が心地よい」
泣き真似から一転、彼女は悪い女の顔でニヤリと笑った。
「たくましいことで」
僕は内心ヒエッ、と思いながら肩を竦める。
「なんだぁ!君は見たくないのかぁ!私のいやらしいメイド姿をぉ!」
僕の反応が気に入らなかったのか、
彼女は柔らかそうな頬を膨らませてプリプリと怒りだし、
自身で鷲掴みした爆乳をたっぷんたっぷんと揺らしてきた。
「見たいけど・・・
君が他の男子からいやらしい目で見られるのは、ちょっと嫌かな?」
言葉にするには少し恥ずかしかった僕は、
彼女から視線を外し、ポリポリと決まり悪げに頬を掻いた。
「・・・ちょっとぉ、
不意うちはやめてよぉ、キュンとしたじゃないぃ・・・」
彼女は驚いたのか、パッチリとした目を大きく開いた。
瞳を潤ませた彼女の顔は、首筋まで真っ赤になっていた。
爆乳を掴んでいた手も胸の前で組み、
照れているのか、小さな艶やかな唇をアワアワさせていた。
「恥ずかしがってる顔も可愛い」
今度は彼女の目を見つめて、僕は言えた。
「もぅ、なぁにぃ、今日はどうしたのぉ?」
エヘヘ、と照れ笑いしながら、
彼女はしきりに自身のツヤのある髪の毛先を、白魚のような指先イジりだした。
「いや、伝えたい事は伝えておこうと思って」
僕と彼女はお互いに見つめ合っていた。
「何かあったのぉ?」
彼女は柳眉を下げ心配そうな表情をして、可愛らしく小首を傾げた。
「特に何もないさ、
ただ昨日の夜なかなか寝つけなくてね、
不意に過去の出来事が頭の中をグルグルと回りだして、
どうしようもないけど、考えて思ったんだ」
僕は彼女から視線を外し、独白するように言った。
「・・・疲れてるんだよぉ、
こっちおいで?膝枕してあげるぅ」
彼女は両腕を広げ、
慈愛に満ちた表情で僕を包み込もうとしてくれる。
「頭も撫でてね」
少し気恥ずかしくなり、
僕はおどけながら彼女の太ももにゆっくりと頭を乗せた。
「はいはい」
彼女は笑いながら、優しい手つきで僕の頭を撫でる。
「洗剤変えた?」
柔らかな彼女の太ももに頭を埋めた僕は、
鼻孔をくすぐる甘いながらも、嗅ぎなれない香りに、彼女へ問いかけた。
「香水を変えたんだよぉ」
彼女は苦笑いしながら、僕の頭を撫で続ける。
「あぁー癒されるんじゃあー」
ムチムチした肉感の太ももと、
ケーキ屋さんのような甘い香りに包まれた僕は、心からそう思い呟いた。
「よしよしぃ、良い子でちゅねぇ・・・
過去に駆り立てられて、
不安や憤りの負の感情に囚われる夜もあるけどぉ、
明けない夜は無いんだよぉ?」
彼女は微笑みながら、優しく僕を慰めてくれる。
「君は僕の太陽だよ」
僕は寝転んだ姿勢から彼女の頬に手を当てて、
自分でもキザかな、と思うセリフを吐いた。
「イタリア映画のセリフみたいだね」
僕の手が頬に当てられて、嬉しそうに笑いながら彼女は言った。
「映画俳優みたいにイケメンでしょ?」
僕は彼女の癒しで緩みきっていた表情から、
出来る限りキリッとした表情をした。
「私からしたら、どんな銀幕のスターよりも輝いて見えるよぉ」
彼女は屈託無く、無垢な笑顔で僕を見つめてきた。
「僕からしたら、君はどんなハリウッド女優よりも魅力的さ」
僕も微笑みながら彼女を見つめ返し、
手に触れる柔らかな頬を優しく撫でた。
「ふふっ、二人してなに言ってるんだろうねぇ?」
嬉しそうに笑う彼女は、
雲ひとつ無いすっきりとした空のように晴々としていた。
「こんな時間も、たまにはあっていいさ」
僕らは甘く、穏やかな空気が流れる時を、時間の許す限り楽しんだ。