体育祭前
コメディパートのみです。
「体育祭の競技、なに出るの?」
僕は放課後の生徒会室で忙しそうに書類を捌いている彼女に声をかけた。
「私は実行委員長だから、競技には出ないわよ」
彼女は手を休める事なく、僕の問いに答えた。
「足、速そうなのに、何かもったいないね」
彼女のカモシカのような、しなやかな脚を見ながら僕は言った。
「貴方は何に出るの?」
彼女は視線をチラリと寄越し、僕に問うてきた。
「僕も競技には出ずに応援さ」
僕は肩をすくめ、おどけたように言う。
「あら、意外ね。足は速かったはずよね?」
彼女は驚いたのか、書類仕事の手を止めて、
僕の方をその大きな目を丸めて見つめてきた。
「運動部の連中が張りきっていてね、出る幕が無かったよ」
女子への絶好のアピール機会となる体育祭に、運動部の連中はにわかに色めき立ち、
リレーなど花形の種目にはこぞって参加したがっていた。
「残念ね、貴方の雄姿が見たかったわ」
彼女は冗談混じりに微笑みながら首を振った。
「よぉしっ!今から出場権をかけた勝負を挑んでこよぉ!」
僕は腕捲りをしながら生徒会室を出ようとする。
「もう締切が済んでいるわよ」
彼女は苦笑しながら僕を止めてくる。
「君が望むなら、陸上部のエースにだって勝ってみせる」
「書類仕事が増えるから、止めてちょうだい」
僕の固い決意表明を彼女は笑って軽く流した。
「そうだ、体育祭の予行演習をしようよ」
僕は指をパチンとならし、さも良いアイデアが浮かんだ風に言う。
「予行演習?授業が詰まってるから、今からカリキュラムに組み込むのは無理よ」
彼女は綺麗に整えられた眉をひそめ、難しい顔をした。
「二人でしよう、今から」
「今から?競技に出ない二人が?一体何をするのよ?」
彼女は呆れた顔をした。
「最近、映画同好会の手伝いをしたんだ」
「急に話しが変わったわね」
彼女はいふかしげな表情をしながらツッコンでくる。
「その時に、ブルマの良さに気づいたんだ」
「どんな撮影をしてたのよ」
「そこで・・・体操服を見直そう!
ドキッ!二人っきりのブルマ試着会を開催したいと思いまぁすっ!」
僕は宣誓するように片腕を上げて力強く叫んだ。
「貴方も着るの?」
彼女から冷静なツッコミが入る。
「君の分しか無いよ!」
僕はサムズアップして元気よく答えた。
「だと思った」
「ポロリもあるよね!?」
僕は目を輝かせながら言う。
「何を期待してるのよ」
「じゃ、早速映画同好会から衣装を借りてくるね!」
「まだやるとは言ってないわよ」
「善は急げっ!行ってきまぁす!」
僕は聞こえていないフリをして、衣装を借りに走るのであった。