8月最後の夏
「8月31日だぁ!」
登校してきた彼女は挨拶も無しに、テンション高く言い放った。
「海には行ったか!?プールは満喫したか!?バーベキューはやったか!?祭りに花火は楽しんだか!?」
彼女はテンション高く一息にまくし立てた。
「イェーイ!全部満喫しましたぁ!ってか、全部一緒にやったじゃん」
朝から彼女のテンションに合わせるのは大変だが、僕もアクセルを上げて答えた。
「そうだ!我々は夏を楽しんだ!充分に遊び尽くしたと言っても過言ではない!」
何が言いたいのかよく分からないが、彼女は熱く語り始めた。
「だが今日は8月最後の日だ!いかに夏を満喫し尽くした我々といえど、平成最後の夏の日に何もしないのは、学生として間違っているとは思わないかね!?」
拳を握りしめ、彼女は力強く語る。
「間違っていると思いまぁすぅっ!」
僕は賛同する意思を表明するため、右手を上げて元気よく答えた。
「そうだ!平成最後の夏の日に何もしないのは、学生として間違っている!よって、昼休みはっ作戦会議を開催する!」
彼女は腕を振り上げ、高らかに宣言する。
興が乗ったのか、お行儀悪く上履きのまま片足をイスに勢いよく叩きつけた。
足を振り上げた時に、裾の短いスカートから桃色のパンティがチラリと見えて、ラッキーだと思った。
イスに足を叩きつけた時に彼女のムチムチとした張りのある太ももがたわむ。
瑞々しい彼女の太ももは黒のニーハイに被われ、ムチムチした太ももにニーハイのクチゴム部分が食い込んでおり、プニプニしてそうで非常にセクシーだった。
「イエスッマム!」
魅惑的な太ももに視線をくぎ付けにしながら僕は言った。
「よろしい!昼休みは屋上に集合だ!」
そう言い放って彼女は自分の席に戻っていった。
嵐のように去っていった彼女が言いたかった事は、おそらく放課後に何か夏っぽい事をしようだと思う。
「夏の最後を彩る事は何がいいかなぁ?」
屋上で昼食を済ました後、彼女はフェンスに寄りかかりながら言った。
「難しい問いかけだね、色々思い浮かぶけど、夏の最後を彩るとなると、決めかねるよ」
僕は腕を組み悩む素振りをしてみせた。
「時間が限られてるから、あんまり遠出も出来ないし、せっかくだから夏らしい、やったことが無いことしたいよねぇ」
人差し指を潤いのある唇にあて、彼女はうんうん唸りながら考えている。
「そうだね」
真剣に悩んでいる彼女には悪いが、僕は先程から彼女のスカートが気になって、考えるどころではなかった。
フェンスに立つ彼女のスカートは風に煽られ、元が短いせいもあり、その可愛らしい桃色のパンティがチラチラと見え隠れしていた。
レースに彩られたフリル付きのパンティが見えるたび、僕は形容し難い興奮に見舞われた。
「可愛いでしょ?」
そんな僕の視線に彼女が気付かないはずも無く、イタズラっぽく笑いながら言ってきた。
「最高だね」
僕がそう言うと彼女は気を良くしたのか、ゆっくりとした動作でクルリと1周回ってみせた。
ふわりと翻った短いスカートは悠然と舞い広がり、その可愛らしいパンティがモロに見えた。
プニプニとした太ももの上に乗った、肉付きの良い桃尻を被った桃色のパンティはその全容を表し、花柄に彩られた美しいレースがはっきりと見えた。
「グゥレイトォ!」
僕はその美麗の舞いに拍手し、スタンディングオペレーションを行った。
「あ、花火しよ?」
どうもどうも、と僕の歓声に応えながら彼女は言った。
「花火は初めの方でやったじゃん」
花火は夏休みに入った初期の頃に真っ先に行ったはずだ。
乳に栄養をとられ過ぎて、記憶力が残念な感じになっているのだろうか。
「その花火じゃない!あの時は派手なやつばっかだったから、線香花火がしたい」
確かにあの時の花火は打ち上げ系など派手めオンリーで、終止はしゃいで終わった気がする。
「そういや線香花火はやってないね」
線香花火のようなワビサビを感じる風流な花火はやってなかったな。
「よしっ!じゃあ決定ぃ!8時に河川敷で集合ね!」
「ちょっと集合時間遅くない?」
「このくらいでいいの!あ、花火は買ってきといてね!」
彼女はあざとく上目づかいをしながら僕に買い出しを押し付けてきた。
反論しようと思ったが、不意に吹いた風によって翻った彼女のスカートからパンチラが見えた瞬間、僕は頷くしかなかった。
「お待たせぇ、買い出しありがとぉ」
待ち合わせの河川敷で待っていると、彼女は時間通りにやってきた。
「どう?似合う?」
そう言って彼女は両腕を広げ、自身の姿をアピールしてきた。
彼女は制服でも普段の私服でも無く、浴衣姿で現れた。
そうか、浴衣を着るために遅めの集合時間にしたのか。
藍色に染め上げられた上品な浴衣に結い上げた髪が大人っぽく見え、普段の活発な印象とは真逆のギャップに僕は惚れ惚れした。
「めっちゃ似合ってる!萌えしんぢゃうよぉ!」
ギャップ萌えに意識を奪われ、しばらく見惚れてたのが恥ずかしくなり、僕は大袈裟なリアクションをした。
「そうだろぉ?萌え萌えだろぉ」
彼女は僕の反応を見てニシシと満足げに笑っていた。
「せっかくのギャップが言動で台無しだよ!」
彼女の大人っぽい上品な姿がいつものノリによって残念さっぽくなっていた。
「あら、ごめんあそばせ」
彼女はオホホと言って笑った。
板についてなさすぎて僕も笑えてきた。
「それじゃ、やろっか?」
そう言って僕らは二人並んで特に騒ぐ事なく線香花火に火を点けた。
「わぁ、きれい」
「そうだね、きれいだね」
二人並んで静かに線香花火の光を見る。
パチパチとなる線香花火の音と灯りが辺りを支配する。
暗がりの中、線香花火の灯りに照らされた彼女の姿は、儚く、幻想的で、僕は夏が終わる予感に哀愁の意を感じた。
「着物は下着を着けないらしいんだけど、浴衣は着けてると思う?」
不意に彼女は僕の耳元で甘く囁いた。
「さわって確かめていい?」
誘惑する彼女に、僕の手は無意識に彼女の尻を触りかけていた。
「だぁめ、おさわり禁止」
彼女の甘い吐息が耳元に吹きかけられる。
蕩ける声で囁かれると脳内に今まで感じた事のない物質が駆け巡る感じがした。
「あ、終わっちゃったね」
最後の線香花火の火種が落ちた。
彼女はどこか寂しげな雰囲気を醸し出していた。
いつもと違う雰囲気に、僕は彼女にどう声をかけたらいいのか分からなかった。
「それじゃ、帰ろっか?」
彼女は微笑みながら言ってきた。
寂しさが残るその表情に僕は頷く事しか出来ず、そのまま彼女と別れた。
帰り道、途中にあったハンバーガーショップで、桃味のシェイクを買い、今日見た様々な彼女の表情を思いだしながら、僕は帰宅の途についた。