校庭の草むしり
「あっつぅ」
僕は全身から滝のように汗を流しながら校庭のグラウンドで草むしりをしていた。
「日が昇ってきて気温が上げってきたわね」
今日はこの間、彼女に勉強を教えてもらったお返しに、生徒会の仕事である運動会の準備を手伝っていた。
「こまめな水分補給を心がけ、熱中症を予防しましょう」
近くで一緒に草むしりをしている彼女も僕と同様に汗だくになっていた。
「ねぇ、休憩しようよ」
僕はこの茹だるような暑さの中、永遠と草むしりをする作業に飽きてきていた。
「さっき休憩にした所でしょ?」
彼女は呆れた表情をしたが、その顔には疲労の色が見え隠れしていた。
「つーかーれーたー!あーっ、熱中症になるぅ」
僕は手足をバタつかせ駄々をこねる。
「もう、しょうがないわね・・・少しだけよ?」
彼女は呆れかえりながらも、どこかホッとした表情をしていた。
「なに飲む?おごるよ」
休憩所のベンチに座り込んだまま動かない彼女に僕は声をかけた。
「スポーツドリンクをお願い」
座り込んだ彼女はどこかグッタリとしていた。
「だいぶ疲れてるじゃん、もう今日はここまででいいんじゃない?」
ベンチに力無くもたれかかる彼女の体操服は汗に濡れ肌にぴっちりと張り付いており、
その美しく乳房の形がくっきりと浮かび上がっていた。
「ダメよ、まだ今日のノルマを半分も達成していないわ。このままでは計画に送れが出てしまうわ」
汗で張り付いた前髪をうっとうしそうに払いながら、彼女は疲れた声色で言った。
「はい、こまめな水分補給」
僕は自販機で買ったスポーツドリンクを彼女に手渡す。
「ありがとう」
そう言って彼女は一息に半分程飲み干した。
「事務仕事もあるんでしょ?草むしりは僕がやっておくから、そっちに集中したら?」
スポーツドリンクを飲む時に晒された彼女の白い喉元がドクドクと脈動する様は普段見ない分、不思議な色気があった。
「生徒会役員でもない貴方に負担を強いるのは心苦しいわ」
彼女は疲れた表情をしながらも微笑んだ。
「単純な力仕事しか手伝えないからね」
僕はおどけて言った。
「それに、貴方一人で作業させるとサボりそうだもの」
彼女は冗談混じりに笑いながら言った。
「ひどい!」
そう言って僕と彼女は笑いあった。
「会長ぉー!」
その時、遠くて彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「ごめんなさい、何かあったみたい・・・行かなくちゃ」
彼女は申し訳なさそうに目じりを下げ、僕に言ってきた。
「全然問題ないよ、後はやっておくよ」
彼女の柳眉が垂れ下がった表情に萌えながら、僕は爽やかに言った。
「あんまりサボりすぎないように」
彼女は右手を腰に当て、前屈みになり、左手の白魚の様な細い指先で僕のおでこを軽くつついた。
「期待してて!」
何によ、と呟き笑いながら彼女は去っていった。
「あら、サボってるの?」
グラウンドに座り込み休憩していると、不意に後ろから声をかけられた。
「心外だな、終わったから達成した余韻に浸っていたんだよ」
僕はすっかり綺麗になったグラウンドを指差し言った。
「まさか1日で終わらせるとは思わなかったわ」
炎天下の中、しつこく根の張った雑草と格闘しながら、ようやく終わらせる事ができたのは、日が落ちかけた夕方だった。
「僕はやれば出来る子だから、もっと褒めてくれてもいいんだよ?」
僕は胸を張りながら言った。
「勉強にもそのやる気を出してくれると助かるのだけれど」
彼女はジト目で言ってきた。
「そこは褒め伸ばす方向でお願いします」
僕は平に平伏して彼女に頭を垂れた。