休日に起きれない
「休日の朝は起きることは出来ない。どうしてだと思う?」
僕は座った状態で頭を手に起き、考える人のポーズをとる。
「起きる気が無いんじゃない?」
彼女は足の指先にマニキュアを塗りながら、ぞんざいに返してきた。
「いや、起きる気はあるよ。やりたい事もあるし。枕元に起きたら着る服も前日に用意しとくし」
僕は考える人のポーズを止め、身ぶり手振りで自身のやる気をアピールする。
「やりたい事って、別にやらなくてもいいんでしょ?」
彼女はこちらを向かず、マニキュアを塗った指先を乾かすために、その柔らかな唇から足の指先に息を吹きかけていた。
紅のアヒル口がセクシーだった。
「まぁ、そうなんだけど」
僕は彼女の仕草に魅了されながら、語尾を濁した。
「人間って怠け者だから本当にやらなくちゃいけない事しか行動しにくいものよ。知らないけど」
相変わらす彼女は適当に僕の相手をする。
「僕は特に怠け者だからなぁ」
彼女はまたマニキュアを塗り始めた。
「やりたい事って何なの?」
彼女の透明感のある綺麗な足先が、涼しげな水色にコーティングされていく様は、まさに美が生まれる瞬間と言った所か。
「ランニングしようと思って。ほら、最近腹出てきたじゃない?それに休日でも起きる時間を変えない方が健康にも良いって聞くし」
僕は自身の腹を叩いた。
僕の太鼓腹はポンと通る音が鳴った。
「ふーん。変に気にしたり考えすぎたりしない方がいいんじゃない?余計ストレスになって体に悪そうよ」
彼女は僕の太鼓腹をジト目で見てきた。
「そうだね、悔いてないで次に成功させればいいもんね」
僕はもう一度太鼓腹を鳴らした。
「懲りない人ね」
呆れ返った彼女は再びマニキュアを塗り始めた。