放心状態
風呂上りにソファに座り、何も考えずに水を飲む。
体はだらけきっており、無心状態だった。
「放心状態じゃない?大丈夫?」
彼女が対面に立ち、柳眉を下げ心配そうに顔を覗き込んできた。
「あー、うん、大丈夫。ちょっとボーっとしてた」
「忙しかったの?」
僕は顔を上げ、彼女と目線を合わせる。
長いまつ毛がはっきり見えるほど顔が近い。
「いや、ヒマだったんだけど、今日は外出で車を運転してる時間が長かったんだ。そのせいかな?」
「どこまで行ってきたの?」
彼女と目が合っていると、その大きな瞳に吸い寄せられそうになる。
「南の方、高速乗るまでの下道が初めて通る道だったから疲れたよ」
「そうなんだ、お疲れ様」
そう言って彼女は微笑み、僕の頭を優しく撫でた。
慈愛で溢れる彼女に、僕は蕩けそうになる。
「そういえば通りがかった道で雰囲気の良さげなカフェがあったんだ。今度の休みに行ってみよう」
「ホント?うれしい!」
毎日の癒しを与えてくれる彼女に、少しでも何を返したかった。
「ハグしてくれたら明日も頑張れるかも」
「もうっ、甘えてないで、そろそろ寝よ?」
そう言いながらも彼女は僕を甘やかし、軽くハグしてくれる。
柔らかな肌と花のような香りに包まれながら、僕は明日も頑張ろうと思った。