クリスマス~お家で~
「メリーックリスマスッ!」
彼女は高らかに宣言して、シャンメリーの入ったグラスを差し出してきた。
勢いが強すぎて、中身がちょっと零れてしまっている。
「メリクリ」
グラスがキンッと涼やかな音を奏でる。
彼女のグラス自分のグラスを合わせて乾杯と呟いた僕らは、
どちらともなく自然に笑みがこぼれた。
「なんか、リッチな味がするぅ!」
景気良く一気飲みをした彼女の感想だった。
「そう言ってあげると、シャンメリーも本望だろうよ」
他の炭酸飲料と値段はさして変わり無いが、やはりどこか特別な感じがするのは、
このクリスマスの為だけに作られた製品だからだろうか。
「うへへぇ、ご馳走だらけだぁ!どれから食べようかなぁ」
テーブルには様々な料理が並べられていた。
七面鳥にローストビーフ、ホールケーキまである。
おおよそクリスマスっぽい料理を手当たり次第買った感じが出ていた。
「今更だけど、本当にどこにも行かなくてよかったの?」
僕は彼女に問いかけた。
僕の部屋で彼女と二人でクリスマス会を開いているが、折角のクリスマスなので、
もっと楽しめる所に連れて行ってあげた方が良かったのではないか、
と僕は先ほどから自問自答を繰り返していた。
「これでいいの・・・これが、いいの」
彼女ははにかむように笑いながら、伏し目がちに首を横に振った。
「後で出かける?」
僕は彼女の顔色を窺いながら、再度尋ねた。
「ううん、今日はずっと、貴方と二人っきりで居たいの」
彼女は顔を上げ、にっこりと微笑みながら僕を見つめてきた。
その笑顔は、凍てつく冬を溶かす温かさを纏っていた。
「そう?じゃあ改めて乾杯といこうか」
今度は僕からグラスを差し出した。
『メリークリスマス』
そう言いあって、二人して笑いあった。
こんなクリスマスの過ごし方もあっていいと思った。