クリスマス~イルミネーション~
幻想的な光で溢れている。
辺り一面、豪華絢爛と表現できるイルミネーションだ。
中でもライトアップされた巨大なクリスマスツリーは圧巻の一言に尽きた。
周りから聞こえてくるのは人々の楽しげな笑い声と、クリスマス音楽だった。
「何を考えているの?」
耳元で彼女の声がした。
「ごめん、ボーっとしてた」
幻想的なイルミネーションに意識を奪われていた僕は彼女の声で現実に戻ってきた。
「疲れちゃった?」
彼女は眉を下げ、心配そうに僕に尋ねてきた。
「そんなことはないさ、あまりにも見事だから魅入ってしまったよ」
僕はおどける様に肩を竦めた。
「確かに綺麗ね」
そう言って彼女はイルミネーションに顔を向けた。
煌びやかな光が彼女の横顔を淡く照らす。
「嗚呼、キレイだ」
今度は彼女の横顔に見蕩れ、僕は呟いた。
「ふふっ、どこ見て言ってるのよ」
彼女はくすぐったそうに笑った。
「ずっと眺めていられるよ」
彼女につられて僕も笑った。
「ずっとじゃ困るわ、この後どこにも連れて行ってはくれないの?」
彼女は悪戯っぽく笑いながら僕にもたれ掛ってきた。
「でも、まぁ、今だけは、もう少しこうしていましょう」
しばらく無言で寄り添う僕と彼女は、どちらからも離れようとはしなかった。