石油ストーブ
「おっつー・・・って寒ッ!暖房付けないの?」
僕が生徒会室に入って一言目がそれだった。
「ちょうど良いところに来てくれたわ、エアコンが故障しちゃって、
先生が『寒かろう、ストーブじゃ』と言って謎の物体を置いて行ったのだけれど、
リモコンが見当たらなくて・・・もうボケが始まってるのかしら?」
「どれどれ・・・石油ストーブじゃん、単純な装置だからリモコンなんて無いよ?
これでボケ扱いは流石にヒドいよ、むしろ君の方がボケてるよ」
「失礼ね、私、こんなストーブ知らないわ」
「流石、都会のお嬢様って感じだね」
「どうでもいいから使い方が分かるなら早く点けてちょうだい、寒いわ」
「はいはい・・・点いたよ」
「ねぇ、熱の揺らめきがダイレクトで目に見えているのだけれど、
火事とか大丈夫なの?」
「近づき過ぎたりせず、適度に換気しておけば大丈夫だよ」
「ふぅーん・・・これだけ熱があればストーブの上で何か焼けそうね・・・
・・・ちょっとアンパン買ってきてくれない?」
「今時アンパンを買いにパシらすなんて、不良でもしてないよ」
「パシらすなんて人聞きの悪い事を言わないでちょうだい、お願いしているのよ?」
「捉え方は人それぞれだからねぇ」
「寒いわ、もうちょっとこっちに寄りなさい」
「アンパンはもういいの?」
「アンパンはいつでも食べれるけれど、
こうして貴方と二人で並んで立つ機会は後何回あるか分からないから」
僕と彼女は肩を寄せ合い、二人並んでストーブにあたる。
暖房の効いた所に移動しよう、なんて野暮な事は言わなかった。