平成最後の月が始まる
「じゅ・う・に・が・つぅーのぉ、始まりだぁっ!」
彼女は元気に爆乳を揺らしながら、僕の部屋にノックもせずに突撃してきた。
「平成最後の月だっていうのに、全然実感湧かないね」
勉強机から身を起こし、僕は彼女と向き合った。
ちょうど勉強していたから良かったものの、
もしこれが『お楽しみ中』だった場合の事を考えて、
僕の背筋にゾクゾクしたものが走った。
「うおぉーっ!怒涛のイベントラッシュだぁ!」
僕が一人戦慄しているなど思いもしないであろう彼女は、
テンション高く、ニコニコと楽しげに笑いながら、
ヒョッコヒョッコとステップを踏み、
そのたわわに実った乳房を揺らしながら近づいてきた。
「そうだね、テストラッシュだね」
明らかに遊ぶ事しか考えておらず、
能天気にあざとくも乳を揺らす彼女に、
僕は現実を突きつけてやった。
「うへぇー、せっかく忘れてたのに、思い出させないでよぉ」
先程まで朗らかに笑っていた彼女は、苦虫を潰したような顔をした。
「勉強、してないでしょ?」
そんな彼女を、僕は思わずジト目で見つめた。
「してるよぉ!ちゃんと教科書は開いてるもん!」
プリプリと怒りだし、可愛らしく『もん!』なんて言っている彼女だが、
僕にはいまいち勉強しているようには思えなかった。
「ノートは?」
僕は確認するように彼女に問いかけた。
「教室に、置いたままかなぁ」
てへぺろぉ、
とか言って彼女は小さく舌を出しながら、ポリポリと頭を所在なさげに掻いた。
「勉強する気が更々ありませんねぇ」
案の定、思った通りだったので、僕は思わずため息を吐いた。
「教科書を丸暗記してるから大丈夫だよ!」
どこからその根拠が湧いてくるのか、彼女は自信満々でサムズアップしてきた。
「黒板にしか書いてない内容が出てきたらどうするんだよ・・・」
僕は彼女の発言を聞いて、オーバーリアクション気味に頭を振った。
「当日パンに挟んで食べれば、問題なし!」
アンキパンかよ、
と心の中で思ったが、あれはノートを写しとるだけで、
直接食べるなんていう暴挙には及んでいなかったので、
口に出すことはしなかった。
「羊さんも真っ青な勉強方法ですねぇ・・・」
ノートを食べると聞いて連想したのが、手紙を食べてしまう羊の歌だった。
今、エンドレスで脳内を流れている。
「めぇえぇえぇーっ!私は悪い羊さんですぅ!お勉強してないで遊びに行こぉ?」
何か琴線に触れたのか、彼女は羊のモノマネをしだした。
口で『めぇ』と言って、両手で角っぽいのを作っただけだったが。
悪い羊さんなら、そのワガママな乳でも搾ってオシオキしてやろうか、
と僕は胸の中で思った。
「人が必死にテスト勉強してるのに、
遊びに誘ってくるとか、悪魔の誘惑か・・・
・・・その両手で表現しているであろう角っぽいのは、
羊さんのでは無く、サキュバスのものなのかな?」
僕は彼女の豊かな乳房をガン見し、
思わず両手の人差し指を立て、その柔らかそうな爆乳に突きそうになった。
きっとズブブ、とかフニョンみたいな素晴らしい擬音の、
想像もつかない極楽の感触を味わえるに違いないだろう。
「ぶぅっ!私、エッチじゃないよぉっ!」
彼女は焼き立てのオモチのような、ぷっくりとした白い頬を、
目一杯膨らませて不満を顕にした。
「そんなあからさまな〈童貞を殺す服〉を着てるのに?」
僕はせっかく指を立てたので、彼女の膨らんだ両頬をプニッと押し潰した。
ぶぅ、と不細工な音を立てた彼女は、くすぐったそうに身体を捩って微笑んだ。
「え?可愛くない?」
微笑む彼女は両手を広げて、クルッと1回転して自慢の服装を見せびらかしてくる。
「最っ高に可愛い」
リノン・ワンピースのスカートがフワリとエレガントに舞い広がる様に、
僕はニヤける頬を押さえきる事が出来なかった。
「えへへぇ」
花の妖精のように可憐に舞ってみせた彼女は、照れくさそうにはにかんだ。
「胸、強調され過ぎ」
彼女の華やかな舞いにテンションのボルテージが上がった僕は、
言わなくてもいいような事まで、ついつい口から零れてしまった。
「結局、胸ぇ?」
機嫌良さげにニコニコしていた彼女は、
僕の発言を聞いてガックシと肩を落とし、
半目になって僕を見つめてきた。
「いや、だってしょうがないよ?
そんなご立派なお胸様が、パッツンパッツンの可愛らしい服に包るまれて、
バァンと全面的に突き出されていたら、
男なら誰でも鼻の下が伸び、もとい目がいくよ?」
彼女の機嫌が急降下した事に慌てた僕は、
言い訳がましく、しどろもどろで、挙動不審ながら、必死になって弁明した。
「まぁ・・・狙ってるからねぇ」
必死に弁明をする僕から不意に目をそらした彼女は、
ボソリとした声だったが、確かにそう呟いた。
「あーっ!今、狙ってるって言った!狙ってるって言ったぞぉ!」
彼女の呟きを辛うじて拾った僕は、鬼の首でも取ったかのように騒ぎ立てた。
「エー、ソンナコト、イッテナイヨー」
僕から目をそらし続ける彼女の瞳は、バタフライでもしているかのように泳いでいた。
「嘘だ!・・・あざとい!流石あざとい!」
僕はスポーツ系の部活が、中腰で声出しでもするかのように、
渾身の力を込めて叫んだ。
「でも、こういうのが好きなんでしょ?」
僕が煩すぎて若干イラッとした表情をした彼女は、
開き直ったのか真正面から僕を見据え、ニッコリと妖艶に微笑みながら、
上目使いで挑発してきた。
「ぐぬぬ・・・大好きです!」
僕は舌を軽く出して、親指を立ててグッと彼女に応えた。
「正直者だなぁ」
彼女は苦笑いしながらも、満足そうに、ムフゥと鼻息を吐いた。
当然の如く、
この後テスト勉強しようという流れにはならず、
彼女の気の赴くまま、街に繰り出し遊び倒した。
〈童貞を殺す服〉に身を包んだ、
満面の笑みを浮かべる爆乳美少女である彼女と寄り添いながら、
一緒に街を歩いている時、人とすれ違う度に、
男は必ず驚愕の表情で振り返ってきたので、優越感が半端なかった。