11/169
スパイシーチキン
「ケントッキー買ってきたよー」
それが帰宅した僕の第一声だった。
「どうしたの?急に」
彼女がキョトンとした顔で聞いてきた。
「いや、帰ってくる途中で腹減ったなぁー、から揚げ食いてぇなぁーと思ってさ」
「それでケントッキー?」
「うん、前に店の前を通った時にスパイシーチキンの看板が出ててさ。食べたいなぁーと思ってたんだよ」
「ふーん、あ、まだあったかい」
袋を手渡し、彼女は食べる準備をしてくれる。
「ダッシュで帰ってきたからね」
僕はおどけて笑った。
「実は私も食べたかったの」
食事を始めようとすると彼女がテレながら笑い言ってきた。
僕はそうだと思った、と言ってから食事を始める。
「辛っ、うまっ」
「辛っ、うまっ」
同じ感想の彼女と笑いあう。
「辛いけど美味しいね」
「ケントッキーも久しぶりだけど、美味しいね」
僕たちはお互いに手と口が油でベトベトになりながらも、笑いあいながら食事を楽しんだ。