1/169
夏のボーナス
夏のボーナスが出た。
額を見たが去年と一緒だった。
予想通りと言えばそうなのだが、「もしかしたちょっと多いかも」と少し期待していた自分がいた。
まぁボーナスを決める評価面談では手応えもなかったし、評価してもらえる程の仕事もしていない。
妥当の額だし、世の中ボーナスが無い会社もいくらでもあるし、あっても寸志程度なんてもっとある。
貰えるだけありがたい話である。
「ボーナス出たから今日は焼肉でも食べに行こうか」
僕はくつろいでいて彼女に声をかけた。
「え、今晩は唐揚げよ?もう準備してあるもの」
彼女は雑誌から顔を上げ、僕の方に向いた。
「唐揚げ食べに行く?」
僕はおどけて言う。
「なんでよ、私の唐揚げが嫌なの?」
彼女は呆れた顔をしながら答えた。
「せっかくお金おろしてしたのになぁ」
「それなら明日ケーキバイキングに連れて行ってよ。ちょうどこの雑誌に載ってて行ってみたいと思っていた所なのよ」
彼女は雑誌を僕に手渡してきた。
確かに美味しそうだった。
「それじゃ明日ここに行こうか」
密かに夕食の唐揚げを楽しみにしながら彼女に雑誌を返した。
実は彼女の唐揚げは好物なのだ。