セシリア
翌朝。櫻がベッドの上でアスティアに食事を与える様子を、隣のベッドで頬を緩ませ眺めているカタリナの姿があった。その様子には酒の名残等何も無くすっかり元通りだ。
「いやぁ、済まないね。本当はお嬢にもと思って二人分頼んだ酒だったんだけど、つい飯が美味くて酒も進んじまった。」
「そこは気にしてないから良いさ。確かに美味い食事だったし、何よりお前さんにとっては懐かしい味だっただろうからね、食が進む気持ちは解るよ。」
櫻は昨夜のカタリナの様子を思い出し、アスティアの髪を撫でながらフフッと微笑む。
その時、『コンコン』と部屋の入り口扉をノックする音が聞こえ、アスティアが櫻の首筋から牙を抜くと皆が一斉に扉へと視線を向けた。
「カタリナ、起きてるかい?」
扉の向こうから聞こえて来たのは女将の声だ。
「あぁ、起きてるよ。どうしたんだい?」
カタリナの返事にガチャリと扉が開くと顔を覗かせた女将。ベッドの上の櫻とアスティア、二人の裸の姿を目にすると
「おや、着替えの最中だったかい?済まないね、こんな朝っぱらから。」
と少し申し訳無さそうに言う。
「あぁ、この二人は気にしなくて大丈夫さ。それよりアタイに何か用が?」
その言葉を受けて櫻とアスティアはそそくさと脱いであった服を頭から被る。
「あぁそうそう。アンタ、今でも魔物ハンターをやってるのかい?」
「ん?そりゃぁね。何だい藪から棒に…?」
「あぁ、いや。所帯を持ったら普通は引退するもんだからねぇ。」
そう言って命に目を向ける。
「だから、そういうんじゃないって。」
頬を染め少々慌て気味に否定するカタリナ。しかしその言葉に少しばかりの躊躇いが有る事に女将はフッと笑顔を見せた。
「まぁそういう事ならちょっと頼みを聞いてくれないかい?」
「頼み?聞くかどうかは内容次第だと思うけど…どうかしたのかい?」
カタリナの返事に女将は小さく頷くと、手を伸ばし壁の陰に隠れていた人影を引き寄せた。
「ど、どうも…。」
一言だけの挨拶と小さなお辞儀をしたその人物。その姿は身長や顔立ちから高校生程の年齢のように見えるが、その風貌に櫻達は思わずカタリナと見比べるように首を動かした。
インディアン風のブカブカの服にサンダルのような履き物、薄褐色の肌に赤い目とお揃いの赤い髪。カタリナと違うとすればその髪質だ。多少外跳ねの癖っ毛風では有るがカタリナのワイルドなボサボサ髪と比べると綺麗なサラサラのストレートヘアーを無造作に靡かせた少女であった。
生真面目そうな目付きでカタリナを始めとした四人を値踏みするかのように見回すその少女の頭に、ポンと女将の手が置かれた。
「この娘は『セシリア』って言ってね、駆け出しの魔物ハンターなんだよ。」
「あぁ、その服装はそうなんだろうね。」
カタリナも一目で察したように頷く。
「でね?この娘が男嫌いでねぇ。パーティーを組めないもんだから全然狩りが上手く行かなくてさ。ここ暫くこの宿で手伝いをして貰いながら住まわせてるんだけど、丁度アンタが帰って来たもんだからさ…良かったら戦い方を教えてやってくれないかい?」
その女将の言葉にセシリアと紹介された少女の眉がピクリと動いた。
カタリナは櫻に目配せをすると、自分の頭をちょいちょいと控え目に指差して見せる。それを受けて櫻は小さく頷いて見せると、カタリナに対して読心術を使った。
『どうする?お嬢。アタイとしちゃどっちでも良いんだが、お嬢が旅を急ぐなら断るよ?』
『いいんじゃないか?折角の同族の後輩だ。ここで遇ったのも何かの縁、無駄に生命を散らさないように『生きる為の戦い方』を教えてあげたらいい。それにお前さんの恩人の頼みなんだ、断わる理由は無いさ。』
サワサワと耳に掛かる髪が靡くと、カタリナは擽ったそうに肩を竦めてブルブルと身震いをした。女将とセシリアはそんなカタリナの様子を不思議そうな目で見る。
小さく頷いたカタリナは一度セシリアへ視線を向けると女将の目を見て
「あぁ、良いよ。そんなに長い期間は居られないと思うけど、数日位で良いなら引き受けるよ。」
と快い言葉を返した。
「おぉ、有り難うよ。その間の宿泊費はタダでいいから、この娘の事、宜しくね!」
「いやいや、流石にタダは駄目だって。アタイだってそれなりに稼げるようになってるんだ、ちゃんと払わせてくれよ。」
「そうかい?あのカタリナがそんな事を言えるようになるなんてねぇ…。」
そんな二人のやり取りに、セシリアは何処か不機嫌な表情を浮かべ唇を尖らせるのだった。
その後一階のホールに在るテーブル席でセシリアを含めた五人でテーブルを囲み朝食を食べる事となった。しかしセシリアは特に何を喋る事も無く黙々と目の前の料理を口に運ぶ。だがその表情は料理の味に頬を緩めた優しいものであった。
食事を遠慮したアスティアと命にチラチラと少々の疑問の目を向けつつも無言のまま食事を終えたセシリアは、自分が使った食器を持って厨房へと姿を消す。
「…あの人、何かずっと機嫌が悪いみたい。ボク達何かしたかなぁ?」
櫻にピッタリと寄り添いながらアスティアが首を傾げる。
「多分、あたしらに問題が有るんじゃなく、あの娘の気持ちの問題さ。なぁに、これから打ち解ければ良いんだ。そんなに気にする事じゃないさ。」
櫻はそう言って不安そうなアスティアの頭をよしよしと撫でると、アスティアも表情を綻ばせ櫻に身を擦り寄せた。二人の仲睦まじい様を微笑ましく眺めるカタリナと命。そんな一同を、セシリアは厨房の陰からじっと見つめるのだった。
櫻達の食事も終わり、いよいよセシリアに戦い方を教えるという事で一行は町を出て少し行った所に有る林の中へ来ていた。
まだ朝の涼し気な空気の残る林の中、暖かな木漏れ日が差し込む爽やかなその中でセシリアが櫻達…いや、カタリナへ向けて放った最初の言葉。それは
「アナタ、本当に魔物ハンターなんですか?」
であった。
「何だい?藪から棒に…見て解るだろう?アンタと同じ、戦闘服だ。」
カタリナは自らの衣服の裾を摘まみ上げて見せる。
「そんな見た目だけの話をしているんじゃありません。服装だけなんて誰でも用意出来ますからね。大体、何なんですか?その子供達は。子連れのハンターなど聞いた事がありませんよ。」
ヒラヒラとして戦いの邪魔にしかならないような服装の櫻達に目を向け訝しむ。
「アンタが聞いた事が無いだけで、居ない訳じゃないさ。現にここに居るんだからね。」
「ふざけないで下さい。ワタシが言いたいのは、アナタが本当にハンターで、ワタシに教えるだけの技量が有るのかどうかという事です。失礼ですがアナタ方を見ていても普通の家族連れのようにしか見えない、とてもハンターとして食べて行っているとは思えないのです。」
「…アタイが魔物ハンターだって紹介したのは女将だ。アンタは女将の言う事を疑うのかい?」
「いえ、女将さんは信頼しています。ですがその女将さんが騙されているという事は考えられます。何せ、アナタが戦っている処を女将さん自身が見た訳では無いのですからね。」
ジッと疑いの眼差しを向けるセシリアに、カタリナは腰に手を当て『はぁ~…』と長い溜め息を吐いた。
「まぁ今までの態度の理由は解ったよ。それで?どうしたらアタイがハンターだと証明出来る?魔物はこっちの都合で現れてくれたりはしないよ?」
「そんなのは簡単です。ワタシとアナタで手合わせをしましょう。まさか魔物じゃないから戦えないとは言いませんよね?」
そう言うとセシリアは腰を少し落とし片足を引き、両手を軽く前へ出すという独特の構えを見せた。その構えを見たカタリナは小さく『フッ』と笑みを浮かべると同じ構えを取る。
視線を交わす二人の間に静寂が訪れ、サワサワと林の木々の葉擦れの音だけが聞こえる。
最初に動いたのはセシリアだった。『ガサッ』と足元の落ち葉を踏み締めると大きな一歩で間合いを詰め深く身体を落とし、両拳で腹部と顎部を狙う同時攻撃が繰り出された。
しかしカタリナはそれを軸足を回すだけでヒラリと躱し、その反動を利用した回し蹴りを繰り出す。だがセシリアは更に姿勢を落とし振り抜かれた足はその頭上を掠める。
カタリナの軸足を目掛けて足払いを狙うセシリア、しかしカタリナはセシリアの頭に手を乗せると、大きく跳ね上がりその背後へと回り込み、首の後ろへと手刀を突き付けた。
「どうだい?これで納得して貰えたか?」
余裕のカタリナの態度にグッと奥歯を噛み締め肩を震わせるセシリア。すると喉の奥から絞り出すように
「…です…。」
と呟いたかと思うと
「ん?」
「三本勝負です!先に二本取った方が勝ちですぅ!」
突然、癇癪を起こしたような大きな声が林の中に木霊するように響いた。その声に驚いたのか、林の中で囀っていた鳥達が一斉にバサバサと羽音を立てて飛び去って行く。
今までの静かな怒りを湛えたかのような声色からは想像の付かなかった少女らしい甲高い声に櫻達は驚き目を丸くする。その様子に『プッ』と噴き出すカタリナ。
「あぁ良いよ。何なら今から三本勝負って事で仕切り直すかい?」
「舐めないでください!アナタの動きはもう解りました!次はワタシが勝ちます!」
拗ねた子供のようにそう言って立ち位置を直し、再び向かい合い構えを作る。そのセシリアの真剣な眼差しに応えるようにカタリナも視線を据えると静かに構えた。
そして今度はカタリナが先に動く。大きく踏み込み姿勢を落とし両手を使い二点を狙う、先程のセシリアの動きだ。
意表を突かれたセシリアであったが、驚きの表情を浮かべるも冷静にそれを両手で受け捌くと同時にカタリナの顎目掛けて膝を蹴り上げた。
(捕らえた!)
セシリアに勝利を確信した微笑が浮かぶ。しかしカタリナはそんなセシリアに笑み返すと、徐に頭を振り下ろした。
『ゴッ!』と鈍い音が響いたかと思うと、蹴り上げたセシリアの膝から足全体にジーンと衝撃が伝わり、まるで感覚が失われたかと思う程であった。
「なっ!?」
「こんなの『型』には無いからね!」
カタリナは膝を撃ち落とした頭をそのままセシリアの腹部目掛けて突き上げる。動揺したセシリアはそれの直撃を許すと、鳩尾への深い一撃に『ぅぶっ!?』と情けない息を漏らし呼吸が止まり、目に涙を浮かべ膝から崩れ落ちた。
だがそれでもセシリアは両手を伸ばしカタリナの肩口に掴み掛かった。しかしそれが最後の抵抗だった。カタリナが掌底を打ち上げ顎部にヒットすると、一瞬意識が飛んだのか、肩から力が抜けたようにグラリとよろめいた。
倒れる身体をカタリナが受け止め、そっと横にする。するとセシリアの瞳に浮かんだ涙は更に溢れ、ぼろぼろと頬を伝い始めた。
「う…うぅ…なんで…ワタシは強い筈なのに…なんでぇ…。」
呼吸の整わない苦し気な声で泣き出したセシリアに、カタリナも櫻達も驚き困惑し声を掛ける事が出来なかった。
それから暫くし、やっと呼吸の整ったセシリアはヒックヒックと嗚咽を漏らし、流れる涙を拭うと自身を落ち着ける為に深呼吸をして立ち上がり、カタリナに向け頭を下げた。
「…お見苦しい姿を見せてしまい済みませんでした…。」
「あ、あぁ。それで、納得はしてくれたのかい?」
カタリナの質問に小さくコクリと頷いて見せると、その様子に櫻達も一安心と息を吐いた。
「それでお前さん、何で一人で魔物ハンターをやろうとしてるのか、聞いても良いかい?」
櫻が疑問を口にすると、セシリアはカタリナの目を見る。カタリナはその視線を正面から受け止めると、何も言わず静かに瞳を閉じて見せた。
「はい…。」
負けを認めたセシリアはポツリポツリと話し始める。
それはライカンスロープの集落での幼い頃の話。セシリアもライカンスロープ族の例に漏れず小さい頃から戦闘術を生活の一環の如く日々の中で身に着けていっていたのだが、その成長は目覚ましく集落の大人達も一目置く程だったという。
そうして神童のように謂われ、事実歳の近い者達の中では負け知らず、大人達にすらも手合わせではかなりの勝率を誇っていた。
戦闘だけでは無く何事も卒なく熟し非の打ち所の無い才女として集落の中で輝いていた。
だがそんなセシリアにも欠点があった。それが男嫌い、そして人見知りだ。特に集落外の者達に対しては極度の人見知りをし、周囲の大人達からは将来を心配する声も聞こえる程であった。
そこで集落の長老はセシリアが15歳になったのを期に外の世界を経験して来るようにと諭し、送り出した。
「それで何で魔物ハンター?」
アスティアが不思議そうに口を挿む。
「アタイらライカンスロープにとって外の世界を見て回るってのは要するに武者修行みたいなもんだからね。そんな旅を続けるのに一番適してるのは金を稼げて修行も出来るハンターなのさ。」
カタリナの説明にセシリアはこくりと頷いてみせた。
「でもワタシは男が嫌い…ゴツゴツして変な匂いがして…ハンターはそんな男ばかりで仲間を募る事なんて出来ません。」
そう言葉を続けたセシリア。
自分は強い、一人で何でも出来るという自負も有り、いざギルドの依頼を受け討伐へ向かってみるも、中々成果は挙がらず小型の魔獣すら討伐出来ずに逃げ帰る日々。そんな事を続けている内に旅に出た時に貰った路銀は底をついてしまっていた。
そんな時、センティラキタの町の中をフラフラとしていると食べ物の良い匂いに誘われ辿り着いたのが、例の宿屋だったというのだ。
その話を聞いた途端、櫻達はカタリナを見て『プッ』と噴き出し、カタリナは照れ臭そうに頭を掻いた。セシリアはその様子を不思議そうに見るのだった。
そうして宿の女将に身の上話をした処、『しばらく此処で生活しながら強くなれば良いよ。』と温かい言葉を掛けられ、細々と宿の手伝いをしながら熟せそうなハンター業にチャレンジする日々だったと言う。
「成程ねぇ…でもライカンスロープの集落の中じゃ強かったんだろう?何で魔獣に勝てないんだい?」
「そりゃぁ、コイツの戦い方が『対人』でしかないからさ。」
櫻の疑問にカタリナが答える。
「アタイらが習う『型』は一人でもやれるけど組手形式でやるものもある。でもそれは結局人相手でしかないから、獣を狩るには使い物にならないのさ。だけどこの娘はその『型』がしっかりと身に付いちまってる。それこそ里の中じゃ負け知らずな位にね。」
「つまり、獣相手に人相手と同じような戦い方をしてしまう…と。」
「そういう事。アタイも経験有るから解るよ。アレは獣相手の実戦じゃ何の役にも立たない。だから大人達も『型』での手合わせではコイツにも負けてたんだろうね。」
「…どういう事ですか?」
カタリナの言葉にセシリアがムッとして唇を尖らせる。
「アンタは里の中で『型』での戦い方が上手かった。いや、『手合わせが上手かった』と言うべきかね。でも大人達、特に男連中は外に『狩り』に行くんだ、そこで必要なのは『型』じゃない。獣相手に実戦で使える技量と知識さ。だから『型』なんてのは頭の片隅に有る程度でしかないんだよ。」
「集落じゃ女は狩りに出かけないのかい?」
櫻は意外という風に声を漏らした。
「あぁ。女は里の中の事をする、男は里の外で狩りをしたり交易をしたりする。それがアタイらの種族の典型的な役割分担だね。」
(まるで狩猟採集時代みたいだね。)
櫻は思わずカタリナが獣皮の服を着て石斧を手に持つ姿を思い浮かべてしまった。
「だからアタイみたいに魔物ハンターになる為に飛び出すような女はそうそう居ないのさ。勿論皆無じゃないけどね。」
(それが解ってるならこんな娘を一人で放り出すような事はしないと思うんだが…察するに、何でも出来ると天狗になっていた娘を戒める為に世間の厳しさを体験させようというのが本当の狙いなんだろうね。なかなかのスパルタだ。)
フムと顎に手を当て櫻が頷く。
「それじゃぁ話は大体分かったけど、お前さん、まだハンターを続けるつもりなのかい?」
「…どういう意味ですか?」
櫻の言葉の意味が本当に理解出来ないとばかりにセシリアはきょとんとした表情を見せた。
「いや、里へ帰るでも良いし、町でハンター以外の仕事…それこそ宿の従業員として働くのも良い、兎に角何もハンターに拘らなくても良いんじゃないかって事さ。」
「アナタはワタシを侮辱するのですか?其方の方には負けを認めましたが、アナタのような子供にまで侮られるとは心外ですね。」
「ほぅ?心外だったらどうする?あたしみたいな小さな子供相手でも『手合わせ』するかい?」
挑発的な表情を浮かべる櫻にセシリアが不快感を顕わにし、拳に力が入るのが見て取れた。
「ちょ、お嬢!何挑発するような事を…。」
慌ててカタリナが二人の視線を遮るように間に入る。
「『お嬢』…?その子はアナタの子供では無いのですか?…貴族の娘には見えませんが…。」
「あ…。」
思わず口から出た自身の言葉にカタリナが手を口元に運ぶが既に遅い。
「あ~…女将には余り知られたく無かったから言わなかったんだ、内緒にしてくれよ?そう、アタイは今このお嬢の御供として一緒に旅をしてるのさ。別に里帰りでも何でもない、向かう先は逆方向だ。」
「アナタ程の人がこんな小さな女の子に仕えるなんて、何か弱みでも握られているのですか?それともお金?」
訝し気な眼差しをカタリナと、その背後に隠れる櫻に向ける。
「あはは、弱みよりもっと大事なものさ。まぁ、操を捧げたようなもんだと思っておくれ。」
「えぇ!?」
「ボクもだよ!」「私もです。」
「えぇぇ!?」
アスティアと命もここぞとばかりに主張をすると、驚くセシリアに櫻は思わず苦笑いを浮かべた。
「まぁそれは置いておいて、ちょっと悪乗りをして挑発的な事を言ってはしまったけど、あたしが言いたいのは何も戦う事ばかりじゃなくて別の生き方を選べないのかって事だよ。ライカンスロープだって別に狩猟だけじゃなく商売だってやってるんだろう?お前さんは器量良しだし家庭に入るのも悪く無いと思うがね?」
三人もの女性を侍らせた少女を目の前に底の知れぬ物を感じたセシリアは、漸く素直に耳を貸した。
「…それは、実は女将さんにも言われました。でもワタシは、小さい時から身体を動かすのが好きなんです。そして強くなりたい。だから里を出てハンターになると決めたからには諦めたく無いんです。」
真剣な眼差しがその言葉の本気さを後押しする。
「やれやれ、生真面目な処以外はカタリナそっくりだねぇ?」
「お嬢、それはアタイが不真面目って事かい?」
「ははっ、そうとも取れるがそれが悪い訳じゃない、気にするな。」
パンパンとカタリナの尻を叩きカラカラと笑う櫻。
「まぁ、そういう事ならカタリナ、後はお前さんに任せたよ。」
「あぁ。」
こうして双方の納得が得られ、漸くセシリアの魔物ハンターとしての特訓が始まるのであった。




