平穏な時間
ギルドを出た一行が大通りまで戻ると、櫻は後ろに続く三人に振り向いた。
「さて、結構な予算が手に入った事だし色々と買い物をしようと思うんだが…どうだい?」
チラリとカタリナに視線を送る。
「あぁ。良いんじゃないか?水筒も燃えちまったから新しいのを買わなきゃならないしな。」
スペンドの糸に捕らわれた時にアスティアとカタリナの腰に下げていた水筒は落としてしまったらしく、その後の調査の際に森の焼け跡からその燃えカスが見つかっていたのだった。
「よしよし、財務大臣の許しも出た事だし…。」
「ザイムダイジン?ってアタイの事か?」
カタリナは自身を指差し首を傾げて見せた。
「おっと、気にしなさんな。それよりアスティア、確かあたしの言う事を『何でも』聞いてくれるんだよね?」
アスティアに視線を向けると、ニッと悪戯心が見える表情を浮かべる櫻。
「えっ?う、うん。サクラ様の言う事なら何でもするよ…?」
突然の櫻らしからぬ言葉にアスティアは思わず不安気な声を返した。
「ふっふ~ん、それじゃぁ…。」
どんな命令が下されるのかとアスティアはごくりと唾を飲み込んだ。
「今日一日、あたしと二人きりで町を見て回ろうじゃないか。」
「えっ?」
きょとんと目を丸くするアスティア。
「なぁカタリナ、済まないがあたしとアスティアが一日遊べるだけの予算を貰えないかい?」
「ぷっ…あぁ。これくらいで足りるかい?」
アスティアの呆気に取られた表情に思わず吹き出しそうになったカタリナは、財布の中から何と大金貨1枚と小金貨10枚を取り出し櫻へ手渡した。
「…太っ腹だねぇ。」
「足りないよりは良いだろ?でも無駄遣いは駄目だよ?あと、余り金を持ってる処を他人に見られないようにしなよ。子供がそんな大金持ってたら危ないんだからさ。」
「解ってるって。」
子供に念入りに注意を促す親のような口調に櫻は思わず頬を膨らませた。
「それじゃカタリナ、済まないが旅に入り用な物の買い物はそっちに任せて良いかい?」
「あぁ、任せときな。ゆっくり楽しんで来なよ。」
とんとん拍子に進む会話にアスティアは茫然とその様子を見守っていると、カタリナは命の手を取り何処かへ行ってしまった。
「さてアスティア、それじゃ行こうか?」
カタリナ達を見送った櫻がクルリと振り向くと手を差し出した。
「う、うん。」
アスティアは櫻が一体何をしたいのかが理解出来ず、ただ大人しく差し出された手を握ると、櫻はニコリとして歩き出した。
「さて先ずは…あたしの服でも選んで貰おうかな?」
「えっ?」
周囲をきょろきょろと見回してから衣類を扱う店を見つけ櫻が指差す。
「いつもはカタリナの趣味の服ばかりだからね。たまにはアスティアの好みの服を着たいねぇ。勿論あたしに似合うのを選んでくれなきゃ許さないよ?」
ニッと歯を見せて笑う櫻に、アスティアの表情はパァっと明るくなった。
「…うん!任せて!」
そう言うと今度はアスティアが櫻の手を引いて衣服店へと入る。店内には様々なデザインの衣類が展示されているが、この世界の販売衣類は基本的に一点ものであり、もし同じ物が大量に欲しい場合にはその都度店に製造を頼むという。アスティアの家に在った大量の背中の開いた服はそうして度々追加注文した結果なのだ。
そんな大量に展示された衣類の中、アスティアは唇に指を添えて真剣な眼差しで吟味する。
「これがいいかな?」
そうして選んだのは、膝上丈のフレアスカートのゴスロリ風ワンピース。色は光に透かさなければ黒と見紛うような濃い紫をしており、腰回りはベルト状の紐で締める事でスマートなラインを作り出し、そして何より各所に悪目立ちしない程度に配されたフリルとリボンが子供の愛らしさを際立たせる。
「わぁ、サクラ様、凄く似合うよ!可愛い!」
「そうかい?ありがとう。それじゃコレにしようかね。」
試着し、鏡の前で全身を映すようにクルリと回ってみると、スカートがふわりと舞う。
(う~ん、やっぱりアスティアはこういうのが好きなんだねぇ。カタリナも気を遣っては居るんだろうけど、どうしてもその店で見つける珍しい感じの服を選んじまう傾向が有るからねぇ…。)
そんな事を考えつつ、周囲に目を向けた。
「さて、それじゃあたしの命に忠実な可愛い娘には、その忠義に報いなきゃね。」
そう言って手を伸ばしたのは、赤と黒で構成されたこれまた膝上丈のふんわりとしたフレアスカートのゴスロリ風の服だ。出来るだけアスティアが選んだ物と同じようなデザインを見繕い、それを手に取るとアスティアの身体に宛がってみる。
「うん、似合いそうだね。」
「えっ!?ボクはいいよ!サクラ様の服を買いに来たんでしょ!?」
「おやぁ?あたしのする事に文句を言っちゃうのかい?悲しいねぇ、アスティアのあたしへの想いはその程度だったんだ…。」
よよよとわざとらしく顔を覆うと、アスティアは困ったように手をあわあわとさせる。
「わわっ、ご、ごめんなさい!」
「ふふ、謝らなくて良いよ。着てくれるよね?」
「…うん!ありがとう、サクラ様!」
こうして試着をしたまま会計を済ませ、それまで着ていた服は店の好意で袋を貰いその中へ納めると店を出た。
お揃いのような服を着て上機嫌のアスティアに、櫻も表情は明るい。
「それじゃぁ次は…あそこかな。」
と入って行ったのはアクセサリーの店だ。
「さてアスティア、今のあたしのこの服に似合うのはどんなのだろうね?」
隣に寄り添うアスティアの顔を見上げると、突然話を振られたアスティアは一瞬驚いたような表情を見せ慌てて店内を見回した。
「え…えっと…。コレ!コレがサクラ様に似合いそう!」
小物の並ぶ棚を眺め手に取ったのは、桜の花を模したような小さな木製の髪飾りであった。
(これは…桜…?この世界にも在るのか?)
驚く櫻を他所にその髪飾りをそっと櫻の髪に留めてみると、
「うん、似合う!」
と満足気なアスティア。
「なぁ、アスティア。この花びら、何て言う花なんだい?」
「これ?これは『サッサム』だと思うよ。コレだと色までは判らないけど、本当は冬が明ける頃と冬が来る前頃の季節に短い間だけ咲くピンク色の綺麗な花なんだ。」
「へぇ~、それはいつか見てみたいもんだねぇ。」
(その下で酒でも飲めたら最高なんだが。)
重箱と日本酒と舞い散る桜の花びら。そんな光景が思い起こされる。
「さてそれじゃぁあたしも…お、コレが良いね。」
櫻が手に取ったのは、同じく木製の、タンポポのような花を模した髪飾り。それをアスティアの髪に留めると、金の髪色と相まって本当にタンポポが咲いたかのように映える。
「うん、似合う。」
うんと頷きニコリとする櫻に、アスティアははにかみ顔で頬を染めた。
会計を済ませ、手を繋ぎ店を出ると町並みを眺め通りを歩く。
(さて…地球ならショッピングの後は食事や、映画なんかも有りだけど、コッチには映画なんて無いだろうし、食事はアスティアの場合なぁ…どうしたもんか。この世界の娯楽事情はどうなってんだろうね?)
そんな事を考えながら辺りを見回していると、公園のような場所で子供達が何やら楽し気な声を上げている姿が見えた。
「ん?あれは何をしてるんだ?」
見ると6人の子供達が小石を蹴って遊んでいるようだ。歳の頃は8歳から12歳位と言った処だろうか。
「あ、懐かしいなぁ。石蹴り遊びだ。」
櫻の視線を辿ったアスティアがその様子にポツリと漏らした。
「『石蹴り遊び』?」
「うん。サクラ様は知らないの?」
「あぁ、初めて聞いたね。」
意外そうに言うアスティアに櫻は少々困ったように答える。どうやらアスティアの言い方から察するにこの世界ではメジャーな遊びなのだろう。
「一体どういう遊びなんだい?」
「う~んとねぇ…実際に遊んでみた方が良いよ!」
そう言うとアスティアは子供達の処へテテテと駆け寄り
「ねぇねぇ。ボク達も混ぜて!」
と唐突に声を掛けたではないか。
「いいよー。」「どっちに入る?」「二人とも女の子だしアタシたちの方に入ろう?」
男の子が4人に女の子が2人だった事も有り、あれよあれよと話は進み櫻達は女の子組に入る事になった。
「それじゃ石拾って来るからちょっと待ってて!」
アスティアは櫻の手を引いて公園の隅へと小走りに駆け出した。
「ちょ、ちょっと待っておくれ。一体何をすれば良いんだい?」
困惑する櫻にアスティアはニコリと微笑む。
「えっとね。サクラ様もコレくらいの石を選んで。」
そう言って摘まみ上げたのは時代劇で見る大判位のサイズの、角の取れた楕円の石だ。
「う、うん。え~っと…コレくらいかな?」
櫻も手頃な物を見つけると拾い上げる。
「そうそう。それでね、次は…。」
と、アスティアは突然に自分の髪の毛を数本プツリと抜き取る。そしてソレを撚り合わせて目立つ太さにすると石に括り付けた。
「こうやって自分の石が判るように目印を付けるの。ボクはいつもこうやってるけど、何か判り易い絵を描いたりでも良いよ。って言っても、今は書く物なんて無いか。」
「こう…か。」
櫻もそれに倣い髪の毛を数本抜いて撚り合わせると新聞を縛るように十字に石に括る。
(う~ん、この真っ白な髪は余り目立たないが…まぁ判れば良いか。)
「それじゃ皆の処に戻ろ。」
再び櫻の手を引いて子供達の元へ戻ると、既に遊ぶ準備が出来ているとばかりに男女に分かれた皆は小走りに駆けて来る櫻達の姿に目を向けていた。
「おまたせー!」
アスティアは女子組の元へ駆け寄ると、その足元に並べられた石の隣に自分の石も置く。
「サクラ様もここに石を置いて。」
「あ、あぁ。こうかい?」
倣って置くと、一番年長と思われる男子が
「何だ?ソイツ遊び方知らないのか?」
と驚いたように言う。
「うん、だから皆で教えて?」
「まぁ良っか。難しく無いから直ぐ覚えるさ。」
その男子は年長の自覚が有るのだろう。櫻が一番年下と見ると何処か先輩風を吹かせるように胸を張った。
そうして始まった『石蹴り遊び』。ルールは大雑把で、その時の気分で決められた広さのフィールドの四方に小さな穴を作り、互いのチームが交互に一人ずつ自分の石を蹴る。そして相手の石に当て、弾き飛ばして穴に入れるとチームの得点となる。自分の石が落ちてしまった子供はそのゲームから脱落、自分で蹴った石が穴に落ちた場合はペナルティで得点がマイナスされるというルールだ。
しかし子供特有の自由さとでも言うか、得点数はその時の気分次第で変わるらしい。今回は各穴に1~4の得点が設定されており、ペナルティはマイナス2点というルールになっていると言う。
(ふむ、おはじき…いや、ゲートボールとビリヤードを足したような感じだね。成程、それ程複雑では無く、それでいてゲーム性も有る面白い遊びだねぇ。)
櫻の番になり自分の髪が結ばれた石を爪先でコツンと蹴る。すると楕円の石は思うようには転がらず、クルクルと妙な軌道を描いて明後日の方向へと向かう。
「う…結構難しいな。」
「あははっ、何処蹴ってんだ!?」
からかわれるように男子に笑われ少しばかりムッとする。
「サクラ様、最初は皆そんなものだよ。ほら。」
そう言ってアスティアが次のプレイヤーである男子に指差すと、その子の蹴る石も妙なカーブを描き仲間の男子の石に当たっている。
どうやら遊ぶその時になってから石を拾い集める為、その石の癖を掴むのに時間が掛かるようだ。
(成程、勝つ為には形の良い石を選んで、早く動きの癖を掴んでおくのが良いんだね。石選びの段階から勝負が始まっているとは…。)
思いがけない奥深さに櫻は感心し頷いた。
それからどれ程の時間が経っただろうか。勝って負けてを繰り返し、楽し気な声が響く公園。気付けば日は大きく傾き影が長く伸びていた。
「あ、もうこんな時間。アタシ帰らなきゃ。」
女の子の一人がそう言うと、
「あ、本当だ。僕も帰らなきゃ。」「それなら俺も帰ろう。」「そうだね、またね~。」
と口々に別れの言葉を交わし子供達は解散して行く。
「楽しかったよー。ありがと~。」
アスティアが手を振ると、皆が振り返り手を振り返してくれた。櫻もそれに応えるように両手を大きく振る。
「サクラ様、どうだった?面白かった?」
振り向き櫻の顔を覗き込むアスティア。
「あぁ、こんな風に遊んだのは本当に久しぶりだ。楽しかったよ。有り難う。」
元の世界での櫻の晩年は仕事に追われる傍ら、休日一人の時はテレビを見るかビデオゲームに興じるか、人と会うと言えば馴染みの老人と茶飲み話に花を咲かせるか碁や将棋を打つ程度で、これ程息を切らして遊ぶ事等本当に久しい事であった。
(本当に子供の頃に戻ったような楽しい時間だった…あの頃も歳の近い子供達で集まっては黄昏時まで夢中で遊んだものだったね。)
夕陽に目を向け、そしてチラリとアスティアを見る。
(それにしても、この娘は子供達と打ち解けるのが本当に早いねぇ。そうだよね…あたしと出会うまで戦いなんかとは無縁の、子供達と遊んで過ごす平和な生活を送ってたんだ、旅を初めてからは沢山のストレスを抱えて居ただろうに、助けられてばかりで…情けないねぇ。)
優しい目を向ける櫻に、アスティアは何事かと首を傾げるのだった。
再び町を歩き出した二人。
「ふぅ、流石にはしゃぎ過ぎたか喉が渇いたねぇ。」
服の首元を広げパタパタと手で扇ぐ。
「あ、サクラ様。あそこの屋台で飲み物売ってるよ。」
アスティアが指差す先には何やら果物が積まれた屋台が有った。
「あれは飲み物なのかい?」
「うん。そうだよ。サクラ様、行こ!」
手を引かれ屋台の前へとやって来た二人は店主を見上げた。一日中外に立ちっぱなしという風に日に焼けた肌の若い男だ。
「おや、お嬢ちゃん達いらっしゃい。甘くて美味しいジュースはどうだい?一つ小銀貨2枚の処、今日はそろそろ店じまいだからマケて1枚にしてあげるよ。」
「えーっと…それじゃ、一つ貰えるかい?」
財布の中から小銀貨を1枚取り出し、背伸びをして屋台の上に置く。すると
「一つで良いのかい?あぁ、お小遣いが足りないのか…分かった!オマケのオマケで二つあげるよ!」
と言って店主は櫻とアスティアに一つずつ、天辺をカットした果実を手渡した。
「えっ!?いや、だって銀貨1枚…。」
「いいっていいって!姉妹は平等じゃないと喧嘩の元だよ?」
その言葉に櫻とアスティアは顔を見合わせると、クスリと笑う。
「ありがとう。有り難く頂くとするよ。」
櫻はそう言って浅く頭を下げ屋台を離れると、通りの横に街路樹のように生える木の木陰、草の上へと腰を下ろした。
「どうしよう、これ?」
アスティアが困ったように手に持った果実を見る。その中には甘い香りを放つ液体が蓄えられていた。
「折角だからそっちはカタリナへの土産にでもしようか。」
そう言って櫻は果実に口を付け、中の汁を飲んでみる。
(おぉ、甘い!だけどクドくは無いね。スーっと後味も良い感じで確かに美味い。)
思わずゴクゴクと喉を鳴らして一気に飲み干すと、つい口を付けた部分の実まで齧る。
(うっ…実の方は駄目だな…甘い事は甘いが、その中に渋いというか妙な苦みが有って食えたもんじゃない…。)
苦い顔をし果実から口を離すと、そんな様子を見ていたアスティアに気付いた。
(あぁ、あたしばっかり美味い思いをしてちゃ悪いね…今日はアスティアの為にと思ったのに、すっかりあたしがアスティアに世話を焼かれちまってるよ…全く。)
当初の思惑とは全く違う結果に思わず頭を掻く。そして周囲を見回すと人の目が届かない事を確認しアスティアに左手の指を差し出した。
「流石に外だと誰に見られるか判らないからさ。今はこれで許しておくれ?」
「えっ…、良いの?」
アスティアは驚いたように差し出された指先と櫻の顔に交互に視線を向けた。
「勿論さ。余り出は良く無いだろうけど、ジュースだと思って我慢しておくれ。」
「我慢なんてそんな…頂きます。」
アスティアの舌が指先をチロリと舐めると、ゾクゾクとした快感が櫻の背筋に走る。そして可愛らしい唇がその指を咥え込み、口腔の中で指先が舐られると少ししてその先端にチクリとした微かな痛みが走った。
じわりと滲む血液をアスティアの舌がペロペロと舐め取る口腔内の様子が、目に見えずとも指先の感触から感じ取れる。瞳を閉じ、その味に集中しているのかアスティアの表情が夕陽に照らされ煽情的に映る。
思わずゴクリと唾を飲み込む櫻。
「ぷぁ…。」
指先から唇が離れると、名残惜しそうに伸びる舌先から唾液が糸のように伸びた。
櫻は蕩けたような瞳で無意識に、その指先を自らの口に咥え入れる。そしてその甘さにハッとし我に返った。
「あっ…。」
その動作をつぶさに見ていたアスティアと目が合い、言葉に詰まると頬が赤くなるのが解る。
「そ…その、これはだね…。」
言いかけた時だった。言葉を続ける間も無く、アスティアが櫻に抱き付くとそのまま押し倒し、覆い被さるようにして唇を重ねて来た。
しかしそれ以上の事はせず直ぐに唇を離すと、櫻の顔を覗き込み満面の笑みを浮かべるアスティアの姿がそこにあった。
「えへへ…『ここでは』駄目…なんだよね?」
その表情に櫻もフッと笑顔が浮かぶ。
「あぁ…『ここでは』駄目だよ。」
櫻はニコリと言うと身体を退けたアスティアの手に引き起こされるように身を起こし、横に置いてあったジュースの実を拾い上げ立ち上がり、お尻をパンパンと掃う。
「さ、そろそろ宿に戻ろうか。カタリナ達が旅支度を整えてくれてる筈だ。今晩はゆっくり休んで、明日の朝には出発だね。」
「うん。」
アスティアが櫻の手を取り指を絡めると、櫻もまたその手にきゅっと力を込め応える。
「サクラ様、今日はありがとう。」
「ん?何の事だい?」
「えへへ…何の事だろうね?」
こうして互いに笑顔を向け合う二人は、周囲の人々から微笑ましい視線を向けられながら宿へと帰り着くのだった。