6話 長として振る舞いました
紙に書かれていたのは、
『魔法瓶』
「やったじゃない!魔法よ!」
「これ、魔法じゃねーだろ……」
「魔法みたいなものよ。このスキルでポットやカップを温めて、中のお湯を保温できるのよ?凄いじゃない」
「いや、これ前の世界の言葉だし、なんかもう……」
「あ!そろそろ職員室行かなきゃ!じゃあねー」
スタタッ
逃げ足だけは早い女神だな。マジでこんなのしかないんだろうかあのくじ……。
まあいい。今日はやることがあるんだ。
俺は教室に戻ると、皆に声をかけた。
「おい、俺の手下共、集まれ」
「あ、あい」
「なんだい?アル君」
「んだよ、めんどくせーな」
「何か用?さっさとすましてよ」
ドワーフとゾンビとヘビ女とエルフが集まった。
こうして見ると百鬼夜行の様相を呈しているな。
俺は彼らを見渡しつつ言う。
「我がアルフレッド軍団も五人となってそれなりの規模になってきた。ここで決起集会を行いたい」
「どこでやるのよ」
エルフのラビニアがつっかかってくる。
「我が家、ヴィッセンシャフト邸で行う」
「ようは、あんたんちに遊びに来いってことでしょ」
「遊びではない。軍団はいずれは世界を制するのだ」
「はぁ……あんた、どっかイカれてるわよ、きっと」
燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや、とはよく言ったものだな。
この耳長女には俺の崇高なる理念は理解できないのだろう。
「まあいい、ほら行くぞ!これは頭としての命令だ!」
「へいへい、行きゃーいいんだろ行きゃー」
ヘビ女がずるずるとついて来る。こいつは体育会系だから意外と上下関係をわきまえてるのかもな。
五人で学校を出る。
俺の両脇にヘビ女とドワーフがいて、ゾンビとエルフが後ろについてくる。
「あんたって、地味ねえ」
「ゾンビ族とはそういうものなんだ」
「ふーん。ま、平凡というだけでもアルよりはマシかもね」
ラビニアはこの中ではゾフィーが一番マシだと思っているようだ。
家についた。妹が出迎えてくる。
「おにぃ、おあえりー」
「キャーかわいいー!」
ラビニアが飛びついた。
「おねえたん、お耳、ながーい」
「さわさわしてもいいのよー」
マリアを愛でるのはいいが、あの性格の悪さが移らないといいけど。
「皆さん、いらっしゃい。アル君がお友達を連れてくるなんて初めてね」
母さんも出てきた。
「お、お邪魔すます」
「初めまして、ゾフィーと申します」
「ちぃーっす」
「ごきげんようおば様、私はハイエルフのラビニアです」
それぞれが挨拶する。
「みんないい子ばかりね、アル君と仲良くしてあげて。今お茶をお持ちするから居間で待っててね」
なおうちは貧乏貴族なのでメイドとかはいなくて、母親が家事をやっている。
「アルとは違って感じのいいお母様ね、妹さんもかわいいし、なんであんなのが生まれたのかしら?」
「うるせー、また耳クソ晒すぞ?」
「それは嫌!」
俺とラビニアのやり取りをアーミィがむすっとした顔で見ているような。
「さあ、お茶が入りましたよ」
母さんがポットとティーカップ五つを持ってきた。
そうだ、あれをやってみるか。
魔法瓶発動!
俺は皆のティーカップを温めた。
「美味しい!茶葉は普通だけど、カップがいい温度に温まっているわね」
「うめーじゃん、何杯でもイケるわ」
「あんた砂糖入れすぎ!」
やはり好評だな。前の世界で紅茶好きのゴスロリ人形のアニメを見ていた知識が役に立ったぜ。
もっともヘビ女あたりは違いはわからなかったようだけど。
さて、本題だ。俺は立ち上がった。
「本日皆にこの決起集会に集まってもらった理由は他でもない。ここで我が軍団の役職を決めたい」
「役職ぅー!?そんなのどうでもいいだろ、かたっ苦しい」
「だまれヘビ。文句言うなら一番下っ端にするぞ?」
「んだとこの野郎!」
「また乾燥して干物女になりたいのか?」
「チッ……好きにしろ」
コホン。
「まず司令官はこのアルフレッドだ。そして副官だが、ゾフィーにお願いしたい」
「いいよ、じゃあ僕で」
「相変らず二つ返事だな……他は異論無いか?」
皆黙っている。まぁナンバー2がゾフィーで文句が出ないのは予想できた。
すでにここまででも助けられているし、理想の副官と言えるだろう。
「そしてゲルダを水軍隊長、ラビニアを後衛隊長とする」
「なんで私が後衛なの?」
「お前、弓が得意だろ?後方から支援してもらいたい」
「そうだけど……よくわかったわね」
「なんとなくだよ。お前って戦いになると後ろで隠れてそうなタイプだし」
「悪かったわね」
『力計測』の事は念のため黙っておこう。
「あたいが水軍隊長ってのは別にいいけどさ、部下もいないのになんで隊長?」
「これからさらに増やしていくってことさ」
「あんたについていく酔狂な奴がどんだけいるんだか」
「お前がいるじゃないか」
「あ、あたしは干物にされたくないから仕方なくだよっ!」
ゲルダがちょっと赤くなってる。ラビニアとツンデレデュオを結成できそうだ。
「あ、あの、あたすは……」
「アーミィ、お前は書記長だ」
「書記長……が、がんばりますっ!」
戦闘値が18もあるドワーフなんだし、本当は斧で無双する陸軍隊長にでもなって欲しいんだが、正直今のアーミィには与えられるポストが無いんだよな。
「じゃあ、アーミィは次からは議事録をつけておいてくれ」
「議事録……って、なんですか」
「えーと、話した内容をメモっといて」
「は、はい」
俺は手をポンポンと叩く。
「よし、今日の用事は済んだ。今日はこれで解散!」
「えーっ、もう終わり!?」
「早く帰らないと家の人が心配するだろ?」
「ちぇー……」
「途中までは送って行ってやるから」
俺たちはぞろぞろと部屋から出た。
母さんが皆を見送る。
「あら、もうお帰りかしら。皆さん、おうちの人によろしくね」
「はーい」
マリアも見送りに出てきた。
「おういの人によろいくー、ばいばーい」
「マリアちゃーん、ばいばーい、また来るからねっ」
ラビニア、そのデレをたまには俺にも向けろ。
五人で家から出ると……一人の少女に出会った。
褐色肌で小柄な子だ。耳が長い。ダークエルフってやつか。
ラビニアの取り巻きの子だったな。
「ジェシー!」
「ラビニア様!なんでそんな奴とつるんでるのよ!」
「それは……こ、こいつに脅されたからよっ!」
ちぇ、俺が悪者かよ。双方の合意の上で手下になったのに。
ジェシーの能力は……
11
『黒魔法』
戦闘値は低いが、黒魔法が気になる……。つーかうらやましい、俺はそういうスキルが欲しいんだけど。
「ラビニア様を取り戻すわ!」
ジェシーが手のひらを前に出して詠唱を始めた。