表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/14

2話 人助けをしました

「えーと、『土下座』の効果はね……土下座すると、相手に必ず許してもらえるのよ」

「……え?それだけ」

「そう。相手がどんなに怒っていても、土下座すれば必ず大目に見てもらえるの」

「それって、俺が土下座してお願いすれば、相手を思いのままに動かせるということだよな!」

「あ、いやそれは」

「つまり俺は誰でも思い通りにできるってことだ!もうやりたい放題じゃん!俺は新世界の神となる!」

「ちがう、ちがうの。聞いて、このスキルは、怒っている人に対して必ず許してもらえる、それだけの能力なの。だからあなたがいきなり土下座して命令をしたりしても、何も起こらないわ」

「……ええー?それじゃ、たいして役に立たないじゃん……」

「でも、相手を怒らせても必ず切り抜けられるのよ。凄いスキルじゃない」

「そうでもねーだろ……外れスキルだよこれ」

「しょーがないわねー。そうだ!」


 エイルは俺の前に人差し指を立てた手を突き出した。


「なにそれ?一?」

「いいえ、百。友達百人、作ろうよ!」

「は?」

「女神として、教師として、あなたにミッションを与えます。アル君はこの学校で、友達を百人作りなさい」

「なんで!?」

「新世界の神になるんでしょ?それなら友達くらい作れなくてどうするのよ」

「俺に何の得があるんだよ」

「あるわ。報酬として、友達一人作るごとに、あのくじを一回引かせてあげます」

「マジか!じゃあスキルがどんどん増えるってことか」

「そう。これは特別なのよ、スキルなんて一つしか持ってないのが普通だからね」

「よーし、このアル君頑張っちゃうぞー」

「その意気よ。それじゃ、頑張ってね、バイビー」


 そう言ってエイル先生は職員室の方に去って行った。


 あのくじをまた引けるのはいい話だが……友達を増やすって言われてもな。

 土下座スキルはお願いには使えないからこれで友達は増やせないし。


 そもそも、俺が欲しいのは友達じゃなくて、アルフレッド軍団(レギオン)を構成する手下(ミニオン)なんだが。

 まあ手下にした奴を、エイルの前で友達だって言えばいいか。


 そんなことをうだうだ考えながら教室に戻ると、小さな人だかりが出来ていた。


「あんた臭いわよ。あんたなんかと同じクラスとか、チョー迷惑なんですけど」

「ご、ごめんなさいですぅ」

「ドワーフってくっさいのよね。汚いしチビだし。あーやだやだ、同じ空気吸いたくないわー」


 女子同士のイジメか。前の世界ではよくあることだが、こっちも同じってことだ。

 いじめているのは耳の長い女とその取り巻きだ。自己紹介でハイエルフって言ってたな。

 エルフとドワーフが仲が悪いって本当なのか。


 いじめられているちっちゃい子は女ドワーフなのだろう。自己紹介は小さい声で良く聞こえなかった。

 ドワーフは女でも(ひげ)が生えていると前の世界のどこかで読んだ気がするが、その子は別に生えてなかった。

 ぽっちゃり気味だけど、顔も目もまん丸で愛嬌があって、結構かわいいと思った。

 エルフはそれも気に入らないのかもしれない。エルフの子も容姿を誇る種族だけに、十分綺麗だけど。


「何とか言いなさいよっ!」


エルフがドワーフを突き飛ばした!


バタッ


……ジョロジョロ、ジワーー


 あ、オシッコ漏らしちゃってるよ。

 ドワーフの子のお尻の周りに水たまりが広がって行く。


「あー、きったないわねえ!どうすんのよこれ!さっさと拭きなさいよ!」


「……うっ、うっ」


ドワーフはしくしくと泣きだした。


「泣いててもどうにもならないでしょ!このウスノロ!」


 さて……。

 俺のスキル『土下座』、一度くらい試すのも悪くないか。

 別にドワーフがかわいそうとかじゃなくて、テストしてみたいってだけだ。


 俺はずかずか歩いてエルフの子の前に出た。


「な、なによあんた、なんか文句あるの?下級貴族のくせに」


 俺はバッと、土下座した。


「そのドワーフの子を許してやってくれ、もういじめないでくれや」

「あんたには関係ないでしょ!……え……えっと…………わ、わかったわ、あなたに免じて許してあげる」


 そうきごちない口調で言うと、エルフは席に戻って行った。


「ラビニア様ー!」「一体どうしたんですか」


 あいつ、ラビニアって言うのか。取り巻きたちはラビニアがいきなり気が変わったので戸惑っているようだ。


 ……なるほど、確かに効く。スキル『土下座』に狂い無し、だな。まぁ使い方次第か。


 ドワーフはまだ泣いている。

 しょうがねえな……。

 俺は教室の隅っこにある雑巾を取ってきて、ドワーフの周りの床を拭いてやった。


 俺は別に弱きを助ける正義の味方でも何でもない。キャラ的には俺はむしろあのエルフの側だろう。

 いじめられているグズな子に関わりたいと思わないし。

 俺は天下人を目指しているのだから、使える奴、強い奴以外には基本、興味ないのだ。

 今回はスキルを試すちょうどいい機会だったからやっただけだ。


 ……さて、だいたい拭いたな。

 スキルの効果の確認が出来たってことで、収穫はあった。

 この雑巾は……トイレのゴミ箱に捨ててくるか。

 トイレに行ってから、俺は席に戻った。


 …………。


 席の横に、ドワーフの子が立っている。

 じーっと、こっちを見ている。何なんだ?

 俺はしびれを切らした。


「おい」

「……」

「なんか用か?」

「あ、あたし、アーミィって言います」

「ふーん。それで?」

「あ……あの、た、助けてくれて、ありがとうございますた」

「そう。まあ俺は土下座しただけだし、別に気にすること無いよ。じゃあね」

「……」

「……なんだ、まだ用があるのか」

「お……お……」

「お?」

「お、お礼を、させてくだすぃ」

「お礼だぁ!?」

「ひっ」


 アーミィは目を閉じて頭を抑えた。

 家で虐待でもされているんだろうか?

 こういう卑屈な奴は見ていてイライラする。


 お礼か……となると、あれしかないな。


「じゃあお前、俺の手下(ミニオン)になるか?」

「みにおん?」

「俺の子分になるんだ。そしてこれからは俺の言う事を何でも聞くこと」

「わっ、わかりますた!」


 アーミィの顔がパッと明るくなった。

 俺の手下(ミニオン)になるのが何が嬉しいんだろうか?

 俺だったら人の下につくなんて御免だが、こいつはマゾなのかな。


「ではアーミィよ、お前を俺の手下(ミニオン)第二号にしてやろう」

「!第二号、ですか……」


アーミィの顔が少し曇った。一番が良かったのか?


「あいにく一号は俺の妹なんだ」

「じ、じゃあ、身内以外ではあたすが最初!?」

「そういうことになるな」

「や、やった」


アーミィは頬を真っ赤にして満面の笑みを浮かべている。

いつもそのチャーミングな顔をしていればいじめられることもないだろうに。


さて。


にへらーとしているアーミィを置いて、俺は廊下に出た。


すでにエイルが俺を待っていた。例の階段の下の目立たない場所に二人で移動する。


「やったわね!」

「ん?もう知ってるのか」

「ええ、神だからわかるのよ。早速友達一人目ゲットね」

「友達……なのかなあ」

「あの子は間違いなく、あなたに友情を抱いているわ。でもあれは友情と言うよりも」

「わかったから、早く引かせてくれ」

「せっかちねえ」


俺の目の前に、六年前に見た丸い穴の開いた箱が出てきた。


「これを引き直す夢を何度見てきたことか……」

「良かったわね、夢が叶うわよ」

「よし!引くぞ!」


俺は穴に手を突っ込んだ。


ごそごそ……


今度こそ……当たりくじを引くんだっ!


……ん!これだ!これだな!


俺は四つ折りの紙切れを取り出す。


「じゃあ、開いてみてね」


俺がその紙を開いてみると、書かれていたのは……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ