09: 話を聞いてくれない駄目神
目が覚めると、あたりはすっかり暗くなっていた。横になったまま、今日のことを思い返す。
父さんに転生者であることを告白した。いい加減怪しまれてたし、隠し通すのもしんどかったからだ。
でも、父さんは信じてくれなかった。
確かに俺自身、気になることはある。別の人格がこの身体に入っているはずなのに、ところどころ覚えている。
身体が覚えているなんて思っていたが、よくよく考えたらオカシイ気もする。
でも実際、俺は転生者なんだ……それは間違いないはず。最初にあった神がそれを証明している。神がいる事自体は駄目神が証明してくれた。
ふと気になって駄目神に連絡をとってみる。
『おい、駄目神! いるか?』
『はいはい、あなたの心に住んでます! みんなのアイドル、パラメテルでーす!』
なんかふざけたテンションで出られたんだけど……やっぱ話すのやめようかな。
『あれ? カインちゃん、元気ないですね。どうしました? お姉ちゃんが癒やしてあげましょうか?』
『お前のせいで疲れてんだよ……なんでそんなテンションなんだ。なんか良いことでもあったのか?』
『良いことー? 良いことなんて何もありませんよー。相変わらず他の女神は合コンだのナンパされただの自慢ばっかりしてきますしねー。知りませんよ男が女の何処を見てるかなんて。どうせ胸とか足でしょ? なんです? 盛れば良いんです、偽乳を? 足? 知りませんよ。カモシカのような足って言われたのが自慢? 知ってますか、カモシカって大根足なんですよ。それが自慢? ププーっ! 実はあれって羚羊をカモシカって読んでおかしな事になった説があるんですよ。正しくはレイヨウでガゼルとかインパラの意味らしいですよ。大根足って言われて喜ぶなんておかしな話ですね! まぁ、私も聞きかじった話なんで真意はわからないんですがね。あっ、それから私の足は美脚ですよー! こんどチラッと見せてあげましょうか?』
もうわけがわからない。なんだよカモシカとかガゼルとかインパラとか。知らねーよ。どんな生き物だよ。ていうかお前に会うとか無理だろ。
なに?もう一回死ねば良いのか?
『聞いた俺が馬鹿だったよ。そんなことより聞きたいことがあるんだって』
『なんですなんです? あっスリーサイズは教えませんよ? どうしても知りたいですか? うーん、しょうがないですね。上から100、50、90ですよ! どうです? 想像しました? 欲情しました? まぁ若い男の子ですからね、ちょっと想像するくらいは構いませんが、私以外は認めませんよ!』
頭が痛くなってきた……。っていうかお前貧乳だろ。100とか何盛ってるんだよ。
『おまえの嘘情報なんてどうでもいいし想像も欲情もしねーよ。そんなことより、俺は転生者なんだよな?』
『んまっ! 貧乳だなんて! ええそうですよ? 無いですよ。それがどうかしました!? 乳なんて盛ればいくらでも増えるんですよ? 寄せてる肉だってたっくさんあるんですよ?男が乳だと思ってるのは大部分、下着と、寄せてきた脇肉とかですよ。偽物です偽物。私は認めませんよそんなもの。大事なのは形ですよ! 大きくても張りがないとただの脂肪ですよ? 見ます!? わたしの美乳! あっ残念、見れないんでしたねカインちゃん。あー、今チラチラ見えてますよ私の美乳と美脚。ざんねーん』
今日は妙に変な方向に振れてるな……人の話を聞きゃしねえ。
『ほらほら、もう少しで見えちゃいけないところまで――っっっ! せせせ先輩! どうしてここに! いえ、何もしてないですよ! やだなぁ、そんな事ある訳……ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!』
『おい、駄目神? おーい……』
だめだ、反応がなくなった。なんだよ先輩って……。まぁ、暴走してたし良いか。肝心なことは何も聞けなかったな。
ベッドから起き上がろうかと思ったが、父さんと鉢合わせになるのも気まずかった。
そのままうだうだと横になっている内に、またも俺は眠りについていた――。