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旅は道連れ、余はかなげ

どうしたものか・・・。

旅人らしい服は貰えた。家猫が居る部屋の匂い、家庭的(?)な匂いがするこの布を。

しかしそれ以外は何も、武器らし物も金も食べ物すらない。

やっぱ財布は持ち歩くべきだった、雨の日は財布も濡れるから嫌なんだけど。でも免許証なかったら警察に呼び止められた時、違反になるから、やはり雨の日も財布は持ち歩こう!

と、今更なんの意味もない決心を固める。

ええい、ここは異世界!俺は生まれ変わったんだ!既に何回か死んだけど。

「・・・あ」

そうだ、あれ、やってみる?

行けるんじゃない?だってここ、前の世界とは違うんでしょ?そういう世界でしょ?

ふぅ・・・深呼吸。決めちゃっていいですか?


「光より生まれし者、やがて闇へと帰るべし。闇より生まれし者も、やがては闇へ帰るべし。両者を司る者の権限によって命ずる、闇の刃!ダークネスアロー!」


・・・空の青さが痛い。一分前の自分を殴りたい。殴ってその口に犬臭い布を詰め込みたい。

神様、お願いしていいかな?

・・・返事がない。


ん?背後に気配!

「・・・」

「・・・」

幼女らしき二人の女の子が警戒心丸出しで俺を見ている。

もしかして、見られた?

ラジオ体操でもしてごまかすか?この世界にラジオ体操があるならいいが。いや、そもそもラジオが。

二人の幼女はコソコソと言葉を交わすと俺の横をすり抜けていった。

どうか、通報だけはしないでください。


願うように幼女たちを見送る。しかし彼女らの、幼女の割りにしっかりした顔立ち。そして早い、早いなぁ足。やはり鍛え方が違うのか。

ああ、空気美味しい。空広い。木々がなんか鮮やか。さすが異世界ファンタジー。田舎に帰ったみたいだ。俺の田舎、両方地元だったけど。

おうち帰りたい、お風呂入りたい、パソコン触りたい。異世界一人ぼっち。

・・・死んじゃおっかな。


「戻って来ーい、この人で合っとるぞぉ!」

「このお兄ちゃんだぞー」

背後から聞きなれた声、嬉しいようなうっとうしいような。

振り向くとそこに小さなヒゲ面が二つ。

はいはい、知ってました。じゃあこの人って誰。戻って来いって、俺?

足音に気付き横を見る。

「うおっ」

とさっきの足の早い幼女?が俺を不信な顔で見ている。

・・・幼女じゃない!身長は低いがロリロリしてるが、顔つきが大人びて。そうか、謎は全て砕け散った!

「こいつらワシらの娘でなぁ」

空気読め、俺に説明させろヒゲ。

「最近成人してなー」

ほう、これが合法ロリ、いやドワーフ娘というやつか。とりあえず通報は免れたな。

「それで、僕に何か用ですか?立派なドワーフのおじさんたち」

「ピックと」

「ペックだー」

てめぇらの名前なんてどうでもいいんだよ。さっさと俺に娘二人を差し出しやがれ。そういう事だろ?

成人した娘二人を立派な冒険者である俺に預け、一緒に旅をさせて様々な経験を積ませようと、様々な経験を様々に・・・。おっと俺ヨダレ出てない?

「実はだなぁ、こいつらもそろそろ独り立ちさせようと思ってな」

「寂しくなるなー」

いきなり二人か。構わん、よろしくてよ?

「ワシらぁ、兄ちゃんと一緒に行っていいかな」

「役に立つぞー」

「分かりました。お二人は僕がお預かりしま、す。どうか心配なされないでください」

・・・ん?今、何か違和感なかった?


「じゃあな、娘達。立派にやるんだぞぉ」

「泣くな泣くなー」

涙ながらに振り返り振り返り去っていく合法ロリを見送りながら、俺もそっちに行きてぇ・・・と心から願う。

・・・あれ?向こうから濃ゆいのとスーパー泣きじゃくったレディーが。

おお、あの別れを惜しむような姿。そう、あれこそは成長した娘をこの立派な冒険者に預ける為に、様々な経験を様々に。


「なんだよ。おめぇらも一緒だったのかよ」

「見る目があるなぁ、アニスの旦那ぁ」

「旦那旦那ー」

まぁ分かってたけどさ。

「いや、俺は別にどっちでも良かったんだけどよ。娘のネシアが行ってやれってな」

「それであんなに大泣きするもんかい?」

「正直じゃないないー」

俺、何やってんだろ。一人ぼっちは免れたけど、オッサン三匹連れ歩いて・・・。

そうだ、さっさと旅慣れしてこいつらを洞窟の最深部にでも置いて逃げよう。ドラゴンの口という四次元ポケットにそっと仕舞って走り去ろう。

オッサン達は俺の記憶の底で輝き続けるさ・・・記憶にフタした更にその奥でな。


早くおいで、俺のハーレムパーティー。


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