その必要性
俺たちに敵はなかった。
元々脳筋オヤジ3匹は一人でモンスター相手に無双できるぐらいの猛者だし(なんならその暴力的な脳みそで殴って勝つレベル)
更にエルフっぽい人の回復魔法で大概の怪我も治ってしまう。
ダメ押しに俺の魔法!・・・俺の魔法、別にいらなくない?
可燃物集めに余計な時間食うし、それをモンスターにばら撒くのも手間だし。その時間でオッサンたちが殴った方が早いという。
一手間かけたけど大して味に変化がない、どう?美味しくなったでしょ?と母に聞かれ。え、別に。と答えてキレられるパターンのあれ。だって大して変わってないんだもん・・・。
冒険者ニートからお荷物魔法使いに転職!そんな感じだ。
あれ?俺って・・・、別に必要ないんじゃ。
そんな俺というお荷物を抱えて旅は続く。
「もうちょっとだなぁ」
「その丘越えたら村が見えるぞー」
一体どこへ向かってるんだか、冒険らしく未開の地を求めてるらしいが。まだまだ余裕で道知ってるみたいな小さなヒゲオヤジたち。
「兄ちゃんも最近タフになってきたな」
え?そうですか。褒められちゃった、えへへー。なんて思う事もなく。
リストラ第一候補に守られ、気を使われる生活に慣れた余裕からか、引きつった笑みを返しておく。
「・・・」
エルフの人と目が合う、視線を外される。
お前はまだ気にしてるのか、俺のダンスとパイタッチを。
もしや、そっちの気がある・・・?いやいや、考えるな。
しかし引きこもってた割に余裕でついて来るなこいつ。さすがエルフっぽい人、顔色の悪さは伊達じゃない。どうやっても西洋人には見えないが。
「お、よく燃えそうなのがいるなぁ」
「狩ってくかー」
「え、援護します・・・」
「兄ちゃんの火は危ねぇから、手は出さないでくれな?」
俺が魔法を使う為に余計な戦闘をし。しかもその間、魔法は使えない。
・・・もうやめてください。
一体なんの無駄なんだよ、母親じゃなくてもキレるよこれ。
村見えてんだからさっさと行こうよ!
ただのチャッカマンとして生きたい。生ける火打石、リビング火打石として。
頑丈なだけっていうこの能力。実は余り必要ないんじゃ・・・?