魔力の顕在
Q魔法が使えるようになって一言
A何か違う
こう、炎の渦とか氷の刃とか。派手なエフェクトで地面が割れたりとか。そういうカッコいいのを想像してたんだけど、これは俺のイメージが悪いのか・・・?
出るのはネズミ花火やドライアイス、地割れのつもりがジェンガ召還!っておい。
極めつけには暴風を起こそうとしたら手からの大放屁。手で屁をする人なんてきっと俺以外存在しない。
こんな魔法で戦えるか。
しかも出した物は十数秒で消えてしまうから、久々の文明品ジェンガで遊ぼうと思っても積み上げてる間に消えてしまう。
幸い火だけは出るからチャッカマンとして重宝されてはいるが。相も変わらず熱いし爪が焦げる。
「異世界戦士、チャッカマン!」
火打石代わりにしかならない。
魔法使いとして独立→新たなパーティーを編成→めくるめく嫁たちと俺の世界 というサクセスストーリーはいつ始まるのか。
「あの・・・」
「うおっ!」
居たのか、エルフみたいな人。
「僕なりに考えてみたんですが・・・」
「おーい、兄ちゃん。火、頼むー」
空気を読めない空気を臭くするオッサンが俺を呼ぶ。
「へーい、今行きまーす」
「あ・・・」
異世界戦士、チャッカマン!
「あちち・・・」
「便利だな、助かるわ」
いえいえ、どうせカカシとチャッカマンぐらいしか出来ない野郎でござんす。好きに使ってくんだせぇ。
「その魔法なんですが・・・」
「うおっ!居たの?」
「実戦で使えるんじゃないかと・・・」
この魔法を?実戦・・・?大道芸でもやらせるつもりか。
「どういう事だ?兄ちゃ・・・フランソワ、だったな。フランでいいか?」
「はい・・・。小さな火でも可燃性の高い物を撒いておけば、大きな火になります。なんなら爆発物でもいいですが・・・」
つまりはあれか、俺にボンバーさんになれと。
俺なんざいくら燃えても吹き飛ばされても平気だから無敵状態のボンバーさんになれ、と。
「さすがにそいつぁ危険じゃねぇか?」
肉を焼きながら濃い顔が渋い顔をする、見てるだけで胸焼けしそう。でも言ってる事は正しいぞ。
しかし、こんな脳筋でも理解できるほどの万歳特攻ならぬ、爆発特攻を俺に提案するとは。このエルフまがい、俺に何か恨みでも?
・・・ありますね。
「ち、違うんです。少し火を遠くに飛ばす方法があれば何とかなると思って・・・」
そうだな、俺に爆発して欲しいんだな。
そりゃ、いきなり抱きつかれて揉まれてカチンコチンコで。うん、俺なら今すぐチリになって欲しいと思う。
「燃える物なら、なぁ」
「ワシらが集めてやれるぞー」
スパイスやら木の実を探しにいってた小さなオッサンたち。いつの間に戻って来ていたのか、ちゃっかり会話に参加している。
早い、早いなぁ。
ふと、合法ロリ子さん達が心に浮かぶ。
あの爽やかな風、爽やかな匂いがしたであろう彼女たち。このオッサンたちと違って・・・。
・・・うん?風・匂い、そして火。
今俺の中で天才的なひらめきがスパーキング!したかもしれない。
「準備できたぞぉ」
「後は火をつけるだけだー」
魔法を試してみたいから適当な相手を、とは言ったが。なんだこのクリーチャー・・・。
豚の上半身にウサ耳・コウモリの羽と猫の尻尾にカバの足。まるで勘違いしたオッサンのコスプレじゃないか。どこで見つけてきたこんな化け物。
「爆発すんなよ兄ちゃん!」
フ、心配すんな濃いオッサン。俺はまだリア獣じゃないから爆発するもんも爆発できねぇ。
しいて言うなら股間が爆発するぐらいかな!
「切り裂け烈風!」
俺の右手から珍妙な音と共に匂う風が飛び出す。
「焼き尽くせ!」
そして左手から小さな炎。これが匂う風に引火して小さな破裂音を出しつつ可燃物に着火!
こうかは ぜつだいだ!
コスプレキメラは大きな炎に焼き尽、
「ぎゃー!!」
爆発四散した様々なコスチュームの破片、その本体の豚の顔面と熱烈なキッスをして俺の後頭部と意識も吹き飛ばされる。
「ちょっと燃えすぎたかぁ」
「解体する手間が省けたー」
「あ、兄ちゃん。兄ちゃん!?」
なんにしろ実験は成功だ。
屁が燃える実験?いやいや、俺の魔法の実用性は照明された。
ただ下準備に、可燃物を対象にぶちまける・その可燃物を常に確保する、必要がある訳だが・・・。
ちなみにその可燃物は、魔物化した巨木の根だとか腐った液体モンスター(スライム?)だとか。とても俺の手に負える代物じゃないらしい。
自立の道は遠い・・・。
夜。
飯も終わり、何もする事がなくなった時分。
スマホやコンビニを思い出す事も減り、そろそろ寝るかと考え出すと。
「じゃあ、お先に寝るかな」
「だなぁ」
「おやすみよー」
「・・・」
わざとらしく俺から距離と取るオッサンども。
気を使ってるつもりなのか?
確かに一人にさせろとは言ったが、そんな露骨だとこっちが恥ずかしい。
まぁ、しますけどね!
俺の魔法は召還。
つまり、なんでも出せる。数十秒なら。
この天才的な閃きによって、俺のソロプレイは驚異的な進化を遂げた。
左手で小さな女神を召還!
右手はコイル運動を展開!
は、発電しちゃうううううう!!
ふぅ・・・。
前世と何も変わっていない。変わったと言えば、オカズが数十秒しか持たないからそれに合わせて俺がスピードアップしたってぐらいで。
・・・星が綺麗。