リビドーに誘われて
「二階に何があるんだい、お嬢ちゃん」
「・・・」
「俺らみたいな旅人が首突っ込む用件じゃないのかもしれねぇが、家に呼んだのはただの恩返しって訳じゃねんだろ?」
「・・・分かってました?」
「でくの坊じゃねぇんだ。顔見たら分かる」
あ、すいません。でくの坊です。展開についていけずに寝てました。
いや、嘘です。欲情してました。
「・・・聞いて貰ってもいいですか?」
俺という害虫の横を素通りする少女。ああ、髪の匂いがすーはーすーはー。
テーブルにつく濃い顔。その正面に座る少女。
「兄ちゃんも座れ?」
え?ごめん、無理。
もうビッキビキで動けない。
途方に暮れる俺を全く気にかけず、少女が話し出す。
「私はロレーナ、ロレーナ・リービオ。産まれも育ちもこの土地です。さっき言った通り半年前に両親を失くし、今はなんとか食いつないでいますが、それも時間の問題です」
ロレーナ!ああ、ロレーナロレーナれろれろれろ。
ごめんなさい、続けて。
「誰か頼れる奴は居ねぇのか?」
「親戚が隣の村に・・・」
「ほう」
「でも、この家を離れられないんです」
「その訳が・・・二階か」
濃ゆい顔がこっちを見る。
こっちを見るな。べ、別にあんたの顔で欲情してるんじゃないんだからねっ!
いやマジで。
「誰が居るんだ?弟か妹か」
「・・・」
「言いたくない、か・・・?」
濃ゆい顔が困った顔をする。
あんたそんな表情できたんだな。わぁ、凄く嬉しくない意外性。
あ、ちょっと萎えた。
「来て下さい」
そう言って席を立つロレーナ。
待て!来るんじゃない、こっちは欲望渦巻く男の世界だ。君のような可憐な少女は近づいてはいけない、近づいたら・・・!
爆発してしまいます。
それ以上の事もしてしまいそうです。
それ以上・・・?分からないから抱きついて犬みたいにカクカクと。
それはイカン!とてもイカン。
反射的にロレーナから遠ざかる俺、階段を駆け上がり明りの点いた部屋へ。
「あ、待って」
中へ入るやいなや、扉を押さえパンツを下ろす。
いける、今なら行ける、俺ならやれる。至上最速の男、15秒の壁を打ち破る。
そうだ、クールになるんだ。害虫である現状を打ち破る為、クールになる為に一度狂え。
ああ、ロレーナ。そんな!凄いよロレーナ、愛しのロレーナれろれろれ・・・何か居る!?
ケツを出したまま鋭く振り向いた俺の視線の先に、白く大きな光る目が。
「だ、誰だ!?」
「・・・」
怯えた目は答えない。
動物?
よく見ると長い毛布に全身包まれている。四つん這いか、身長は高くない。
しかし長い、長いな。2メートルあるか?しかし所詮はペット、噛まれたり吠えられないよう軽く手なずけて行為を済ませよう。俺はクールだぜ。
大型犬らしきそれに一歩踏み出す、足に下ろした布が絡まる。
「わ!ちょっ」
コンパスと化した俺の足が虚しい半円をえがきまくる。上半身はついてこない下半身をよそ目に自由落下のピサの斜塔。
Qこの円すいの面積を求めよ
Aそれどころじゃないです
ペットの上にダイブする。
・・・やばい、噛まれる!
この大きさだと骨の二・三本は覚悟せねば。が、しかし手に触れたのは毛むくじゃらの体毛ではなく、すべすべの人肌だった・・・。
そして俺は気付く、これは・・・ラッキースケベ!
ついに俺にもハッピーなイベントが!しっかり揉みながら顔を上げる。
白い肌、長い耳、大きな目、むさい顔。
・・・ん?最後の取り消して。
長い金色の髪、華奢な体、オスの体臭。
やはりおかしい。
「いててて・・・」
ペットの方がマシだったそれと目が合う。
「うわああああああ!」
そりゃ叫ぶよな。
見知らぬ男が急に入ってきてパンツ下ろして、奇妙なダンスしながら襲いかかって、あげくに胸まで揉まれたら。
「ああああああああ!」
そりゃ叫ぶよ。
ペットだと思ったら全裸の男で、その胸揉んで股間も脳も暴発寸前。
べ、別にあんたの体で欲情した訳じゃ・・・背後で扉が開いた?
「きゃああああああ!」
そりゃ叫びますよね。
部屋に入ったら害虫と自分の男が裸で抱き合ってイチャイチャしてれば。
しかも害虫の触覚カッチカチだし。
なんかもう、どうでもいい。
なるようになれ、と体の力を抜き呆然とする。
そういえばティッシュがないこの世界で皆どうやってオ○ニーしてるんだろう・・・。
この世界は謎が一杯だなー、あははっ。