旅中お見舞い申し上げます
俺たちの冒険は始まった。
多少の驚きはあったが、モンスターはこのおっさん達より弱く(というよりオッサン達が強いのか?)丈夫な体もあって重傷を負うこともなく、快適に進んでいる。
小さなオッサンたちが多少の怪我でも甲斐甲斐しく手当てしてくれるお陰で順調にレベルアップしてる感じ。
・・・オトリとして。
いつもの流れ
「行くぞピック・ペック!」
「ほいさぁ」
「片付けっかー」
「・・・」←俺
「手ごたえねぇな!」
「息切れしてねぇか?アニスの旦那ぁ」
「あら、増援だー」
「・・・え?」←俺
「逃げろ兄ちゃん!」
「ワシら手一杯だぁ」
「すぐ行くからよー」
「・・・」←俺、殴られ中
「大丈夫か兄ちゃん!?」
「さすがだ、ピンピンしてらぁ」
「もう勘弁しねぇぞー」
「・・・どうも」←俺、モンスターの血しぶきシャワータイム
「怪我ねぇか兄ちゃん?今夜は肉だぞ」
「食える部分と売り物に分けっかぁ」
「こいつは臓器と目玉だなー。おろ、活きがいいぞーこいつ」
「・・・!?オロロロロ」←俺、目玉ゲット。嘔吐中
いや、別にさ。剣振ってもいいんだよ?魔法・・・は使えないから却下して。
モンスターといえども出るもん出るからさ、血とか臓器とか、出ちゃいけない物とか。
怖いじゃん、可哀相じゃん。俺現代っ子だし。
まぁ鋼のボディがあるから。とりあえず戦い方だけ覚えて、戦闘の度にゲロ吐くのさえ治ったら何とかなるだろうって。リストラ第一候補の濃ゆい顔のオッサンが言ってた。
「うまっ」
思わず声を上げる、そんな俺を見て濃ゆい顔が照れたように笑う。
「お兄ちゃん、ワシの肉も食うんだよぉ」
「ワシのもだー」
星の光の下、キャンプみたいな焚き木を囲んで、焼きたて採れたての肉を食う。俺の分だけちゃんと小切りにして出してくれる辺り、芸が細かい。
「ん?服が裂けてんな、昼間の狩りでか。ちょっとそれ脱げ」
「え?いや、その・・・」
「恥ずかしがるんじゃねぇ、こっちが照れる」
小さい髭二匹に人形でも扱うように服を剥ぎ取られる。なんだこの嬉しくないシチュエーション。
「おめぇ、旅の目的とかねぇのか?」
どこからか取り出した針と糸で俺の、いや元はこの濃い顔の、服を器用につくろうオッサン。
女子力高いな。
「そりゃ、ハーレ・・・あてのない冒険の旅です」
「ワシらも若い頃よくやったなぁ」
「やったやったー」
「・・・何か訳ありか?」
ハーレムと言いかけた部分を無駄に気に留めて、オッサンの濃ゆい顔が更に濃ゆくなる。もはや正視に堪えない。
「いや、その・・・」
「言いたくねぇなら無理には聞かねぇよ。でもな、辛い時には頼っていいんだぜ?だって俺ら、仲間だからよ」
ああ、悪い人じゃないんだよな。そして真面目になるとちょっと照れる癖、憎めない人だ。
凄く、リストラしたいです。自主退職してください。
髭が無言で俺の背中を叩く。
慰めてるつもりだろうが、力加減がおかしくて食べた物が喉まで来る。嫌がらせか!
それぞれが物思いにふけりなが、焚き木の火を見つめる・・・。
なんだよこの空気!しんみりしてんじゃねぇ!寒いからそろそろ服返せ!違う、俺が望んだ物とまるっきり違う!
「えっきしっ」
「寒いか?すまねぇ、もうちょっと待ってくれ」
「火の方寄るんだぁ兄ちゃん」
「ほれほれー」
「あ、いや、すいません・・・」
体寄せてくるな!割と匂うんだよ!この加齢臭製造機が!
違う!違う!違う!俺が望んだのはこんなのじゃない!
俺が欲しいのは色気!可愛げ!儚げ!
ぶりっこもたまには許せる、ハニトラも大いに結構。ラッキースケベが大好物で、ツンデレ・ヤンデレ心が躍る。
学園で、プールで、友達の別荘で。
道場で、前線基地で、人類の存亡をかけて。
ハーレム!ハーレム!ハーレム!
俺が欲しいのは女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女女だあああああああああああああ!!うわあああああああああああああ!