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72/115

66話

> クラマ 運量:2713/10000

> クラマ 心量:40

> イエニア心量:164/500

> パフィー心量:57/500

> レイフ 心量:155/500



 イエニアは動けないレイフの前に立ち、ワイトピートの凶刃(きょうじん)を正面から受け止めていた。


 その間にパフィーは下部のフロアまでクラマを引きずって退避。

 パフィーは頭部にダメージのあるクラマを動かしたくはなかったが、そうも言っていられる状況ではなかった。

 仰向けに寝かされたクラマ。

 まずはクラマの手に刺さったナイフを引き抜くパフィー。

 そこで気がついた。

 ナイフに付着した紫色の液体。

 毒だ。


「な、なんてこと! オクシオ・ユデ……バセ・ペーシウ・エーディウフ・フェオエヤハ・テポノ……デトークシファイ!」



> パフィー心量:57 → 27/500(-30)



 パフィーの解毒魔法。

 これにより、事実上パフィーは何も出来なくなった。

 この心量では魔法の使用はおろか、注意力が必要とされるあらゆる行為が危険だ。


 ワイトピートの対策は徹底していた。

 身体強化したクラマの頭部を狙うだけでなく、毒まで仕込むという念の入れよう。

 幸運と言えるのは、ワイトピートが所持していた毒は体組織を破壊したり、後遺症が残ったりする(たぐい)のものではなかった事だ。

 これはワイトピートの任務が冒険者の殺害ではなく、生け捕りだった為である。


 クラマは徐々にはっきりしてきた意識で考える。

 現状の把握。

 そして現状を打破するために、自分が何をすべきかを。

 仰向けに寝かされたクラマは、天井を見つめながら考える。


 レイフが重りをつけられ、逃げられない。

 しかし魔法は時間が経てば解ける。

 魔法が解けるまでこのまま粘る……。

 難しいと言わざるを得ない。

 しかも魔法が解けたところで、結局ワイトピートを相手にしながら逃げなければならない。

 これは明らかに無理がある。


 色々考えても結論はひとつ。

 ワイトピートを倒さなければならない。


 では、どうやって?


「……………………………」


 クラマの使える武器は――


 半分に切られた棒。

 同じく半ばで切られた銀の鞭。

 防刃コート。

 身体強化の魔法具(ジャガーノート)

 上のフロアに転がっているティアの黒槍。


 ……後はパフィーの胸当てを借りるくらいだ。

 この上でクラマは全員の心量を思い返す。



> クラマ 運量:2713/10000

> クラマ 心量:40

> イエニア心量:164/500

> パフィー心量:27/500

> レイフ 心量:155/500



 戦闘行為は、ただそれだけで心量を消費する。

 ワイトピートの猛攻に晒されているイエニアやレイフは、厳密にはもう少し低いかもしれない。

 また、クラマの立場ではワイトピートの心量を正確に知る術はない。

 そこはこれまでの立ち回りから予測するしかなかった。


 ――遠く、剣戟が響く。


 今もイエニアは戦っている。

 イエニアひとりでは、あの敵は抑えられない。

 こうしている今にもイエニアの防御が突破され、あの鋭いサーベルで斬り裂かれるかもしれない。

 あの時、目にした光景がもう一度――


「……オクシオ・イテナウィウェ」


 黒い炎が、光り輝いた。


 もはやこれしかない。

 辿り着いた答えは、ジャガーノート重ねがけ。

 まだ一度目の効果が残っているうちに。

 前回は三連続の重ねがけだった。

 では二連続なら、大丈夫なのではないか……?


「ドゥペハ・イバウォヒウー・ペヴネ・ネウシ・オーバウェフー・トワナフ……」


 そんな都合のいい、淡い期待を胸に、クラマは最期かもしれない詠唱を――


「だめっ!!」


「むぐぅー!?」


 唱えられなかった。

 クラマの口がパフィーの手によって塞がれたためである。


「もがむが……ぱ、パフィー、何を……!」


「だめよ! 絶対だめ! 許さないんだから!」


 パフィーは普段見せないような必死さで、クラマの口を力いっぱい押さえつける。

 クラマはパフィーの手を引き剥がして弁明した。


「い、いやパフィー。駄目と言われても他に方法が……」


「だめよ、わたしは絶対に止めるから! だって、クラマと約束したもの!」


「―――――」


 ……約束。

 そう、次にクラマが無茶をしようとしたら止めるようにと頼んだのは、クラマ自身。

 仰向けに寝ているクラマは見た。

 涙を流して自分を見つめるパフィーの顔を。


 ……約束をした。

 今までの、守る気のない(から)約束とは違う、本当に守ろうと思った約束を。






 ――ふふっ、しっかり私を守ってね。王子様?






「……足りない」


 ぼそりと呟いた。


「え……? どうしたのクラマ。足りないって、何が?」


 聞き返すパフィー。

 クラマは答えた。


「パフィー、キスしてくれないかな」


「…………………………うんん?」


 パフィーは首をかしげた。

 クラマはいきなり何を言っているのか。

 聞き間違いか。

 それとも、とうとう狂ったのか。

 わけもわからず、固まった表情のままパフィーは思考をぐるぐると巡らせた。


「心量が足りないんだ。あの男を倒すには」


 クラマにそう言われて、パフィーはようやく得心した。


「そ、そうなのね……危険な方法じゃないの?」


「戦闘だから危険じゃないわけはないけど、まあ……」


 クラマはパフィーの目を見つめて、告げた。


「大丈夫、勝てるよ」


 そのクラマの目には、パフィーは何度か見覚えがあった。

 何か悪だくみを思いついたような、どこか子供っぽい目つき。

 これまで幾度(いくど)となく逆境を(くつがえ)してきた、いつも通りのクラマがそこにいた。


「……分かったわ。それじゃあ、その……き、キス? するのね? わ……わたしでいいのかしら?」


「正直言って、心量の回復量は僕にも分からない。やってみないことには」


 分かっていることは、今までと同じような事……慣れている事だと回復量は少ない。

 つまりパフィーのパンツではもう駄目だという事だけだ。


 あまりに突飛(とっぴ)な展開に動揺していたパフィーだが、意を決してクラマを見つめる。


「それじゃあ、いくわね。……目を閉じてくれる?」


「うん。あ、できれば膝枕(ひざまくら)しながらお願い」


「こ、細かいのね……」


 クラマは妥協をしない男だった。

 パフィーはクラマの頭の上に位置取り、頭の下に太腿(ふともも)を差し(はさ)んだ。

 そしてゆっくりと体を丸め込むようにして、瞳を閉じたクラマに顔を近づけ……


 その小さな唇が、クラマの(ひたい)に触れた。


「…………………」


 クラマが目を開く。

 目の前には顔を真っ赤にして、あたふたと慌てて、ぱくぱくと口を開閉させるパフィーがいた。


「ご、ごめんなさい! もう一回……つ、次はちゃんとするから! だ、だから目を閉じて、ね?」


 口付けする箇所を、直前で唇から額に変えてしまったパフィー。

 パフィーらしからぬ失態であった。

 パフィー自身もそれを自覚し、やり直しを要求する。


「パフィー」


「あ、う、うん! なに!?」


「大丈夫、足りたよ」


「…………え?」



> クラマ 心量:40 → 51(+11)



 能動的な心量回復方法としては、これはかなりの回復量だった。

 果たして躊躇(ためら)わずに唇にキスをしたのと、どちらがより多く回復したのか。

 それは解かれることのない、永遠の謎である。


「そ、そう……それは、よかった……わね、うん」


 パフィーは自責(じせき)と、どこか釈然(しゃくぜん)としない思いで複雑な心持ちだった。

 ともかく心量は回復した。

 横になって休んだおかげで視界もはっきりしている。

 若干ふらつきながらも、クラマは立ち上がった。


「ほ、本当に大丈夫なの? わたしは何かすることない?」


「ああ……そうだね。じゃあ念のために……」


 クラマは一歩ずつ、自分の体の状態を確かめながら歩きだした。

 未だ響く剣戟の音を目指して。


「できるだけ離れておいて」


 そう言ってクラマは階段を登った。

 登りながら懐からケースを取り出す。

 クラマは取り出した眼鏡をかけた。


 上部フロアに到達。

 少し離れた場所では、重りによって地面に膝をつくレイフと、レイフを背にしてワイトピートの剣を(さば)き続けるイエニアがいた。



> イエニア心量:164 → 161/500(-3)

> レイフ 心量:155 → 153/500(-2)



 イエニアの剣は既に半分ほどの長さ。

 鎧もいたるところが破損し、大小さまざまな切り傷が露出していた。


 クラマの手から眼鏡ケースがすべり落ちる。






 イエニアは相当な善戦をしていた。

 動けないレイフを背にして守りながら、一歩も引かず、ただの一度も後ろに攻撃を流さない。

 その異様な堅牢(けんろう)さに、ワイトピートは苦い顔を見せる。

 一言で言えば、イエニアは慣れてきていた。

 ワイトピートという男が持つ特性に。


 ワイトピートには“気配”がない。

 彼らにとっての“気配”とは、いわゆる第六感的な、説明のつかない代物ではない。

 「気配を読む」とは、経験によって裏打ちされた無意識上の判断である。

 それは視線の動き、動き出す前の肩のいきり、重心の移動、呼吸の変化……等々。状況を総合的に見て脳が自動的に発する危険信号の一種だ。

 しかし、ワイトピートの動きはそれに引っかからない。

 イエニアがこれまで戦いの中で積み上げた経験から判断できる、「これから動こうという事前情報」をワイトピートは出してこないのだ。


 だからイエニアは戦い方を切り替えた。

 ひたすら相手の体の動きだけを見て、攻撃を予測せず、自分の重心をニュートラルに保って確実なものにのみ反応する。

 直観に頼らない。

 ただ、確定する理屈のみに(じゅん)じる。

 ……実は、この戦い方はティアの戦い方の真似である。

 数えきれないほどティアと手合わせをして、完膚(かんぷ)なきまでにやられてきた。

 見飽きるほど見てきたティアの動きをイメージすることで、うまく体が動くような気がした。


 だが、この戦い方は格下相手の戦い方。

 格上を相手にこれをやっても、ただ敗北を先延ばしするだけ。

 事実、剣も鎧も徐々に削られていた。

 そう遠くないうちに敗北を喫することが確定していた。






 ワイトピートは元来、特に意識せずとも訓練相手から「やりにくい」と言われていた。

 詳しく尋ねたところ、誰しもが攻撃直前に発散されるはずの、「攻めよう」という気配が感じられないのだという。

 その特性を理解して、訓練によって突き詰めた結果が、今のワイトピートのスタイルだった。


 これによりワイトピートは、対面した相手にもほぼ100%の確率で奇襲できるようになった。

 ……相手がこれに慣れたら不利になるのは分かっていた。

 しかし目の前の女騎士には地力(じりき)で勝っている。

 さらには、背後の仲間を守る位置を保たなければならないというハンデつき。

 思いのほか時間はかかっているが、このまま問題なく押しきれる。


 そうして、もはや数えきれないほどの打ち込みがなされた頃のことだった。


 ――カラン。


 ケースが床に落ちる音。

 その場にいる全員の意識が向く。


 そこには、階段を再び上がったクラマが立っていた。


「……!」


 ワイトピートは刹那に思考する。

 彼の経験上、基本的に地球人は弱い。

 だが、同時に危険な存在でもある。

 地球人の心量は少ないが、何かの拍子に突然跳ね上がることがある。

 とりわけその可能性が高いのが、仲間が殺された時。

 大きく下がる者もいるが、大きく上がる者もいる。ここは個体差が非常に大きかった。

 さらには戦闘で使いにくいとされる運量も、無視できるものではない。

 まさしく不確定要素の塊。

 それが彼にとっての地球人だ。


 すなわち、倒すのならば地球人から。

 これが対地球人戦闘における基本原則である。


 クラマがどのような考えをもって階段を上がってきたのかは分からない。

 この場で判断できるのは、クラマとワイトピートの間に黒槍が落ちている事で……それを拾わせるべきではないという事だ。


 ワイトピートは駆けた。

 躊躇(ちゅうちょ)なく、先ほどまで切り結んでいたイエニアを無視して、現れたクラマのもとへ。


 およそ10歩ほど。

 ワイトピートがクラマに届くまで。

 鍛え上げられた強靭な脚力は、魔法の詠唱も許さず一足飛(いっそくと)びにクラマへ迫る!


 クラマの眼前に迫った彼は――直前で小さく跳んだ。

 その足があった場所、床に折れた剣が刺さる!

 ……それはイエニアが投じた剣。

 ワイトピートはタイミングを見て一瞬だけ振り向き、当然来るであろうと予測した妨害を回避していた。


「う――クラマ、逃げて!」


 イエニアの悲痛な叫び。

 しかしもう遅い。

 既にワイトピートは死を運ぶ一刀を、クラマの首元に突き出していた。


 一撃で殺す。

 目の前の少年が、地球人の中でも極めつけの危険人物だと、ワイトピートは把握していた。

 下手に追い込むと何をしでかすか分からない。

 こういう手合いは一撃で絶命させるのが最善だと、経験からワイトピートは理解していた。


 故に、その一刀は最大最速。

 次の動きを考慮に入れずに、全力で放った一撃だった。

 防げる黒槍は手元にない。

 放たれる最速の突き、避けられるものでもない。

 必中必殺の暴威。

 死神の鎌にも等しいそれに対して、クラマは――






「エグゼ・アストランス」


 その呟きは、逃げて、というイエニアの声に掻き消された。

 そしてクラマは見据える。

 眼前に迫り来る死神を。


 ワイトピートの剣は、クラマには避けられない。

 手先などと違って、体の軸というのはそう素早く動かすことができない。

 ワイトピートの剣速に反応して、その軌道の範囲外まで体を逃がすのは、とうてい間に合わない。

 だが……


 ――クラマは動体視力が素晴らしいですね。


 ……見える。見えるはずだ。

 クラマは硝子(ガラス)越しの鮮明な視界の中で、全神経を己の目に集中させた。


 まばたきすらも置き去りにする極小の一瞬。

 その中で、はっきりと捉えた。

 眼前に迫る白銀の軌道を。






 剣が止まる。

 クラマの首元、その直前で。

 クラマの手の中にある金属の札によって。


「そ、れは――!」


 それは冒険者ギルドが全ての冒険者に対して支給している、運量および心量の現在値を表示する計測器。

 かつてクラマが路地裏で銀の鞭を購入した際に、ティアの口から説明された事がある。


 ――いえ、運量・心量の計測器は冒険者ギルドが製造しているものですので、固定魔法品ではありません。現代の技術で最高硬度を誇るユユウワシホで造られています。


 ワイトピートの剣は鋭く硬い。

 鉄製の武器防具を軽々と断ち切ってしまう。

 だがそれは魔法で強化しているわけではない。

 ならば、この世界で最も硬い金属を貫ける道理はない。


 しかしクラマは防いだだけ。

 次にワイトピートが剣を振るえば、即座に首を()ねられる。

 せいぜい2秒か3秒。

 ほんのわずかだけ引き延ばされた命。


 だから、その前にクラマは動いた。

 この後の2秒で、すべてを決める。


「――レイフ。51」


 心量譲渡。

 運量の使用、心量の能動的回復……これらに並ぶ、地球人のみが使用できる特別な能力。


 クラマの体から51個の小さな光が湧き出る。

 それらはワイトピートの横をするりと通り過ぎ――フロアの奥で膝をついているレイフの中に入り込んでいった。


 ワイトピートは見た。

 目の前に突き出された札。

 そこに表示される数値の変動を。



> クラマ 心量:51 → 0(-51)

> レイフ 心量:153 → 204/500(+51)



「オクシオ・イテナウィウェ!」


 即座にフロアに響くレイフの声。

 そして糸の切れた人形のように、前のめりに崩れ落ちるクラマ。


「お――おぉ――!」


 それは歓喜か戦慄か。

 傍目(はため)には判別がつかない、しかし鬼気迫るワイトピートの形相(ぎょうそう)


 クラマが見せた圧倒的逆転劇の道筋。

 しかし、まだ終わりではなかった。

 詠唱を終えるまでには時間がある。

 ワイトピートの足なら余裕で間に合う。

 問題は、当然立ちはだかるイエニアの存在。

 あの鉄壁の守りを、果たしてこの短い間に突破できるのか?


 それは「面白い挑戦」だった。

 ワイトピートにとってみても、それは困難。

 しかし不可能ではない。むしろ五分以上、とワイトピートは判断した。


 ここまでは万全を期して、隙を見せずに正面から圧殺する戦法をとってきた。

 だがワイトピートにとっては、その戦い方は正道ではない。

 リスクを承知するなら一瞬で勝負を決められるネタを、彼はいくつも手に持っている。

 しかも相手は剣を手放した。

 これなら倒しきれずとも、すり抜けて後ろを狙うことすら可能だ。


 果たしてどの手が有効か。

 脳内で瞬時にいくつもシミュレートさせながら、ワイトピートは駆け出し――


 そして、何かに足をとられて地面に転がった。


「!?!?!?!?」


 信じられない出来事。

 あのワイトピートですら混乱するほどの。

 なぜ、いったい何に足をとられたのか??

 ワイトピートはわけもわからず、とにかく自分の足元を見た。


 やはり、信じられないものを見る。


 倒れ伏したクラマの手が、ワイトピートの足首を掴んでいた。


「ば、馬鹿な! そんなことが……そんなことがあるか!!」


 心量ゼロで動ける人間は存在しない。

 こんなことは有り得るはずがないのだ。

 愕然とするワイトピートの耳に、その声が届いた。


「ホエーウー・ユヒ」


 ごくごく簡単な詠唱。

 簡単なだけに、その内容がワイトピートには明確に分かってしまった。


「眠れ、眠れ、夜のとばりは舞い降りた。まぶたは落ちる。だれもが同じ。枕をならべ、ほの暖かい地面の底へ私はいざなう」


 ワイトピートは足首を掴む手を振り払う。

 振り払うが……


「ねんね、ねんねこ、夜のおとどに包まれて。来たれ、ゆりかごの中に」


 もう、何をどうやっても間に合わない。


 そうしてレイフの詠唱が完了した。



「眠れ、母の胸に」



> レイフ 心量:204 → 4/500(-200)



 それはとても優しく、慈愛に満ちた声。


 ……いったい何を間違えたのか。

 これまでに(たくわ)え込んだ、ありったけの魔法具を投入した。

 相手の魔法具にも対策した。

 罠を張り、策を練り、地の利を活かした。

 向こうに協力者がいることは分かっていた。それを抑えるためにトゥニスを裏から差し向けた。

 手間暇かけて今日まで生かしておいた奉納品(しょうもうひん)まで使って。

 後から思い返せば非効率な動きもいくつかあったが、少なくとも彼らと対峙(たいじ)してからは、常に最良の選択を()り続けてきたはずだった。


「なぜ……」


 ワイトピートは最後まで敗北の理由を探し……

 しかしその答えに至ることなく、抗うこともできずに意識を黒く塗り潰された。


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