63話
「私の名はワイトピート! 覚えておいてくれたまえ。短い付き合いになりそうだが……フフ」
クラマ達の前に現れた男は、優雅に自己紹介を行った。
一見して人当たりの良い初老の紳士という立ち振る舞い。
しかし先ほど目にした凄惨な部屋のせいか、それともどこか虚ろな青い瞳のせいか、イエニア達の目には悠然と佇む男が薄気味悪い怪物にしか見えなかった。
部屋に立ち込める不吉な空気。
そんな中で最初に口を開いたのはクラマだった。
「いや、あなたのことは別に聞いてないです。トゥニスって人を知らない?」
「………………」
場の空気を無視した気楽な物言いに、呆気にとられる一同。
イエニア達だけでなく、ワイトピートも意表を突かれていた。
しかしすぐに立ち直った彼は苦笑をもって返す。
「クッ、クク……なるほど、そう来るかね。それでは私はこう返そう! 『彼女の居場所を知りたければ、この私を倒してみせるがいい』……と」
クラマは顔をしかめる。
「厄介なおじいさんだね。お孫さんに構ってもらえないからって、若者に絡むのはどうかと思うんだ。年配の方には、若者を導く良い規範となって頂かないとさ?」
「うむ、良いことを言う! しかしあいにく私に孫はいなくてね、息子ならいたが……片目と髪の毛だけになってしまったよ」
「―――!」
クラマの背後で息を飲む音。
緩んだ空気が一瞬にして凍りついた。
「おっと、その反応! 見てくれたようだね、私の展示室を。どうかね、感想などを頂ければ嬉しいのだが」
ワイトピートは首を傾けて、クラマ達を覗き込むように窺い見る。
その台詞、しぐさ、その表情。
何もかもが、隅々まで悪意に満ち満ちていた。
イエニアの喉から絞り出すような声が漏れる。
「クラマ……この男は野放しにはできません……!」
「そうだね、最初から思ってた」
クラマの表情も、先ほどまでの緩い雰囲気は消え去っている。
そして真っ直ぐにワイトピートの瞳を見据えて、告げた。
「こいつは消さなきゃいけないってね」
その言葉にワイトピートの顔が歪む。
怒りではない。
それは狂喜。
応じるのは歪んだ笑みと、高らかな笑い声。
「ははははははは!! 来たまえ、冒険者よ! きみたちを阻む障害はここにいるぞ! ――だが、もっとも……」
ワイトピートは手元の紐を勢いよく引いた!
「すぐに終わってしまうかもしれないがね?」
上空に破裂音。
次の瞬間、部屋中を白煙が覆い尽くした!
「うっ、これは――」
粉塵爆発? とクラマは一瞬思ったが、それはない。これでは向こうも一緒に巻き込まれる。
そもそも粉塵爆発は実験でも再現率の低い現象だ。意図して狙うものではない。
ならばただの煙幕で、これに乗じて接近してくるか……と考えたところで、白煙を挟んだ先から響き渡る声。
「オクシオ・ユデ!」
視界を封じて魔法による奇襲攻撃!
しかし、クラマ達のパーティーにはイエニアの盾がある。
前に出たイエニアが唱えた!
「オクシオ・ビウっ……は――ゴホッ! ゴホッ!」
突然咳き込むイエニア。
――煙だ。
クラマは戦慄した。
この煙は視界封じなどではない。
“詠唱封じ”だ。
クラマは白煙の奥、ぼやけた視界の先に見た。
ガスマスクを装着している男の姿を。
クラマ、刹那の思考。
「――エグゼ・ティケ」
運量使用。
クラマの全身が金色の光を帯びて、願い受け入れる準備が整う。
クラマはコートの袖を口に当てていた。
運量の使用ならば魔法の詠唱と違って、多少不明瞭な言葉でも問題ない。
そしてクラマは全力で集中した。
相手の詠唱を聞き取ることに。
「フェセワハ・ヒシハ・ユデ・イッツレセ――」
(袋の中の水を圧縮……)
詠唱を聞いて頭に浮かぶ。
クラマはパフィーに教わって、魔法の詠唱に使われる古代語の単語をほとんど暗記していた。
故に、詠唱を聞けば、おおよその効果が分かる。
クラマは考える。
相手の魔法を妨害するために何をするべきか。
「タセバ・ジャエトラエ!」
クラマは手元の棒を掴む。
ワイトピートは手にした水袋つきの杖を掲げる。
「貫きたまえ! 切り刻みたまえ! 終焉に向かい解き放たれよ、一切轢断の刃……!」
「相手の魔法からこちらが被害を受けないように……」
クラマは手にした棒を投擲!
「――ギノー・セノ!!」
「――当たって逸らせ!!」
> ワイトピート心量:495 → 445/500(-50)
> クラマ 運量:8228 → 2711/10000(-5517)
クラマの体を覆った金色の光が消えて、願いが受理される。
ワイトピートの杖からは圧縮された水が射出。
しかしその時、クラマの投げた棒がワイトピートの頭に当たって、その体勢を崩した。
「ぬうっ!?」
投射された水の刃はクラマ達から逸れて、白煙と壁を切り裂いた!
シュイイイイイイイイッ!
聞き慣れない音が大部屋の中を駆け抜ける。
咄嗟の機転によって敵の魔法攻撃を防いだクラマ。
部屋の上方向は白煙が届いていないため、“それ”を目にすることができた。
壁と天井を両断するかのごとく走る長大な切断痕。
ワイトピートの魔法具から放たれた水の刃は、まるでバターのように易々と壁を切り裂いていた。
「はは、運量か! ズルイなあ地球人は! 次は警戒するとしよう……オクシオ・ユデ!」
再度の詠唱開始。
白煙とガスマスクによる劣悪な視野。
これが重なった上で、5000以上の運量を減らされた。
先ほどは警戒していなかったような言い回しをしたが、それは嘘っぱちだ。
ワイトピートは運量の起こす「不運」に警戒を怠っていない。
相手が警戒するほど、奇襲に対応する能力が高いほど、行動を妨害するための運量の消費は跳ね上がる。
ワイトピートの行動を運量で縛るのは困難だった。
「くっ……!」
クラマは歯噛みした。
ワイトピートとの距離が遠い。
駆け寄っても相手が陳情句を省けば、先に魔法を撃たれてしまう。
クラマに出来る事といったら、もう銀の鞭での妨害しかない。
だが鞭は前の戦闘で相手に見られている。
クラマは妨害が成功するビジョンが浮かばなかった。
「フェセワハ・ヒシハ・ユデ・イッツレセ・タセバ・ジャエトラエ……」
クラマに迷っている暇はない。
それしかないなら、やるしかない。
クラマが前に出ようとした時だった。
突風。
イエニアの盾が周囲の空間を薙ぎ払う!
その剛腕により盾を振り抜いた結果、白煙が前方上空へと吹き飛んでいく。
代わりに通路側の空気が流れ込んで、周囲の煙が薄まった。
「オクシオ・ビウヌ!」
ここにきてイエニアの詠唱。
しかし相手の詠唱からは、だいぶ遅れている。
「貫きたまえ、一切轢断の刃! 彼らの終焉に向かって今、再び!」
「サウォ・ニノ・シニセ・ノウツ――」
イエニアの詠唱が遅い。
これでは魔法の効果を引き上げる陳情句が間に合わない。
向こうも当然、待ってくれるはずもなく……ワイトピートの詠唱は完了した。
「ギノー・セノ!!」
> ワイトピート心量:445 → 395/500(-50)
放たれる超高速の水刃。
その速度は音速の3倍に達し、金属鎧をも容易く切り裂く。
迫り来る死の刃に対してイエニアは――
「ファウンウォット・シヴュラ!」
> イエニア心量:390 → 360/500(-30)
陳情句なしで魔法を発動。
イエニアが構えた正騎士の盾。
その正面に真紅の紋章が浮かび上がる。
盾に守られる花をモチーフとしたこの紋章は、騎士王国ラーウェイブの国旗にも採用されている。
建国王の遺志を継ぎ、身を盾にして民を守る。
ラーウェイブにおける騎士とは全国民の誇りであり――
正騎士の盾とは騎士の象徴である。
「なんと!?」
ワイトピートはガスマスク越しに目を見張った。
鉄をも穿つ水の槍が、イエニアの盾によって完璧に防がれていた。
第一次元魔法によって強化された正騎士の盾は、この世で最も硬いとされるユユウワシホの硬度を凌駕する。
水刃の放射が止まる。
イエニアの盾は傷ひとつついていなかった。
「おお……」
「すごい……!」
イエニアの背後に隠れる仲間達から感嘆と安堵の息が漏れる。
しかしワイトピートは慌てない。
手にした杖を背後のダストシュートに投げ入れ、すぐに別の魔法具を取り出した。
なお、煙がだいぶ収まってきたのでガスマスクも杖と一緒に投げ捨てた。
「大したものだ。しかし、こちらはどうかな?」
太鼓のような大筒を脇に抱えたワイトピート。
彼は不敵な笑みを浮かべて新たな詠唱を始める。
「オクシオ・ヴェウィデイー!」
「オクシオ・ビウヌ!」
イエニアも同時に詠唱を開始。
ここにきて互いに真っ向から、小細工なしの魔法合戦となった。
詠唱と同時に淡い輝きを放つ大筒と盾。
周囲に広がる魔力波。
ワイトピートとイエニア。
2人の朗々たる詠唱が大部屋に響き渡る。
「サハ・ネオハ・チスヨ・ラエサエアー・ホネ・サエトウ・イートゥリ……!」
「サウォ・ニノ・シニセ・ノウツ!」
ワイトピートの詠唱。
それを聞き取ったクラマとパフィーが顔色を変える。
「イエニア、この魔法は……!」
慌てて動こうとしたクラマ。
その出足をイエニアの手が制した。
イエニアは落ち着き払っていた。
背後でクラマやパフィーが動揺する気配を見せても、泰然としたまま真正面の敵と対峙する。
クラマはイエニアの背後から見る。
威風堂々とした立ち姿。
自信に満ちた横顔。
そして微塵も揺らぐことなく紡がれる詠唱。
『心配いりません、大丈夫です』
そんなイエニアの思いが肩越しに伝わってきた。
ならば何も言わない。
クラマはイエニアを信じる。
そして2人の詠唱は魔法の内容を規定する律定句から、魔法の効果を高める陳情句へと移った。
「さあ終わりの刻だ! 終焉の光……一切衆生、ここに灰塵と相成らん! ははははははっ! そう! きみたちの冒険は、ここで終了だッ!!」
「朽ちない城はない。罷らぬ者はいない。されど其は不滅なりしもの。王の遺志、騎士の誇り、我らが絆。……高く貴き心よ、牢固たれ!」
陳情句の終わりは同時。
ワイトピートとイエニア。
互いの魔法が、ついに相対する。
「レイト・ギノフィル!!」
「ファウンウォット・シヴュラ!!」
> ワイトピート 心量:395 → 295/500(-100)
> イエニア 心量:360 → 330/500(-30)
解き放たれる破壊の力。
ワイトピートの持つ大筒に光が満ちて――わずかな溜めの後、それは猛威を現した。
放たれたのは熱線。
前方への指向性を持った超高熱、超高密度の熱光線である。
ゴアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!
獣の咆哮にも似た怪音を轟かせ、光の奔流がクラマ達のパーティーを飲み込んだ!
大筒の口径より何倍も太い熱線。
その大きさは人の全身を飲み込んで余りある。
放たれた極太の熱線は地面をも抉り、白煙を消し去り、壁を貫き、圧倒的な破壊エネルギーと熱量によって、向かった直線上のすべてを塵も残さずに蒸発させた。
クラマは信じられない光景の中にいた。
自分達の周囲を包む眩い光。
触れればそこに存在した痕跡すら残さず消滅させる、一切壊滅の光の中にありながら、そこは驚くほど穏やかだった。
破壊が及ばないばかりではない。
熱気の余波もなければ、瞳を焦がされることもない。
クラマ達を守るのは先頭に立つイエニア。
彼女の掲げる盾……その前方の空間に大きく、青い紋章が輝いていた。
『高く貴き心、牢固たれ』
これは個体・停止を司る第一次元を操る魔法。
通常の発動においては盾を硬化するだけだが……陳情句を入れた場合、盾の前方における第一次元から第四次元までの全ての運動を停止させる。
すなわち、この盾の背後へ攻撃が通ることは“原理的に有り得ない”。
陳情句が完全ならば、竜の咆哮をも防ぐことができると言われている。
クラマはかつてイエニアと交わした会話を思い出す。
『そういえばさ、イエニアの盾って魔法で硬度を強化できるんだよね?』
『ええ、そうです。陳情句まで入れれば、熱や冷気、腐食液に至るまで、あらゆる外敵からの脅威を遮断できます』
……あらゆる脅威を遮断する。
そこには偽りも脚色もなかった。
周囲を流れる美しい光の奔流。
その中で、クラマは目の前に立つイエニアの背中を眺めた。
――正騎士の盾。
この盾は、9つしか席のない正騎士に任命される折に、国王の手から直接賜る王国伝来の魔法具である。
“たとえ剣と命をなくそうとも、盾と誇りを失うな。”
これはただ単に騎士としての心得を説くだけのものではない。
小国であり資源にも乏しいラーウェイブ王国だが、世界最大の帝国と隣接しているにもかかわらず、これまで侵略されずに存続してきた。
その理由のひとつが、正騎士の存在であった。
王国騎士の頂点に立つ彼らは一騎当千の戦士であるだけでなく――その盾の護りは、帝国がどれだけ強力な魔導兵器を開発しようと、決して打ち崩されることがない。
王国を守護する9人の絶対防衛戦線。
それが王国正騎士である。
……光が収まる。
破壊が過ぎ去った後、大部屋の様子はすっかり変わり果てていた。
ワイトピート前方の地面はスプーンでくり抜いたように綺麗に抉れており、熱により熔けた床が湯気を放っていた。
そして抉れた地面の先。
クラマ達が大部屋に入ってきた通路は、元の倍以上に広がっていた。
無論、扉も壁ごと蒸発して消えている。
そんな圧倒的な破壊の痕跡の中心で。
クラマ達4人とその足元の地面だけが、何事もなかったように無傷だった。
静寂の中、イエニアが静かに口を開いた。
「……まだ続けますか?」
見下ろすようなイエニアの視線。
それに対してワイトピートは自嘲気味に笑った。
「ハハ……いや、これは無理だ」
そう言って大筒の魔法具をダストシュートにIN。
続いて後ろの壁に向かって跳ぶと、上から垂れ下がったロープを掴んであっという間に登っていった。
登った先には、もうひとつのフロア。
壇上のある体育館のような、一段高いフロアのある造りをした部屋だった。
ただしよじ登れるほど低くない。
両側の階段を通らなければ上の段まで上がれない。
ワイトピートはロープを使って登りきると、自分がショートカットに使用したロープを切断。
これでクラマ達が上がって来るまでの、いくらかの時間を稼いだ。
「ははは! 時間はあったからね、いろいろ準備していたのさ。このように!」
と言って、ワイトピートが下にいるクラマ達に向かって見せたもの。
それは首に縄のかけられた2人の男。
ワイトピート自身の部下だった。
ぎょっとして見上げるクラマ達。
首に縄をかけられた男たちは重篤ながらも意識はあり、苦しげに呻き声をあげていた。
「わ……ワイトピート様……こ、これは……一体……?」
「く……ぐるし……」
ワイトピートは頷き、声高らかに宣言した。
「ヴォトン・ツディチスユア!!」
それは、“奉納”の開始を告げる言葉。
“奉納”は自らが信奉する神へと何らかの行為を捧げることで、心量の回復を図る儀式だ。
ワイトピートが信奉するのは悲劇の神。
となれば、これから捧げられるのは何なのか。
否が応でも想像できた。
「コーベル君! ペシウヌ君! ……きみらはよく働いてくれた。特にコーベル君は私の右腕となることを夢見て、常日頃から頑張っていたね」
「は、はい……だ、だから、おれ、自分は、頑張って……その……っ!」
必死に抗弁しようとするコーベルに対して、ワイトピートはにっこりと笑った。
「ははは、頑張ったからといって何だというのかね? 私は今まできみを、使えない道具としか思っていなかったよ」
コーベルとペシウヌの顔が固まった。
ワイトピートは大笑して2人を嘲る。
「ぬっははははははははっ!! どうかね、敬愛する相手に裏切られた気分は!? 是非とも感想を聞かせて欲しいものだ! ……喋れるものならね?」
ワイトピートはそうして手元のレバーを引いた。
すると2人の首にかかった縄が上に引かれて、首吊りの形になる。
両手両足を縛られた男たちは体を振ってもがくことしかできず、徐々に首が締まり、足が地面を離れていくのに抗うことができなかった。
通常、絞首刑は首に縄をつけた状態で落下させるため、一瞬で意識を失う。
しかし彼らに行われているのは逆に縄を引き上げる方法であり……しかも椎骨動脈の圧迫で意識を失わないよう、ワイトピートは縄を調整していた。
結果、男たちは顔面を鬱血させてもがき苦しむ。
地獄のごとき苦悶の中、男たちは怨嗟の呻きを漏らす。
「グッ……グゾッ、ヂグヂョオ、オッ……!」
「ゴッ、ゴ、ゴロズッ……! ゴロジデ……!」
2人ともに、目の前のワイトピートへ噛みつかんばかりに憎悪の眼差しを向ける。
つい先刻まで自分に尊敬の目を向けていた男たち。
その変わりようを見て、ワイトピートは……
「ハハハハハハハハハハハハハ!!!」
天に向けて高らかに笑った。
そして、イエニアが階段を登りきったのもその時だった。
「外道! その振る舞いもそこまで――」
「ふむ」
上部フロアにイエニアが着いた瞬間、ワイトピートは真一文字に剣を振るった。
「あっ」
ヒュッ、と軽い風切り音。
次いでボトッ、ゴトッと下のフロアで鈍い音。
男2人の頭部が、下のフロアに転がった。
「………………」
絶句するイエニア。
上から突然落ちてきた生首に、ヒッと悲鳴を漏らすパフィーとレイフ。
クラマだけが、転がった生首に目を向けずにワイトピートを真っ直ぐ見据えていた。
> イエニア心量:330 → 328/500(-2)
> パフィー心量:169 → 163/500(-6)
> レイフ 心量:314 → 309/500(-5)
「フフ……やはりその目。いや、今はこちらが先だな。さあ悲劇の神、ツディチスユアよ! 此度の採点や如何に!?」
その呼びかけに応えるように、大量の青白い光の玉が出現し、ワイトピートの体に入り込んでいった。
> ワイトピート心量:295 → 424/500(+129)
「……ふうむ、低いな。まあ、客観的に見れば好き勝手にしてきたゴミが相応しい末路を遂げただけ。悲劇とは言い難いか。死に際の演出も悪かった。寄られてしまったから仕方がないとはいえ……いや残念だ」
まったく他人事のように評論するワイトピート。
そうして彼はフッと笑う。
「しかし、これだけあれば充分だ。オクシオ・イテナウィウェ!」
ワイトピートの詠唱開始。
精神・感情を司る第六次元魔法。
これは盾で防ぐことができない。
詠唱を中断させようとイエニアが迫る!
ワイトピートは後ろに下がりながら、ダガーや煙玉など、ありったけ投げつけながら呪文を唱える。
「イーギウー・ドフウ・ツゥーラエ・イーペイ」
その詠唱にハッとするパフィー。
「まずいわ! 相手の詠唱を止めて!」
パフィーの言葉を受けて猛然と敵に詰め寄るイエニア。
だがワイトピートが早い。
彼は陳情句を省いて、そのまま魔法を発動する。
「――タエロイノ」




