6話
本日はダンジョン探索当日。
空は快晴、雲ひとつない青空だった。
「さあ、準備はできましたね皆さん! 今日は我々が前人未到のダンジョンへと足を踏み入れ、踏破へと向かう記念すべき第一歩です! 油断せず、気を引き締めていきましょう!」
「おお~、イエイエ~」
イエニアのスピーチに、クラマは拍手する。
「おー!」
パフィーは飛び上がって拳を突き上げた。
そんな微笑ましい光景の後ろで、ひとり溜め息をつくレイフ。
「みんな元気ねえ~」
「レイフ、テンション低くない? アゲアゲでいこうぜ~!」
「あなた1日で馴染みすぎじゃない? いや、私もテンション低いわけじゃないのよ。ただ荷物が重くって」
そう言うレイフは、パフィーが丸ごと入りそうな荷袋を背負っていた。
「重そうだね。僕が持とうか?」
「そうして欲しいところだけど……」
そんなクラマとレイフのやり取りを、イエニアが止める。
「仕方がありません、ダンジョンではこれが彼女の役割ですから。今のうちから慣れてもらわないといけません」
「そ。何もできないお荷物だから、荷物持ち」
レイフは自虐しながら舌を出して笑う。
「それとマッパーですね、彼女は」
「マッパー?」
聞きなれない言葉にクラマは聞き返す。
「地図を書く人のことです。地下深くの迷宮では、帰り道を失うことが最も怖ろしい。地味ですが重要な仕事です」
「ああ、それは確かに」
「マッパーだけど、真っ裸になったりしないわよ?」
「いや、分かってます」
「あ、でも心量が少なくなったら……」
囁くように言いつつ、レイフはクラマに妖しい流し目を送る。
その言葉の続きをイエニアが大きな声で遮った。
「お話はその辺にして! ダンジョンへ行きますよ! はい、クラマはこれを」
イエニアはクラマに長い棒を差し出す。
「これは?」
非常に長い。3メートル近くはある木の棒だ。
「あなたには、パーティーを先導して罠の発見や解除を担当して頂きます。怪しい所があれば、棒の先でつついて調べてから近づくようにしてください」
なるほどな、とクラマは感心した。
確かに幸運に任せて罠に突っ込むよりも、回避できる罠は避けた方が運量の消費は抑えられる。
「オーケー分かった。でも、どこが怪しいか見分けられるもんかな?」
「そこは私達も見ていきます。たとえ罠を見過ごしたとしても、それはあなたひとりの責任ではありません」
「ふうーむ……」
クラマはなにやら思案している。
それを迷いと受け取ったイエニアは、安心させるように言葉を続ける。
「それに、今日は地下1階より先には進みません。1階は既に他の冒険者たちに探索され尽くしていますから、危険もないでしょう。まずはダンジョン内での歩き方、独特の空気に慣れてから、本格的な攻略に移ります」
要するに今日は練習ということだ。
クラマは思考を終えて、顔を上げる。
「うん、とりあえず行ってみようか!」
長く険しい、ダンジョン踏破への第一歩が始まった。
> クラマ 運量:10000/10000
> クラマ 心量:97
> イエニア心量:350/500
> パフィー心量:422/500
> レイフ 心量:473/500