表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/115

16話

「ただいまー」


「おかえり~」


「おかえりなさい!」


 帰宅した2人をレイフとパフィーが出迎えた。

 奥に入ると、サクラたち4人が何も置かれていないテーブルを囲んでいる。


「おそーい。いつまで遊んでたのよ」


 テーブルに突っ伏して足をぶらぶらさせるサクラを指さして、クラマは隣のレイフに問いかける。


「この娘、いきなり馴染みすぎじゃない?」


「そうねぇ。でもそれ、あなたが言う?」


 などと適当にお喋りをしつつ、買ってきた食材をレイフとパフィーが調理する。

 全員で談笑しながら夕飯。そして片付けを終えて、話し合いが始まった。


「まずは報告します。冒険者ギルド内では、サクラ達の事は知られていないようでした。ただ、警備隊の管轄はギルドではなく行政ですから、警備隊に手配されているかを調べるのは、少し時間がかかるかもしれません」


「じゃあ私が調べてみるわ。そういうのは得意だから」


 レイフが挙手して言った。

 イエニアが頷いて、後の調査はレイフに任せることになる。


「その後のことも少し考えておきましょう。ずっとここに置いておくわけにもいきませんし」


 イエニアの言葉にサクラが答える。


「外に出ても大丈夫なら出ていくわよ。もともと使ってた貸家もあるし。ダメなようだったら……どうしよう?」


 どうしよう、と振られても、周りは困った顔をするしかなかった。

 そこへクラマが手を挙げる。


「それなんだけどさ。ダンジョン攻略を協力できないかな?」


 建設的な提案。

 と思ってクラマは言ったのだが、見ると皆一様に渋柿を口に含んだような面持ちだった。


「あれ? だめ?」


 事情の分からないクラマにパフィーが説明する。


「あのね、クラマ。ダンジョン内で複数のパーティーが協力して動くのは、冒険者ギルドの規約で禁止されているの」


「え? なんで?」


 理解しがたい話だった。

 パフィーの回答も歯切れが悪い。


「うん……それに登録してダンジョンに挑戦できるのは、1パーティーにつき4人まで。うち地球人は1人まで。負傷等による交代は1人までと決められていて、これに対する明確な理由は、公には説明されていないの」


「うーん、わけがわからないね。攻略させる気あるのコレ?」


「ないんでしょうね、それは」


 横から答えてきたのはレイフだ。


「この街ってね、数年前までは小さな田舎町だったの。でも現評議会議長のヒウゥースが冒険者の誘致を始めてからというもの、あっという間に大都市の仲間入り。これには以前から手広く商売を広げていたヒウゥースの経営手腕によるものが大きいとされているわ。最近では観光地としての開発も進んでるみたいね」


「それってーのは要するに……最初から街興しが目的ってこと?」


 レイフは肩をすくめる。


「……っていうのが、冒険者の間でまことしやかに流れてる噂。ま、本当に攻略したパーティーが出たとして、冒険者なんていうならず者たちが、お行儀よくギルドに5割を渡すとは思えないしね。運営してる側にとっては、実際にダンジョンを攻略されたら困るのは確かでしょうね」


「……なるほどね」


 クラマはそう言ったきり、黙り込んで何事かを深く思案する。

 その間にパフィーは説明を補足する。


「でもね、協力禁止とはいっても、ダンジョンの中で偶然居合わせた場合の、一時的な協調行動は認められているわ」


「そうね。だから実際のところは、おおっぴらに協力してます~、って言わなきゃ問題ないはずよ。他のパーティーに見られた時に、すぐ離れるとかして誤魔化せばね」


「でもでも、ばれたら10万ロウの罰金よ。密告の報奨金をねらう冒険者もいるから、あぶないわ」


 レイフとパフィーがそれぞれに意見を言い合い、サクラはそれを眺めて興味なさげに頬杖をついている。


「……ま、協力したってあたしたちじゃ3階にも行けないし。ぶっちゃけ足手まといになるわよ?」


 そう言って、テーブルにべたっと突っ伏す。


「しかしねー……やっぱりこっちの世界も、世の中お金なのね~。ハァ~、夢がないわ~」


「お金は……でもアネゴ……お金は、おっかねぇっすよ」


「い、一郎ォ!? それは……!」


「地球語ジョークでござるよ!? まさかそこまで使いこなすとは……一郎のインテリジェンス、甘く見ていたでござる」


「オヤジギャグ! バカ! おもしろくないから、それ!」


 場が騒然としてきたところで、それまで沈黙していたイエニアが手を叩く。


「はいはい、これ以上何もないなら、今日はもう終わりにしましょう。クラマは……クラマ?」


 イエニアはクラマが妙な顔をして自分を見ているのに気付いた。

 困ったような、申し訳ないような、それでいていたずらっぽく誤魔化すような、なんとも言えない半笑い。


「ごめんね」


「?」


 クラマの言葉の意味が分からず、頭に疑問符を浮かべるイエニア。

 そうしてクラマは、全員に向けて言った。


「うん、やっぱり協力しよう。でもサクラ達にはここにいてもらって、僕達だけがダンジョンに潜る」


「え? ここで何するの? 料理?」


「それもいいけどね。本命はこっち」


 と言って、クラマは人差し指で真下を指した。


「サクラ達には、地下から戦利品をここまで引き上げてもらう」


 全員が呆気にとられていた。

 その中でいちはやく衝撃から立ち直り、応答したのはレイフだった。


「え~っと……それってつまり……このまえ掘った穴を使って、入口の上納金から逃れるってこと?」


 クラマは満足そうに頷く。


「そう。せっかく苦労して手に入れたものを、半分も持っていかれるのは馬鹿らしい。ただ、全部引き上げたらダンジョンを出る時に怪しまれるから、自分達で使えるものと、お金に換えるのが簡単なものだけだね。残りは普通に入口へ持っていく。使えないものの換金と販売手数料と考えれば、5割もそう高くない」


 予想外の提案に皆が戸惑い、思案している中で、クラマの発言は続く。


「もちろん引き上げ作業中は冒険者が通らないように、僕らで周囲の見張りをする。オノウェ調査の対策はパフィーと三郎さんの意見を聞きたいな。1階に来た新人が運量で偶然見つける事の対策は、サクラの運量で対抗すればいいと思う」


 そこまで言い切ったクラマは、一呼吸置いて全員を見渡す。

 皆の視線が集まっているのを確認すると、ゆっくりと人差し指を立てて――


「向こうが汚い真似をするなら、こっちも素直にやる事はない。ズルしていこう」


 ニヤリ、と口の端を吊り上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ