叔母
以前、一人暮らしの叔母が入院する事になった。
彼女は、若い頃に旦那さんと死に別れて、一人息子は障がいを持っていて、施設で暮らしている。
入院する病院は、医大病院。
私の高齢の親が連れていくには、無理がある距離にある。
そこで、私が入退院の世話をする事になった。
私の弟でもいいのだが、叔母は高齢でも女性。
『ひろこは、おしゃべりだから、気が紛れる』
と、やんわりと弟を拒否した。
遠いので、朝早くに出発。
親の病院もそうだが、何故、遠くの病院に行かなければならないのだろう?
市内にも、それなりの総合病院があるのに。
色々な昔話や、私の親のないしょ話など、色々話ながらの運転。
医大病院に着き、病室に案内されたら、同じ病室に、私と同じくらいの年齢の女性が寝ていた。
少し気にしつつも、失礼な事と、彼女の方を見ないようにして、テレビカードや、飲み物を買ったりしているうちに、看護師が、採血を済ませていた。
簡単に治療説明を聞いて
『日曜に来るから』と医大病院を後にした。
叔母の入院は1ヶ月程の予定。
日曜に早起きして、親を乗せて、医大病院に見舞いに行った。
ついでに、院内のコインランドリーで洗濯もしようと考えていた。
点滴をしていた叔母は、以外に元気だった。
談話室で、私の親と私とで話をしている時に、同じ病室の、私と同じくらいの年齢の女性の話になった。
叔母は、ひとり暮しが長いせいか、噂好き。
『あの人、ひろこより2つ年上みたいよ。
若いけど、ガンと脳卒中なんだって!もう長くないみたい。
ひろこも気を付けなきゃだめよ』
そんなに詳しく誰に聞いたんだ?
まさか、家族に聞いた訳じゃ…
こんなんじゃ、1ヶ月いるうちには、入院してる人全部の情報を手に入れそうで怖い。
『おばちゃん、こーゆうのは、他人に話したらダメだよ。
どこまで本当か分からないんだから』
『えっ?』
こんな時ばかり、耳の遠いふりをする。
『でもね~
入院する時は心配だったけど、いつも一人じゃない?
今は、毎日看護師さんや、誰かと話が出来て楽しいわ』
叔母さん…
寂しかったんだ。
結局、叔母は2ヶ月入院して退院。
運良く、特養に入れた。
また、大好きな噂話してるんだろうな。
今度行ってみよう。