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魔界生活100 早摘みユウシャミックス

『おお勇者よ… 即死してしまうとはあまりにも情けない!』


 某大作RPGにあったようなあんまりすぎるセリフが聞こえた気がして、リョウは目を覚ます。


 …ここはどこだろう?


 リョウは辺りを見回す。あのゲームなら王様がいるところだ。


 キョロキョロ…

 少し離れたところに神官っぽい悪魔と悪魔っぽい王様がいる。


 …いたね、王様。…多分魔王だけど……


 ちょっと記憶を確認しよう。


 死んで転生して、潰れて死んだ。


 …オーケー…… 女神とか詳しく思い出すとイライラしてくるが記憶はバッチリだ。飛び降り自殺とか転落死は地面につく前にショック死すると聞いたことあるが、遊園地に落下系絶叫マシンという娯楽のある世界の住人、恐怖はあったが死ぬと思っていたわけじゃない。おかげで床に叩きつけられるまでしっかり覚えている。


 しかし今はいったいどういった状況なのだろうか?


 死んだはずなのに生き返り、尚且つあのセリフを聞いたということはこの人(?)達が蘇らせてくれたということなのだろうか?


 多分、と言うかその可能性しか考えられない状況なのに自信がない。


 悪魔っぽい王様は正直中性的な顔立ちで性別不明(服装的におそらく男性)だが人間の顔をしている。角生えてたり羽生えてたりドクロドクロした王冠被ってるが、まぁコスプレの範囲だ。

 問題は神官っぽい悪魔の方。完全に黒山羊だ。テレビで見たローマ法王っぽい服装(但し黒色)を着て人間みたいに後ろ足で立ち前足を腕のように使っている。しかし手は蹄、脚は膝が逆になっているというか足首が高い位置にあるというかとりあえず馬とか牛とかの後ろ足みたいで明らかに変。


 つまるところ「どう見たってモンスターなのにいったい何故助けてくれたの?」って話である。


 何故助けてくれたのかは分からないが助けてくれたのなら、相手がモンスターであれきちんとお礼を伝えるのが礼儀と言うものだ。リョウは意を決して声をかける。


「あのー…」


「むっ、気がついたか勇者よ。」


 リョウの声に悪魔っぽい王様が反応する。


「えっと、あなた方が俺を助けてくれたのでしょうか?」


「うむ。突然潰れて驚いたぞ。」


 確かにいきなり降って行ったからな、ビックリさせてしまったな。


「すみません、驚かせてしまって。あっ多分床すごく汚しちゃいったと思います、ごめんなさい。それなのに生き返らせてくれて本当ありがとうございます。」


 リョウはしっかり頭を下げる。


「いやいや、気にするな。それよりこうも鮮やか(?)に奇襲(?)を決められ、さすがの余も胆を冷やしたぞ。」


 驚いたのは本当のようだが、魔王様(?) そんな疑問符隠しきれないなら無理してフォローしてくれなくてもいいっすよ。


「いや、意表を突かれて焦ったのは本当だぞ? ただちょっとその…うん… 着地あれだっただけで…」


 敵にフォローされて項垂れるリョウを魔王様はさらにフォローしてくれる。


 別に落ち度でもなんでもないけど敵にこうも必死にフォローされるのってなんか凹むなぁ。


 気を取り直して魔王様は言う。


「あっと、うん… ゆ、勇者よ! 確かに先程の奇襲(?)は完璧だった。だが残念だったな、今の余に油断はない。しかもこちらには回復呪文を使いこなす悪魔修道士が控えている。

 …だからその… 首とか痛むようならちゃんと言うんだぞ?」


 魔王様が心配そうに聞いてくれる。


 そちらの黒山羊なお方は神官ではなく修道士でしたか、違いわからんけど。

 しっかし体調気遣ってくれるとか魔王様優しいなぁ。


 リョウは首をこきこきと回してみる。

 「あっ馬鹿、いきなりそんな乱暴に。」とか魔王様は小さく声をあげたが… うん、気にしない。魔王様のキャラが安定してないとか気にしない。


「大丈夫っぽいです。」


「お、おお。そうか、良かった。」


 リョウの言葉にあからさまにほっとした感じの魔王様。


 …


 沈黙が流れる。


 …


 …なんだこの空気?

 なんかこう、あまり仲の良くない友達の家で何故か二人きりになっちゃったみたいな?


 …


 仕方ないよね、初対面の魔王と勇者だし。


「…魔王様。」


 沈黙に耐えかねたのか悪魔修道士が言葉を発した。


 そうだ、二人きりにじゃなかった。人語を解するか不安だったし、なんかさっきの例えで言うと大人しすぎてただの置物にしか見えないペットみたいだったけどリョウ達には頼もしい黒山羊さんがいた。


「私、少し用事を思い出しまして… どうでしょう? 勇者も無事そうですし、私もう行っても良いでしょうか?」


 恭しく悪魔修道士は言う。


 待って黒山羊さん、勇者が無事だから魔王と二人きりにしていいかって普通に考えたらおかしいよね? このどうしたらいいかわかんない空気から逃げたいだけだよね? 


「あー、その、うん…」


 魔王もこの空気に二人きりは嫌なのか言い淀む。黒山羊さんは「私必要ないよね?逃げて良いよね?ね?」と目で語りかけてるみたいだが、魔王様頑張って!


「…うむ、大儀であった。下がってよいぞ。」


 魔王様折れちゃったー…


 走るように立ち去る黒山羊さん。魔王様の手前走っちゃいないが限りなく走ってる。

 そんなに逃げたいか? この空気…


 …


 逃げたいよな、俺だって逃げたいよ…


 …


 沈黙が流れる。だがリョウだって元男子高校生、ゲームを散々色々とやり、魔王と勇者の会話なんてたくさん見てきた、こんな時なんて言い出せば良いのか知ってるはずだ。


 …


 なんも思い付かねぇー…

 ぱっと思いつつたのは「世界を半分やろう」→「断る」とか「実は私はお前の父親なのだ」→「な、なんだって!」とかだがその後は戦闘にしか繋がらない。

 そもそも勇者と魔王の会話って基本「よく来たな勇者よ…」とか魔王から始まらないか? 勇者から始まる時って魔王が世界を崩壊させる秘術やってるときの「やめろー!」とかしかない気がする。


 …どうしよう……


 リョウが完全に頭を抱えてしまったせいか魔王様がなんとか話しかけてくれた。


「あー、うん。勇者よ! とりあえず死闘する(やりあう)?」


死闘し(やり)ません‼」


 即答する。


 ってかどんな提案ですか! そんな会話のきっかけ見つからないしとりあえずゲームでもやる?みたいなノリでラストバトル提案しないでください。


「では勇者よ、…何しに来たのだ?」


 魔王がまじまじとリョウを見つめて聞いてくる。

 何しにと聞かれましてもぶっ飛ばされたからとしか答えようがない。リョウは自己紹介をかねてここに至った経緯を説明した。




「うむ、話を聞いた感じリョウを転生させたのは五大神の1人で芸術の女神ラファエラだな。」


 恨み節たっぷりディスりながら説明したら魔王とリョウはかなり打ち解けた。なんでも魔族と女神は不倶戴天の仲だそうだ。


「でもまさかアレが芸術の女神だなんて信じられませんね、もらったスキルも芸術関係ないし。」


 リョウは魔王様とフルーツをつまみながらお茶をしている。魔族はあまり凝った料理をしないそうでお菓子の類いはないらしい。少し残念だ。


「スキルの付与はランダムらしいからな、まぁその時対応している五大神の影響も少しは受けるそうだが。ラファエラは幸運と災難も司っておるからプラスのスキルをもらったのならかなり良いものだったんじゃないか?」


 魔王様は魔イチゴと呼ばれる苺のようなものを頬張りながら言う。ちなみに魔界の果物はアメリカンなお菓子みたいな色をしており始め口にするのにかなり抵抗を感じたが味はすごく濃厚で美味しい。


「『時間操作』っす、まだ具体的に何ができるのか知りませんが。」


 リョウも魔イチゴをつまむ。顔がついており噛むと果汁と叫び声が溢れるのはご愛嬌だ。


「かなり当たりなスキルだな。周囲の時間を止めたり、遅くしたり。過去や未来を見聞きしたり出来る。まぁ消費魔力がでかいのが欠点だが。」


 魔王様、もぐもぐ。


「へぇー、自分で言うのもなんですがそんなスキル与えた奴を放り出すなんて女神ってアレですね。」


 リョウも、もぐもぐ。そういやラファエラ殺す気満々だったから俺のスキル確認してなくないか? もぐもぐ。…別に気にしないけど。


「ラファエラは顔が好みでないと放り出すが、他の五大神も与えたスキルが好みでないと鍛えず放り出すことはよくあるな。まぁ敵陣に飛ばすのはやはりラファエラぐらいだが。」


 2人でもぐもぐ。

 魔イチゴの悲鳴がうるさいけど、平和だなぁ。


「して、リョウよ。これからどうするつもりなんだ?」


 ひとしきり魔イチゴ(の阿鼻叫喚)を堪能したら魔王様が聞いてきた。


「どうしましょう? 今更勇者らしく魔王と戦うつもりは更々ないですが… とりあえずラファエラに復讐でもしようかと。」


 先の見通しはまったくないがこれだけは譲れない。


「そうか、では魔王軍(うち)に来るか?」


「いいんすか!?」


 ずいぶんノリは軽い気はするけどこれは渡りに船だ、飲み屋のその場の与太話みたくしないためにもこの場で即決させて貰おう。


「よいぞ、魔王軍というか魔界に市民権を得た人間はこれまでいないから大変だと思うが。」


「市民権を得ていないってことは人間は基本奴隷ですか?」


「いや、家畜。」


 家畜かぁ… ちょっと心折れそうだな…

 …アレ信仰する連中と一緒に生活よりかは断然ましか。


「お願いします!」


「わかった、ちと待っておれ。」


 そう言って魔王様は戸棚をあさり出す。


「あったあった。ほら。」


 差し出されたのはドッグタグのようなネックレス。


「『従魔のペンダント』だ。ペットが迷子になったときに飼い主に居場所が伝わる魔道具。隷属とかおかしな効果はないから、着けるがよい。」


 認識票じゃなくて首輪でしたか。


「そんなもの無くても逃げやしませんよ?」


 いきなり信用して貰えるとは思っていなかったがそんなものを渡されるなんて打ち解けたと思っていただけに残念だ。


「すまんすまん、言葉が足らなかったな。別に余もリョウが逃げるとは思っとらん。ただ魔族には人間を食べる連中が多いからな、それを着けておれば余の身内ということで襲われることもないだろう。」


 …食べる?


「えっと…それはどういった意味で?」


「バキバキグシャグシャバリバリゴックン。」


 性的な意味じゃなくて文字通りの方か…


「…ありがたくちょうだいします。」


 こうしてリョウの魔界生活は始まった。


 …俺、少し早まったかも知れない……




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 人間界、ルクトフェルミナ大神殿。

 人間界の中心にあり最高神デウナを祀る神殿であり、最奥にはデウナのいる神界へと続く門がある。


 デウナは五大神ではない。五大神とは数いる女神のなか特に信者の多い、豊穣の女神ガイア、商業と学問の女神マクシミリア、闘争の女神イリスタル、芸術と幸運の女神ラファエラ、健康と治癒の女神エリクシルの5柱をさす。

 その五大神の上、最高神という肩書きで世界の管理を司るデウナの信徒は王族とその血縁の一部有力貴族のみだ。

 各国からの潤沢な寄付により贅のかぎりを尽くしたこの大神殿には1人の勇者がいる。

 名前、年齢、性別、種族。そのすべてが秘匿とされ神殿内でも限られた神官しか面会のかなわないその勇者は『予知の勇者』と呼ばれていた。

 その名の通りこの勇者は転生した際に予知のスキルを与えられた。予知とは今いる世界線の上でこの先に起こる出来事を知ることができるという能力だ。

 予知の勇者はこれまでにこの能力を使い様々な凶事から人々を救ってきた。


 そしてこの日、この予知の勇者から新たな凶報が知らされる。


 曰く、


『数ヵ月後大規模なモンスターの襲撃により、防衛都市リッツボーンヒルが陥落する。』

魔イチゴは1パック=初任給って高級品の設定です。

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