第三章〜手を取り合う二人〜
「私は近くの公立高校に行く予定よ」
私のこの発言から問題は発生した。
「私は鞘と同じ学校に行きます」
燗は進路相談の時先生と親にこう言ったらしい。
流石のご両親も大慌てだ。
燗の頑固さは並みじゃない。
困り果てたご両親が、なんとか説得してくれとつい昨日私の家を訪ねて来た。
そして今私は燗の部屋に来ている。
「鞘が来てくれるなんて珍しいね、嬉しいよ」
燗はそう言って私の隣に座っている。
私はどう説得したものかと、考えていると燗のほうからその事に触れてきた。
「鞘は家の前のあそこに行くんでしょ、私も同じ所に行くから、また一緒のクラスになれるといいね」
とても嬉しそうに話し出す。
切り出しにくいが、いつまでも迷ってても仕方ないと、思い切り直球で切り出した。
「その事なんだけど、燗は桜華学園にもともと進む予定だったのでしょ、そちらの学園に進んだ方が絶対いいと思うのよ、離ればなれになるのは寂しいけれど、将来の事を考えると…ね?」
「嫌」
「あのね……」
「絶対嫌」
「……」
私が困ってどうしようか黙ると慌ててこう言ってきた。
「鞘の言うことなら何でも言うこと聞きたいけどこれだけは絶対、絶対聞けない、私はどんなことをしても鞘から離れたくない」
泣きそうな顔でジィッと私を見つめてくる。
「っっ」
思わず抱き締めてしまった。
燗も顔を胸に埋めてギュゥット私の服を握りしめて離さない。
私は心の中で燗のご両親に謝った。
私には説得無理でした、だって本当は私だって燗とは離れたくないから……。
「だからと言って、何でこんな状態になってるのかしら」
私は今桜華学園の中に立ち尽くしていた、桜華学園の制服を身に付けて。
周りには私と同じ新入生が楽しそうな笑顔や少し緊張した表情で通りすぎていく。
そして私の隣には、燗がこれまた嬉しそうに凄い笑顔で立っていた。
「本当になんでこうなったのかしら」