第二章〜近づく二人〜
驚いた。
何が驚いたかと言うと、テレビでしか見たことのない、三メートル以上ある真っ黒なリムジン、それに当たり前のように乗り込む、燗ちゃん。
本当に驚いた。
燗ちゃんは、不思議そうに、呆然としている私を見ていた。
「ど、どうしたの?」
動かない私に、今にも泣きそうな顔で、脅えたように聞いてきた。
私はその燗ちゃんを見た瞬間、ごめんね、何でもないよ、と言って恐る恐るその車に乗り込んだ。
これだけではなかった。
燗ちゃんは、世間で言うお金持ちだった。
家に帰ってお義母さんに話すと、燗ちゃんの家は世界でも有名な家柄だと言う。
「私見たいな子だったら、仲良くしたらいけないの?」
私がそう聞くと、お義母さんは、それは違うと言ってくれた。
「確かにこの世の中、偉い人、凄い人沢山いますよ、ですが仲良くしたり、お友達になったりするのにはそんなものは関係ないの、鞘は燗ちゃんがお金持ちだから友達になりたい訳じゃないでしょう、確かに周りの人はいろいろと心ない事を沢山言って来るでしょうが、鞘…あなたが本当に仲良くしたいと想うなら、たとえ燗ちゃん本人に否定されても、頑張りなさい、全ては鞘次第よ」
私はこの時の、お義母さんの言葉があったから周りの人から何を言われても頑張ってこれた。
燗ちゃんと、友達になりたい、仲良くしたい、どうしてこんなにこんな想いが浮かんで来るかは、私にも解らない、それでもこの想いだけは、決していつまでも無くなることはなかった。
燗ちゃんとその家族の人達も好い人だったからというのも頑張ってこれた理由の一つ。
自分達の身分を誇示したりもせず、私を普通に燗ちゃんの友達として、よく家に招いてくれた。
そんな周りの人達に守られ、私達は、今もずっと二人で仲良く毎日を過ごしていく、変化があったのは、高校に入学する話しが登った時だった。