プロローグ〜出逢い〜第一章〜始まる二人〜
・プロローグ〜出逢い〜
桜咲き乱れる、四月の入学式。
出逢う事のないはずの二人が、運命に導かれてか、ただの偶然なのかこの小学校で、出逢った。
榊 鞘という孤児の少女と 深淵迩 燗という、友達のいない少女。
・第一章〜始まる二人〜
「はぁい!先生はみどり先生です、皆も自己紹介をしましょ〜」
そんな明るい声から、私の新しい学園生活が始まった。
一年三組、これが私のクラス。
「出席番号、五番、榊鞘と申します、趣味は読書、特技は家事です、よろしくお願い致しますね」
なんとか、噛まずに、しっかりと言えた。
安心してほっとしていると、とても緊張して、まともに話せていない自己紹介が聞こえてきた。
私は思わず、その自己紹介をしている少女を見た。
「は…ちが、し……しん、えん…じ、ら、ん…です……よ、よ、よろ…ょろし、くぉ、ねがぃ、し、しま、す」
その子は、とても綺麗な金髪と深い青色の瞳をしていた。
金髪の子をみるのは初めてじゃないのに思わず見惚れてしまったくらいに可愛い子。
あまりの緊張からか自己紹介が終わって、椅子に座った瞬間、その青色の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
周りの子は自分の事で一生懸命みたいで、誰も気づいていない。
席は私の隣、どうするか考える前に、ハンカチで涙を拭いてあげながら、声をかけてしまっていた。
「大丈夫?」
その子は、突然声をかけられて吃驚したように私を見つめる。
私自身、声をかけたことに驚いていたが、私を見つめるその瞳から目をはなすことが出来なかった。
そんな事をやってる内に全員の自己紹介が終わっていた。
「じゃ〜自己紹介も終わった所で、これからいろいろやったりするのに、ほとんどが二人ペアになって動くようになるから、その相手を決めたいと思います」
みどり先生はそう言うと、クジで決めるから皆前に出てきてと言った。
私も席を立って前に行こうとしたとき、服の裾が軽く握られた。
隣のあの子だ。
「あっ……ご、ごめんなさい…」
そう言って、すぐ手をはなしてしまったけど、私は何故かとても嬉しかった。
「はい、一緒に行こう」
私はそう言って、今度は自分からその子の手をとって歩き出した。
その子は、どうしていいか解らないと言った感じだったけど、素直についてきてくれた。
先生の所に行くと、残ってるのは私達だけみたいで、早く名前をかいて箱の中に紙を入れてと紙と鉛筆を渡された。
私は思わず、先生こう言っていた。
「先生私……」
深淵迩 燗これが、その子の名前。
ペア決めの時から、燗ちゃんはずっと私の服の裾を握ったままで私から離れようとしない。
「先生私、この子と一緒がいいです」
先生は少し驚いた顔をしたけど、すぐに嬉しそうに、いいわよって言ってくれた。
その時燗ちゃんが初めて顔を上げて私をしっかりと見てくれた。
そのあと、一瞬だったけど、笑ってくれた、私はその笑顔がとても可愛くて、ずっと見ていたいと思った。
この時から、私と燗ちゃんの二人の世界、時間が動きだしたんだと、私はそう想い続けている。