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Zeke(HG)ラノベ版  作者: yatsureCreate
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第5話

所々の外装が剥がれ、下地である木材が見え隠れする程度の年月を経ても

この街が誇る大図書館は、昨日までは老若男女の静かな活気に満ちていた。

それが今は見る影もない。大きな扉を開き中に入りながらも

先ほどから一切、人の声はおろか何の音もしない事への恐怖に震えていた。

仮にもここは緊急避難所のはずだ。誰も居ないわけがないと

言い聞かせようとしたが、誰もが居て、それでも音がしない場合が

ある事に気付いてしまった。

そうして静かに扉を閉じ、簡単な鍵を掛け、図書館内を見渡すに至ったが

自分の来るタイミングが最適であったと、一瞬思ってしまったほど

死屍累々とした光景が目の前に広がっていた。

フローリングの様な木製の床に転がる、贓物の様な肉や目玉の様な玉

元が人であったかどうかを判断するべく

その辺に転がる骸の指を数えようとしたが、5本揃ってる四肢など無かった。

5本指が生えていそうな手の平なら沢山あったが。

夥しく撒き散らされた赤い液体のせいか、むせ返るほどの鉄の匂いがたちこめ

暫く美術館に足を運ぶ必要は無いと思える程の完成度で

数多の芸術家が思いを馳せた地獄絵図がここに完成していた。

図書館にたどり着くまでに、いや、厳密に言えば家を出た瞬間から

私の顔面に空いた節穴は、その残酷な色を識別しなくなっていた。

しかしこの図書館内に広がる芸術品は

そんな節穴の感覚を一発で元に戻してくれたもんだった。

不意に、転がっている肉へ焦点が合い嘔吐感が襲ってくる中で

どうして自分はこんな状況で寝ている事など出来たのだろうかと

呑気な事をなるべく考え精神安定を計っていた矢先

先ほどの怪物共のしゃべり声が、図書館の扉の外から聞こえてきて

思わず呼吸が止まった。

扉に掛ける事のできる錠が、これまた頼りの無いもので

無呼吸下で、いち早くここから脱出する事を思考していると

この図書館に関する噂話が頭に過ぎり、思い出したように一呼吸置いた。

そういえばこの図書館は、少し前から

”鬼が出る”

と、クラスメイトのみならず、商店街でももっぱら噂になっていた。

先ほどの怪物は確かに鬼の様な存在ではあったが

もしあの怪物ではなく、別の”鬼”と呼ばれる存在が

この図書館に生息するとしたら・・・・

自分の固唾を呑む音に少し驚きながらも、何か情報があるかもしれないと

この図書館の本を20分だけ調べることしようと、入ってきた扉の

丁度正面に位置し、図書館で一番奥にある本棚の上部に、立派な時計が掛かっていたので

壊れていない事を祈りながらも時間を確認し、早速近くの本棚の元へ駆け寄った。


図書館の創立者が牧師であると噂には聞いたことがあったが、

教会に設置されてる座席の様に、各本棚は設置されていて

そのおかげで私が入ってきた扉から反対の壁までは本棚が設置されておらず

壁掛け時計を拝めたわけだが、そんな事より本棚の数が膨大すぎる。

それでいて”ナマモノの食し方”やら”ケモノのススメ”やら

ロクな本が見当たらず、イラつきを覚えて来た頃

現在の時間を確認しようと棚の上部を確認すると、先程の時計が掛かっていた。

まだ10分位しか経っておらず、とはいえ裏口探しをしなくて良いのか

何の情報もなしに外に再び出る事の方が愚策なのかの判断がつかないまま

向きを反転し、向かいの本棚を下段から探し始めて中段に差し掛かった頃

ようやく違和感に気づき、振り向いた。

視線の先には、先ほど時間を確認した時計が掛かっていたが

それは一番最初に確認した時計と型は一緒だが違う時計だと気付き

心当たりに目をやると、やはりそこには同じ型の時計が掛かっていた。

なんで同じ時計が二つもかかっているのだろうか。

ゲーム脳に侵されつつあった私は、そのまま時計の真下の棚を

縦に見ていると、一冊、タイトルがうまく読めない本があった。

先ほどから、タイトルが消えかかってる様な本はいくらでもあったので

特に気にしてなかったが、手を伸ばし、本を手前に軽く引き表紙を見ると

「魔物について」

といった、いかにもオカルトな表紙は目に入り、これだと手に取った瞬間

何かスイッチの様な音がすると同時に、ガコンッと何処かが開く音がした。


「確かに今、時が止まっている・・・・」


そして時が動き出すと共に、私は悲鳴をあげながら地下に落ちていった。

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