幸せの青い鳥
「そろそろ城に行こうか!」
エリーナは、うん、と答える。
エリーナはこれまで自分の家以外の建物に入ることが無かったので、楽しみで仕方がない。
ましてや城など、絵本の中の幻想でしかありえなかった。
思い返せば、ビスクがこの国に来てから街の人はビスクに敬語を使い、扉でも迎えがいた。
エリーナの屋敷からここに来る途中も、鳥達が籠を運び、ビスクはそれに乗っていた。
「ビスクはやっぱり王子様なんだね」
エリーナが言うと、
そうだよ、とビスクは微笑みながら答えた。
ビスクはこの国の王子で、次の王になる存在。
それがなぜ、エリーナのいる国にやってきたのか。
エリーナは疑問でならない。
街の人は優しいし、城に住んでいるなら不自由は無いだろうし、この国に留まっていても楽しく暮らせるはずなのに...。
「どうしてビスクは私のところに来たの?」
甲高い声にエリーナは驚いてビスクを振り向いた。
「エリーナが言いそうなこと。合ってた?」
ビスクはまるでいたずらっ子のように笑う。
「すごい...」
「ん?」
「あっ...」
口の中で言ったつもりが、声に出ていた。
「その反応は、図星だね?」
ビスクは本当にすごい、とエリーナは驚いていた。
「本来願いを叶えたりする力があるのはそれなりに身分が上の鳥だけなんだ」
「ビスクは王子様ね!」
「そう。で、それなりの身分っていうのも、貴族以上なんだ。この国の貴族以上の身分の子供は、生まれてすぐスクールに入れられるんだ。そこで自分達の力のことを学ぶんだ。そして学び終わるとスカイランドから出る」
「願いを叶えに行くの?」
「そう。そして僕のような何でもひとつ叶えられる青の羽は、王族にしか現れない色なんだ」
エリーナはふと、小さい時読んだ絵本を思い出した。
「青い鳥...」
「どうかした?」
「前にね 、『青い鳥』っていう題名の絵本を読んだことがあるの。青い鳥は幸福の象徴なんだって」
「へぇ。それはどんなお話なんだい?」
「チルチルとミチルっていう主人公の2人が青い鳥を探す旅に出るんだけど、なかなか見つけられないの。家に帰ると、これまで飼っていた鳥籠の中の鳥が青色になってて、幸せは身近にあるんだよって教える話なの。確かにビスクはずっと私のそばに居てくれたわ」
「...」
「ビスク、どうしたの?顔がすごく赤いけど?体調悪い?」
「大丈夫!大丈夫!!何でもないから!!!」
ビスクは腕で顔を隠してしまった。