遣い鳥とリンダ
「エリーナはこの国に住みたいと思うかしら...」
リンダは呟いた。
「もしそうだとしたら、貴方はどうするんです?」
「あら、聞こえてたのね?」
遣い鳥が尋ねるとリンダは寂しげに俯き答えた。
「こればっかりは私にはどうにもできないわ」
「貴方がそれでいいなら構いません。」
「ちょっと、急に冷たいわね」
遣い鳥はそっぽ向いてリンダと目を合わせようとはしない。
しばらくして、
「私は貴方の幸せを願いたいのです」
遣い鳥が小さな声で言った言葉に、リンダは笑みをこぼし、
「ありがとう」
と同じく小さく答えた。
遣い鳥の真面目な表情の中に少し柔らかい表情が浮かんだ。
街を抜け、遣い鳥達とリンダは城に着いた。
「リンダ様の来城及び遣い鳥達の帰還!お迎えせよ!」
城門を潜ると執事やら世話役達やらがリンダ達を迎えるために待っていた。
「リンダさま、お久しゅうございます」
「お久しぶりです。ビスクは元気そうでした。街を見てから帰ってくるそうです」
「ええ、グレイ様から先程お伺い致しました。リンダ様もお元気そうで何よりでございます。お父様が、落ち着いてからで構わないのでお会いになりたいと仰っておりましたよ」
「ありがとう、爺。今すぐ行ってくるわ。まったく、お父様も素直じゃない」
またあとで、と声をかけ、リンダは立ち去った。
「セドさん、留守の間ありがとうございました」
「サイ様お疲れ様でございました。自ら遣い鳥として出向かれるとは、城内も騒然でしたよ。一言下されば良かったものを」
「言ったら止められるじゃないですか。私は自分の身分くらいはわきまえてるつもりですから」
「その割に行ってしまわれたではないですか」
「すみません。自分の目で早くリンダの無事を確認したかったものですから」
「ずっと好いておられますからね」
「知っていたのですか!?」
「見ていればわかります」
セドが、にっと笑うとサイは照れくさそうに首を振った。
「リンダ様はまだ私のことを爺と呼んで下さるのですよ」
「私はお会いしたのが遅かったので名前で呼ばせてもらってますが、生まれた時から近くにいるリンダにとってはセドさんはずっと爺なんですよ」
なるほど、とセドとサイは笑った。ひとしきり笑って、少し間が開く。
「密かに応援させていただいているのですよ?」
楽しそうにしていたサイの表情が暗く沈んだ。
「ありがとうございます。ですが...」
「許嫁のことですか?」
サイは頷く。
「リンダには決められた相手がいます。しかもその相手がこの国の皇太子だなんて、私にはとても入り込める隙はありません」
「ほほう。実はそうでもなさそうですよ?」
サイは、わからない、という表情で、信じられないようだった。