エリーナの心
エリーナは見るもの全て新しく、ビスクの肩の上で周りを激しく見渡していた。
街には活気が溢れていて、鳥達がみんな笑顔だった。
ビスクが通ると笑顔で迎え、声をかけてきた。ビスクも笑顔で答えて、楽しそうだ。
ビスクはよく街に降りてはお店に立ち寄り、買わずとも店主と世間話をしていたという。
エリーナはビスクの故郷に来られた喜びと、街の鳥達の温かさで胸がいっぱいになった。
「エリーナ、疲れないかい?」
「大丈夫よ。すごく楽しいわ!ここに来られてよかった。ビスクのおかげよ。ありがとう!」
ビスクは微笑んだ。
エリーナは胸の高ぶりを感じた。
街を見ている時のものとは違う。
突然心臓を貫かれたように衝撃が走ったのだ。
「何だったのかしら...」
「ん?どうかしたかい?」
「いいえ!何でもないわ!独り言!」
そう?とビスクは笑いかける。
まただ。エリーナはドキッとした。
何だか今日は変だ。体調が悪いのだろうか。
エリーナはこの疑問の答えがわからず心の中に押し込んだ。
ふと、八百屋を見つけた。
「ここって果物とか野菜もあるのね!」
「ちゃんとこの国で採れた野菜だよ。すごく美味しいんだ!おばちゃん!桃1つくれる?」
「はーいよ。可愛らしいお嬢さんだこと。この桃そっくりだわ。はい、20000チル」
「高いよおばちゃん。ありがとう!」
ビスクは20チルを店のおばちゃんに手渡し桃を受取った。
「食べてごらんよ」
ビスクはエリーナに桃を差し出し、エリーナは1口食べてみた。
エリーナは目を丸くした。
「美味しい!すごく甘くて美味しいわ!こんなに美味しい桃は初めて!」
「気に入ってもらえて嬉しいよ。僕もこの桃は大好きなんだ。」
「それよりさっきお金、ちる?」
「うん。チルはこの国の通貨だよ。」
ビスクは羽の模様の薄いコインを見せた。
鳥でも持ち歩けるくらいの小さなサイズだ。
「この銀色のコイン1枚が1チル。この桃はこのコイン20枚分」
「でもさっきあのお店の方は20000チルって...」
「あれはいいんだ。おばちゃんが冗談で言っているだけだから」
ビスクにつられてエリーナも笑った。
「冗談を言うなんて、面白い方ね」
「僕は何度も行ってるし、もともと冗談が好きなんだ。売る方も買う方も楽しくなれるからね。おばちゃんは流石だなって思うよ」
「思わず笑ってしまうものね!とても素敵な国だわ。国も、住んでいる方も!こんな国に住めたら幸せでしょうね」
「じゃあこの国に住む?」
「え!?私は元は人間よ?そんなわけにはいかないわ!」
「はは!冗談だよ!」
「もう!ビスクったら!」
ビスクは大声で笑っていますが、エリーナには、どうも冗談のようには聞こえなかった。
「もしホントに...」
「ん?」
「なんでもないわ!!」
エリーナは慌てて口を閉じた。