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リンダとビスク

「...!ビスク、殿下!離してください!」

「嫌だよ!!何でそんなに遠ざかろうとするんだい!?」

「ビスクが王子様だって知ってしまったもの!もう、私の手の届かない所にいるように感じるのよ」

エリーナの声は震えていた。

震えて弱々しく、時々詰まりながら話す。

「エリーナ...」

ビスクはエリーナから手を離した。

「確かに僕はこの国の王子だよ。だけど、僕らはもう友達だろ?願いを叶えて、失敗したけど、だからこうやって一緒に旅が出来たんじゃないか。僕らには今、手を伸ばせば掴める程の距離しか無いんだよ!?決して遠くなんてないじゃないか!」

「...!!」

「僕は君と一緒に過ごした時間は楽しかった。君が笑ってくれて、ビスケットをくれて、一緒に遊んで、楽しかったんだよ、嬉しかったんだよ。でもこれは僕だけではないだろう?リンダだってそうだし、君だってそうじゃないのかい?エリーナ、君は僕といた時間は退屈だったかい?」

「退屈なはずないわ!そんなはずない!貴方が来て私は独りじゃなくなった。すごく楽しかったわ...!」

「そうだろう?だから、そんな悲しいこと言わないでおくれよ。これまで通り接してくれないかい?」

「うん、うん!」

エリーナは何度も頷く。

ビスクはもう一度エリーナを抱き上げた。

「さあ、元気を出して、この国を僕が案内しよう」

「うん。ごめんなさい、ありがとうビスク」

「リンダ、君はどうする?一緒に街をまわるかい?」

「いいえ、私はいいわ。疲れたし、遣い鳥達と一緒に城に行ってることにするわ。街は2人で楽しんでいらっしゃいな」

そう言うとリンダは遣い鳥達と籠を運び、城へ向かった。

「じゃあ見に行こうか!」

エリーナはビスクの肩に登った。



「リンダ様はご一緒に行かれなくてよろしかったのですか?」

「ええ。私は街は何度も見てるもの」

「ビスク様と一緒にエリーナ様を案内されればよかったのでは?」

「いいえ。今は2人の方がいいわ」

「何故です?」

「女のカンよ。と言いたいところだけれど、見ていればわかるわ。あそこに私が行っても邪魔になるだけ。私はまた後で会えるし、城に行ってしまえば2人きりになる時間は無い。少しの時間でもいいから、2人の時間を過ごして欲しいのよ」

「よろしいのですか?」

「何が?」

「ビスク様はリンダ様の婚約者ではないですか。リンダ様はそれでよろしいのですか?」

「よろしくないわよ!けどね、ビスクの気持ちが私じゃなく彼女に向いていることくらいわかるわ。エリーナも同じ。そんな2人を引き裂いてまで親の決めた婚約を貫きたくはないわ」

「リンダ様は、ビスク様のことを好いておられるのではないのですか?」

「好きよ!大好きよ!本当を言うと辛いのよ。あの2人を見ているとお似合いで、どうしても2人の空気に入れなくなるの。そこに私の居場所は無いんだわ、って知らしめられてる気になるのよ。

ビスクは私のことはただの幼なじみとしか思っていないわ。恋心じゃない。私は、彼らを見てるとエリーナのことを恨んでしまいそうになるの。自分が恐ろしいわ。こんな自分嫌い。こんな感情知らないわ。苦しいくてどうしようもなくて、泣きたくなるのよ。だから、もういいの」

リンダはやり場の無い胸騒ぎと焦りと嫉妬で、籠を蹴飛ばした。

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