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青空の虹

「エリーナ、あなた飛び方上手ね。ビスクから教わったかしら?」

「いいえ、何となくこんな感じかなって!飛ぶイメージをしたら飛べたんです!」

籠に乗っているビスクの目線はずっとエリーナに向いている。

リンダはその目線に気付き、エリーナに寄った。

「ビスクは飛ぶのが下手で、飛べるようになったのはスクールの中で一番最後だったのよ」

「え!?今あんなに飛べるのに!!それに主席で卒業したってさっきリンダさんが...」

「えぇ。それからのあの子の努力はスクールの誰にも負けないわ。その成果が出たのね。私は何となくで無難に乗り越えてきたから、ビスクのことは尊敬するわ。すごく羨ましい」

リンダは少し寂しげな表情を浮かべている。

ビスクには二羽の話が聞こえず、もどかしいようだ。

「まだ、まだ間に合うと思います」

リンダは目線をゆっくりエリーナに向けた。

「スクールは終わっても、一生が終わったわけではありません。リンダさんはこれから願いを叶えるし、叶えてからもまだまだ時間はあります。やりたいこととか、やれることとか、これから先挑戦していけばいいと思います!!」

リンダはエリーナの語りの強さに驚いた。

「これから先...」

「すみません!人間の私が偉そうに!!あぁ、今は鳥だけど...」

「そんなことない。ありがとう、エリーナ。あなたに元気づけられたわ。そうね。後悔したなら、次に後悔しないようにするだけだものね」

リンダに笑顔が戻り、エリーナも嬉しくなった。

「おーい、さっきから僕に内緒で何の話をしているんだい?僕も混ぜてくれないかい?」

リンダとエリーナは顔を見合わせて笑った。

「ガールズトークよガールズトーク!!ビスクは大人しく籠に乗っててちょうだい!」

「それはあんまりだよぉ!!!」

二羽と1人の笑い声は青空に高く響き渡った。



一行が向かう先に雲から虹かかかっていた。

丸い虹ではなく、一本の道のように真っ直ぐ伸びていた。

虹の先は遠くて見えない。

「リンダさん!キレイな虹ですね!私虹って初めて見ました!」

エリーナは絵本でしか見たことがなかった虹に胸が高鳴った。

青から赤にかけてとてもカラフルに青空を鮮やかに彩っている。

「エリーナ、この虹の先にスカイランドがあるの」

「虹の先!?遠くて見えない...。たどり着く前に虹が消えちゃいそうですね...」

「違うよエリーナ!虹に乗るんだ!」

そう言うとビスクは、よっ、と籠から飛び降りた。

「ビスク!!!!!!!」

エリーナは思わず目を閉じた。

「エリーナ、エリーナ!目を開けてご覧なさい」

リンダに促され、エリーナはゆっくり目を開けた。

下には誰もいない。

「ビスクが...ビスクが!!!!」

エリーナの目からは涙が溢れた。

「ビスク...ビスク...!」

「エリーナーーー!!エリーナ!!僕はココだよ!」

エリーナはあたりを見回す。

「どこ!?どこなの!?」

「エリーナ、あそこ!!!」

リンダが示す先は、さっきまでビスクが乗っていた籠。

「リンダさん何を言ってるの?ビスクはさっき飛び降りて...」

「違うわ。しっかり見てみなさい。」

エリーナは目を凝らした。

すると、ひょこっと金髪頭が出てきた。

「!!!」

「エリーナ、びっくりしたかい?」

間違いなくビスクだった。落ちたように見えたビスクは、飛び降りはしたものの、籠のふちに手をかけ、再び籠の中へ戻っていたのだ。

「もう、心配したわ!」

ビスクは大声で笑った。

「でもエリーナ、次はこんなことはしないよっ!」

よっ、と同時に再びビスクは籠から飛び出した。

エリーナは目を閉じずしっかり見ていましたが、ビスクは籠をつかむことなく落ちていった。

「ビスク!!!」

するとビスクは着地をしたようにしゃがみ、落下が止まった。

「え?ビスク飛べるの!?」

もちろんビスクには羽はない。それなのにビスクはエリーナ達の方に手を振りながら歩いてさえいる。

「エリーナもおいでよ!」

ビスクの声に急いで下に降りると、そこはとても眩しい場所だった。目も開けていられない。

「エリーナ、しっかり目を開けてごらん」

ゆっくりゆっくり目を開けた。眩しくて真っ白だった視界もだんだん慣れてきて、景色が見えるようになった。

するとそこには大きな虹が真っ直ぐ前に伸びていた。

見るとビスクの足元にも虹がある。

「虹...。どうして?上にいた時は見えなかったのに!」

「光の当たり方だよ。上からは見えないはずさ」

籠を運ぶ鳥達とリンダもエリーナとビスクの元に降りてきた。

「いつもそう!行動が突然すぎるのよ!」

リンダは怒っているようで、表情は穏やかだった。

「ねえ、僕が死んだと思った?」

「そんなわけないでしょ」

「えー。残念。エリーナはどうだった?」

「あ、えーっと...」

ビスクの目は輝いている。絶対楽しんでいたな、と思い、答えに悩んでいると横からリンダがため息混じりに答えた。

「エリーナは本当に貴方が落ちたと思って泣いていたわよ」

「ちょ...リンダさん!!」

リンダはぷいっと目をそらした。

エリーナの頬が赤らんでいる。

「エリーナ、本当かい?」

エリーナは小さく頷いた。

「...!ごめん...僕そんなつもりは無くて...」

ビスクは俯いてしまった。

「いいのいいの!実際は生きてるんだから!ちょっぴりびっくりしたけど、面白かったわ!」

エリーナは慌ててフォローした。その気持ちが通じたのか、ビスクも顔を上げた。

「...そのまま落ちてしまったらもっと面白いのに」

「リンダ!!君今何かボソッと言ったね?もう一回僕に聞こえるように言ってごらんよ!」

「私じゃないわよ。そこの遣い鳥たちよ」

「そんな訳ないだろ!彼らはそこで休んでるじゃないか!」

ビスクとリンダが言い合っているのを見ながらふと、足元の虹が動いていることに気付いた。

もうだいぶ進んだだろうか。後ろを振り返るとずっと先まで虹が伸びている。

「もうすぐ扉が見えてくるはずですよ」

教えてくれたのはビスクが乗っていた籠を運んでいた遣い鳥の中の一羽だった。

「この虹はまっすぐスカイランドに繋がっています。もうしばらくすれば虹の先に扉が見えます。その扉の中はもうスカイランドです」

エリーナが感心して前に目をやると、小さく何かが見えた。

「扉...。着くんだわ。ビスクの故郷」

扉がどんどん近づくにつれてエリーナの緊張も高まっていった。

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