黄色の鳥
「やあビスク、困っているみたいね!」
黄色い羽の鳥が降りてきてエリーナとは反対側の、ビスクの肩にとまった。
「リンダかい?久しぶりだね」
ビスクと仲が良さそうに思える黄色い羽の鳥はリンダと呼ばれている。
2羽の関係がエリーナは気になった。
「まさかあなたが人間の姿になっているとは思わなかったけど」
「僕は例の夜に願いを叶えたのさ。だけどそのおかげで少しばかり問題を抱えてしまったんだ」
「スクールを首席で卒業した貴方がヘマするなんて珍しいわね。いったいどうしたって言うの?」
ビスクは何一つこぼすこと無くあったことをリンダに話した。
すべて聞いてリンダは少し唸った。
「リンダ、君の力で何とか出来ないかい?」
「出来ないこともないけれど、生憎私は自分の力を使う相手をもう決めてしまったの。だから貴方達の願いを叶える事は出来ないわ」
「そうか...。そういえばリンダは来月だったね」
「ええ、そうよ。今彼女の元へ向かっている途中貴方を見つけたから声をかけたのだけど、お役に立てず申し訳ないわ」
「いいんだよ。僕達は僕達でなんとかするさ」
「あの、リンダさんは次の満月の日に願いを叶えに行かれるのですか?」
「そう。生まれてから2年後の満月の月がそれぞれ願いを叶えることが出来る時、というのはビスクから聞いているかしら?」
エリーナはうん、と頷いた。
「私は丁度来月なの。ビスクより1ヶ月遅く生まれたの。だから来月。そういう鳥はまだ沢山いるわ。私と同じ月の鳥も、更に先の鳥もまだまだいるわ」
エリーナはふと気が付いた。
もしまだ願いを叶えていない鳥がいるのだとしたら…
「リンダさん、まだ願いを叶える前の鳥達を見つけることは可能ですか!?」
「エリーナまさか、その鳥達を見つけて僕らの姿を元に戻してもらうつもりかい?」
「可能よ。可能だけれど、この近くに私たち以外の鳥はいないわ。確実に見つけたいなら、少し遠くに行かなければならないわ。」
「遠くって、隣の村くらいですか?」
「いいえ、もっとずっと先よ」
「リンダまさか!そんなところまでエリーナを連れては行けないよ!!」
「あら、だってエリーナは今は鳥の姿でしょ?余裕よ。何より今はビスク、貴方の方が困難なの、わかってる?」
2羽では話が通じているようだ。
「あの、どこまで行けばいいのですか?どこまでいけばその願いを叶えていない鳥がいるのですか?」
ビスクは頷き、リンダは答える。
「スカイランド。簡単に言うと、鳥達の故郷よ。私達はそこから来たの」
「ビスクもそこから来たの?」
「そうだよ!」
「そこは...スカイランドはどこにあるの?」
「空さ!」
「空...」
「スカイランドに行くには飛べばいい。エリーナ、君は今鳥だ。羽がある。簡単に行けるさ」
「待ってビスク!貴方は人間の姿だわ!飛べないわ!」
「大丈夫よ。スカイランド出身の者は姿が変わって自力で戻れなくなった場合、迎えの鳥を呼べるの。姿を変える鳥は多いわ。帰郷が出来なくなったら困るでしょう?」
「なるほど...すごいのね」
「さあエリーナ、この旅は困難だと思うんだ。それでももし君が行くっていうなら僕も行こう。どうしたい?」
エリーナは少しも悩む暇なく答えた。
「行くわ!もちろん!!」
「リンダ、君も一緒に来てくれるかい?まだ願いを叶えるのは来月で時間はあるだろう?」
「確かにそうだわ。仕方ないわね。スカイランドに着くまでは一緒に行ってあげるわ」
「ありがとう、リンダさん!!」
出発は今夜と決め、それぞれは別れて準備を整えた。
陽が落ち、月が輝く頃を見計らい、一行はエリーナの家の庭に集まった。
空からはビスクを迎えに来た鳥たちが籠を持ってやって来た。
「さあ、出発だ!」
ビスクは籠に乗り、エリーナはリンダについて飛び出した。