桃色の鳥
ビスクを待って外を見ていると、エリーナを呼ぶ声が聞こえた。
「エリーナ!エリーナ!!」
窓の外から、男の子の声。
-ビスクが来たんだわ!
エリーナは空を見渡して青い鳥の姿を探した。
ですが、どこを探しても見つからない。
「ビスク?どこなの?」
「エリーナ!エリーナ!!いないのかい?僕は下だよ!」
鳥であるビスクが何故下にいるのだろう。
いつもは空から来るというのに、何かを拾ったのだろうか。
エリーナは不思議に思いながらも身を乗り出し、下を見た。
けれどもちっとも見つからない。
見つかったのは、一人の少年。綺麗な碧眼だ。
エリーナはその少年と会ったことはない。
「エリーナ!エリーナ!!」
彼は私を訪ねてきたようだった。
彼の姿は初めて見た。
それよりビスクはどこにいるのだろう。
あの綺麗な青い鳥はどこだろうか。
「エリーナ!エリーナ!!僕だよ!人間の姿になれたんだ!」
人間になれた?彼は何を言っているのだろう。
動物か何かだったのだろうか。綺麗だから植物というのも有り得るが。
「ビスク!貴方はどこにいるの?」
「その声はエリーナかい!?僕はここだよ!」
エリーナは目を疑った。
エリーナの問いかけに答えた声は、あの碧眼の少年だった。
まさか!ビスクは青い鳥のはずだ。
何故姿が違うのだろう。
「願いが叶ったんだよ!ようやく君と同じ人間の姿になれたよ!」
エリーナの中で全てが繋がった。
あの夜エリーナが願ったのは、ビスクと同じ姿になること。
ビスクが願ったのは、エリーナと同じ姿になること。
ビスクは青い鳥、エリーナは人間、つまりお互いと同じ姿になりたいと願ったために、すれ違いが生じてしまったのだ。
「まあ...なんてこと!私たちは間違いをおかしたわ、ビスク!」
「エリーナ、どういうことだい?それより君の姿を見せておくれよ!!出てきておくれ!」
エリーナは窓から飛び降りた。
無意識に羽を動かし、上手くビスクの肩に乗った。
「ビスク、私たちはとても愚かだわ!」
碧眼の少年は目を大きく見開いた。
「エリーナ!?君はエリーナなのかい!?その姿は...!?」
「私たちは互いと同じ姿になりたいと願ったわ。それは私が鳥になりたくて、貴方は人間になりたいと願ったことになるのよ。」
ビスクは声が出ない。
「ビスク、これでは元通りだわ。私がビスクのように願いを叶えれば元に戻れる?」
「いや、君の羽は桃色だ。僕と同じようには出来ない。桃色の羽では、自分、もしくは誰かの恋を叶えることしか出来ないんだ。」
「そんな...それじゃあどうなるの!?」
「わからない...」
ビスクが俯いていると、空から黄色い羽を持つ鳥が降りてきた。
「やあビスク、困っているみたいね!」
どうやらこの鳥はビスクを知っているようだった。