スカイランドの新王
部屋を出ていくゴードンの背を見送り、リンダも続くように背を向けた。
「それじゃあね」
と、一言言い残し、歩きだした。
「リンダ!」
ビスクが呼ぶとリンダは首を少しだけビスクの方に向け、立ち止まった。
ビスクからはリンダの顔は見えない。
「リンダ、どうして反対しなかったんだい?僕は君との結婚の約束をやめさせて、別の人と結婚したいと言ったのに」
リンダは何も言わず、前に向き直し、部屋を出てしまった。
「ビスク」
女王の問いかけにビスクは振り返る。
「貴方は最初、もう1度願いを叶えるために戻ってきたと言いましたね?」
「はい。けれどそれは考え直して...」
「1つだけ、方法はあります」
口ごもるビスクに、女王は提案を出した。
「さあ、選びなさい。あなた次第よ。まだ貴方は若いし、先もある。重要な選択だから本来は私が決めるけれど、今回のことがあるから、私はあなたに任せます」
ビスクは俯きかけて顔に影がかかったが、ビスクの腕の中でエリーナが見たビスクの目には影はかかっていなかった。
むしろ輝いているようにも見えた。
「ビスク、私のために無理はしないで?」
「大丈夫だよ。僕はこうなることを望んでいたのかもしれない。時期は確かに早いけれど、これしかない」
ビスクは顔を上げた。
-3日後-
「ビスク殿下ーー!!」
「おいっ!もう殿下じゃないぞ?陛下になられたんだ!これからはビスク陛下がこの国を治めて下さるのだ!」
「ビスク陛下ー!!」
「新王様ーーーー!」
太陽が一番高く登る頃、城の目の前にはスカイランドの民が集まっていた。
ここにいる全員、即位した新王を一目見ようと集まったもの達だった。
商店街やら店を放っておいて見に来ている者もいた。
「そういえばあの桃を食べた女の子はどうしたかねぇ」
「なにやら自分の国に帰ったそうじゃないか」
「そうなのかい?可愛らしかったなぁ。てっきりこのまま国に残るもんだとばかり思ってたよ」
「けどビスク様にゃリンダ様っていう許嫁がいたからなぁ」
「リンダ様との婚約は破棄したそうじゃないか。どうするおつもりかねぇ」
-城内ビスクの部屋
「陛下、そろそろです」
胸に金のバッジを付けたグレイがビスクを呼びに来た。
「そうか。わかった」
窓の外を眺めていたビスクは緊張しているように見えた。
「行こうか」
ビスクは部屋を出てその後ろをグレイが歩く。
多くの民が待つ広場の見えるバルコニーまでは、ビスクの部屋から200メートル程離れていた。
「エリーナは大丈夫だろうか」
歩きながらビスクは独り言のように小さく言った。
「大丈夫ですよ。きっと」
グレイも自分に言い聞かせるように小声で言った。