グレイとエリーナ
「何故、ビスクとリンダさんの結婚を喜ばれないのですか?」
グレイは俯き、静かに答えた。
「好きな方には幸せになって貰いたいものです」
よく見ると、グレイの頬は赤らんでいた。
「グレイさんもしかして...?」
「...私はあの方が好きなのです。自分の意思を持ち、毅然とした態度で周りに接することの出来るあの方が...」
-そうか、グレイさんはリンダさんのことが好きなんだ
「だからビスクや私たちがこの国に着いた時、お迎えを?」
「はい。一刻も早くお会いしたかったので...。お恥ずかしい限りです。」
「恥ずかしくなんてありません!!」
エリーナは大声を出してしまい、慌てて口を手で覆った。
もう1度息を整えて言った。
「恥ずかしくなんてありません。誰かを好きになることは美しいことです。そしてその方のために何かしたくなったり、会いたくなったり、当然です。むしろ会いたいからと行動できることは、すごいと思います!」
エリーナの頭にビスクの顔が浮かんだ。
-ビスク、早くお話終わらないかな...
グレイは驚いていたが、クスッと笑った。
「ありがとうございます。今更弱気になっても仕方ないですからね」
エリーナも笑った。
「エリーナさん、この国に住んではいただけませんか?」
「へっ?」
「先程申し上げた通り、好きな方には幸せになっていただきたい。私が考える幸せは、好きな者同士が結ばれることです。許嫁のような政や世間体のための結婚ではなく、心から惹かれあった者同士、共に支えあっていける結婚をして欲しいのです。王族や貴族だからとか、関係なくです。だからこそ貴方に、この国に残っていただきたい。見たところ、ビスク様はエリーナ様を好いておられるようだった。エリーナ様は、ビスク様ではお嫌だろうか?」
-顔が熱くなるのがわかる。ビスクが私のことを好き?そんなはず...。けれど、もしそうならどんなに嬉しいでしょうか...。 それよりこの提案は、ビスクと私をくっつければ、リンダ様とグレイ様がくっつくことが出来るということ? この方なんて策士…! けれど、ビスクは私と一緒になることを望んでいるとは...。
エリーナはグレイの提案に答えた。
「私は、ビスクと一緒に居られたら、とても幸せだと思います。けれど、私は今でこそ鳥の姿ですが、元は人間です。そんな私がこの国に残るなど、許されないと思いますし、リンダさんだって...。もしビスクが私のことを好きだというなら嬉しいことですが、お受けすることは出来ません」
-グレイさんには申し訳ないけれど...
「そうですか...」とグレイは低く静かに言った。
「ではもし、ビスク様とリンダ様が許嫁でなくなったとしたら?」
「なんですって?」
すると王の部屋のドアが開き、ビスクが顔を出した。
「グレイ、頼む」
「かしこまりました」
エリーナはわけがわからず、早足で立ち去るグレイの背を見つめることしか出来なかった。