エリーナと婚約者
表現を変えようと思います。
今まで「です、ます」調だったものを、ここから変えていきます。
これまで投稿した話も順次変更するつもりです。
「ビスク殿下のご帰還である!」
「メアリ!メアリ!」
「はい!おかえりなさいませ殿下」
「こっちはエリーナ。これから母上の元へ向かう」
「かしこまりました。エリーナ様、こちらへ」
エリーナはビスクと離された。
「エリーナ、後で会おう」
ビスクの笑顔に、少しの別れも耐えるのが難しくなっていることを自覚させられた。
「...これは?」
「正装です。これから陛下にお会い頂くのですから、とびきり可愛らしくしませんと」
「え!?陛下...王様!?」
「聞いておられなかったのです?」
「母上って...。あ、そうか。王子様のお母様...女王様!?王は男の方ではないのですか!?」
「はい。先代の王は男性だったのですが、早くに亡くなられ、陛下は先代の陛下の一人娘たったので、そのまま王位につかれました。ご結婚がそれより後でしたので引き続き。ご結婚が先ならあるいは、そのお相手様が王になられたやもわかりません」
複雑だ、と思った。
「ビスク...殿下はご兄弟は?」
「いらっしゃいません。ですので、次期王はもうビスク様しかおられないのです。陛下もこのところ落ち込むことが増えたように思えます。ビスク様が戻っていらっしゃれば、陛下も安心出来るはずなのです。それで結婚などなされて身をかためて頂けると、陛下もお喜びになられますのに」
「結婚...」
結婚すれば、奥さんとこの城で仲良く暮らせる。
隣に奥さんがいて、2人で支えあっていける。
奥さんと2人で...
ビスクと誰かが寄り添っている姿を想像すると、エリーナの胸は締め付けられるようで苦しくなった。
「メアリさん、メアリさんは、ビスクが結婚して王としてこの国にいることを望みますか?」
「そうですね...。私はそれを望んでいます。ただ、これは私の勝手な望みです。遠くで見ている感覚ですね。けれど、私がもそメイドとしてでなく、女としてこれを考えるのなら、結婚して、この国にいて欲しいと強く願います。婚約者であるリンダ様が可愛そうです。あの方はずっと待っておられるのですから」
そうか、リンダさんも...
リンダさん!?
今メアリさんなんて言いました?
誰の婚約者がリンダさん!?
「えーっと、メアリさん、婚約者がリンダさんて、ビスクの話ですか...?」
「ええ、そうですよ?」
体に電流が流れたような衝撃が走った。
リンダさんがビスクの婚約者...
将来ビスクの隣にいるのはリンダさん...
今思えば、リンダさんとビスクが仲良かったのもこのためか、と思えてくる。
「そりゃ迎えに来るよね...」
ビスクがこの国に来るように話を持っていったのはリンダさんだった。
リンダさんはビスクと結婚して、ビスクにこの国に残って欲しかったんだ。
そうすると、私は?
のこのこ着いてきて、ビスクのそばにいて、これはリンダさんとの間を邪魔していた。
私は何のためにここに来た?
急に自分が遠くの世界の人間であることを自覚したように、ビスクとリンダが遠く見えた。
頬をあたたかいものが伝う。
「帰りたい...」
エリーナはその場で泣き崩れた。