Section9
それから少したって、7時ちょっとすぎくらいにミキが小走りできてくれた。
なんか申し訳なかったので、飲みかけのお茶をあげたんだけど、ミキは「ありがとー」って言って飲んでくれた。
でも、呼び出したのはいいものの、何から話せばいいのか自分でもわからなかった。
悩んだ末に、とりあえず、予定も聞かずに呼び出してしまったことを謝ることにしたんだ。
「あの…予定も聞かないでいきなり呼び出してしまってすいません…」
そういうと、ミキさんは笑いながら答えた。
「いいのよー、高校生にナンパされて久しぶりにドキドキしちゃった」
そういって、俺の肩をたたいてきた。
そんなところまで、昔と何一つ変わってなかった。
そう思うと、急に涙が出てきたんだ。
ミキの前では絶対に泣かないって決めてたはずなのに、なぜか涙が出てきた。
ミキはあわてだして俺に謝ってくる。
「ど、どうしたの!?私何かした?ごめんなさい!」
「いや、なんでも…ないんです…」
「大丈夫?なんか気に触ることしてたらほんとにごめんね…」
そうやってミキに謝られると余計涙が出てきて、とまらなかった。
10分くらい泣いてたと思う。
最初はおどおどしてたミキも、いつの間にか俺の頭をなでてくれてた。
一通り泣き終えて、ミキからの第一声はこうだった。
「お茶飲む?飲みかけだけど…」
とっさに、「ちょっと待て。それは俺のお茶だ」って冷静に思ったけど、なんか笑えてきて気持ちが楽になった。
たぶん、ミキが気を使ってくれたんだと思う。
本当に、今も昔も、この人のことを好きになれてよかったって思った。