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未来がずっと、ありますように  作者: おじぃ
動き出した日々
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久しぶりの小百合

 僕と衣笠さん、松田助役、そして百合丘さんは応接室の革張りソファーに腰を降ろし、ブライダルトレインの打ち合わせを始めた。


 僕と松田助役が隣り合い、百合丘さんはその正面で二人がけソファーを独占、衣笠さんはお誕生日席の配置で卓を囲う。


 衣笠さんによると新郎新婦から特に注文などはなく、挙式に使用する車両の落成を祈っているという。


 しかし古い車両で尚且つ数年間眠っていた車両ゆえに腐蝕が進み、現段階で営業運転可能とは言い切れない。ただし同車種で最もノウハウを積んでいる鎌倉の工場で整備し最善は尽くすと約束した。


 打ち合わせはあっさり終わり、衣笠さんは駅を出た。


 せっかく来てくれたのだから僕としてはもう少しゆっくりしていってほしいところだったが、彼女は勤務中なので仕方ない。



 ◇◇◇



 あぁ、せっかく本牧さんと会えたのに、仕事の話しかできなかった。


 あっ、これか!


 からだに馴染みつつある駅事務室の重い鉄扉を開け、改札口の外に出ると、支柱に大きなポスターが貼り付けられていた。


 昨夜花梨ちゃんから「スタンプラリー用のポスターができたから見てきて!」とLINEがあって、それを探すために今朝電車を降りたときと、さっき駅に来たときにキョロキョロしても見当たらないなと思って彼女に訊いたら「あ、中央改札にあるよ! ごめん未来ちゃんは北改札使ってるもんね」と言われたのでこちらから出してもらった。


 すごいなぁ、私も少しくらいならお絵描きできるけど、花梨ちゃんはプロ並みだ。


 花梨ちゃんからもらったスタンプ台紙で、私もラリーに参加しよう。


 スタンプを押して、おしゃれなヨコハマのイメージとはちょっと違う、どの地方にもあるような飲食チェーンが軒を連ねる大通りを抜けて職場へ戻った。


「おかえりなさい未来ちゃん、早かったのね」


「おかえり未来ちゃん!」


「ただいま戻りました! あそこの方々は話が早くて」


 駅事務室よりずっと軽くて、手にその感触が残っていると拍子抜けするオフィスの扉を開けると、いつも通り私が挨拶するより先に小百合さんが笑顔で迎えてくれた。小百合さんに続いて声をかけてくれたのは2コ上の男の先輩、子安こやすさん。私が先に発声しようと毎回チャレンジしているけれど、この二人にはいつも先を越されてしまう。


 店長不在の本日、オフィスはいつもより静かで皆さん黙々とPCに向かっている。


「あちらの皆さま、とても怜悧れいりだから、私が訪問させていただいたときも長話はしないで早く終わったわ。そうだ、ちょっとお茶をしに行かない?」


 そう、他の取引先だと結論はわかりきっているのになぜか堂々巡りの打ち合わせになって、なかなか話が進まないことも。なのに長話をしたい本牧さんたちとはすぐに終わってしまうというもどかしさがある。


「いいですね! ちょっと一息つきたかったので!」


「俺も行きたい!」


「子安くんは勤務時間でしょう? またこんどお茶しましょう?」


 柔和な笑みで子安さんを諭す小百合さんは、またこんどとフォローを忘れない。この一言があるだけで、私たち部下は拒絶感を覚えず心が救われる。子安さんは「ちぇ~」とつまらなそうな言葉を発しながらも‘仕方ないな’を秘めた笑みを浮かべ、PCに向かって作業を再開した。

 お読みいただき誠にありがとうございます!


 サブタイトル通り、未来の上司、小百合が久しぶりに登場しました。今まであまり動きがなかったキャラクターも交えて、物語は次の展開へ進みます。

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